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令和6年度第3回食品衛生基準審議会添加物部会 概要

令和6年度第3回食品衛生基準審議会添加物部会 概要(本文4,034文字)
 
 
1. はじめに
消費者庁は、令和7年2月18日に「令和6年度第3回食品衛生基準審議会添加物部会」を開催しました。
本部会は、食品衛生の規格基準業務が厚生労働省から消費者庁に移管されたことに伴い、新たに設置された部会として、食品添加物の規格基準の改正や新規設定について審議します。専門家の意見を取り入れながら、今後も食品衛生に関する規格基準の策定を進めていきます。詳しい情報は<一次情報>からご確認ください。
 
 
2. 議題
報告事項
1. 既存添加物の取扱いにかかる今後の方針について
2. 既存添加物に係る販売等調査について
3. 食用赤色3号について
 
 
3. 議事概要
3-1. 既存添加物の取扱いにかかる今後の方針について
3-1-1. 安全性及び品質の確保に関する取り組み
既存添加物は、食品衛生法及び栄養改善法の一部を改正する法律に基づき作成された「既存添加物名簿」に収載されている。平成8年当時は489品目が収載されていたが、流通実態が確認できなかった品目や安全性に問題があると判断された品目の計132品目が消除され、令和7年2月現在で357品目が収載されている。安全性については、食品安全委員会の指針に従い、国内外の毒性試験結果を収集し、順次確認を行っている。
3-1-2. 安全性の確認と成分規格
既存添加物のうち、276品目について安全性の確認が行われているが、残り50品目については試験試料の入手が困難であるため、毒性試験の実施が実質的に不可能である。成分規格については、260品目に設定されているが、69品目については成分規格の設定が適していないと判断されている。
3-1-3. 既存添加物の使用実態
調査対象は、安全性評価が完了していないもの及び成分規格が存在しない62品目である。調査方法は、全国の衛生主幹部局を通じて添加物事業者及び食品製造事業者にアンケート方式で調査依頼を行う。調査項目には、添加物の製造工程、使用方法、食品への使用量、最終食品での残存量などが含まれる。
3-1-4. 安全性ならびに品質の確保に関する調査結果の判断方針
調査結果に基づき、使用方法や製造工程から毒性試験が不要と判断される場合がある。触媒として使用され、溶出・残存しない場合や、食経験豊富な原材料から抽出されたものなどが該当する。
成分規格の設定が困難な品目については、使用基準や製造基準を設定することで品質を確保する。触媒や吸着剤として使用され、溶出しないことが確認されれば、使用基準を設定することで品質を担保できる。
3-1-5. 今後の対応方針と対応
安全性確認が完了していない又は成分規格が設定されていない既存添加物について、包括的な調査を行い、適切な措置を導入する。具体的には、使用方法や製造方法に関する調査を行い、必要に応じて使用基準や製造基準を設定する。
3-1-6. 既存添加物に係る今後の対応スキームの提案
今後の対応スキームとして、食品安全委員会への諮問、食品衛生基準審議会での審議、告示改正を経て、安全性及び品質の確保を図る。調査結果に基づき、毒性試験や成分規格の設定が必要な品目については、適切な対応を行う。
 
3-2. 既存添加物に係る販売等調査について
3-2-1. 消除の概要
既存添加物の消除は、食品衛生法及び栄養改善法の一部を改正する法律に基づき行われる。内閣総理大臣は、販売、製造、輸入、加工、使用、貯蔵及び陳列の状況から、現に販売の用に供されていないと認める既存添加物について、消除予定添加物名簿を作成し、これを公示する。
これまで132品目が名簿から消除され、現在収載されている既存添加物は357品目である。消費者庁は、既存添加物8品目の予備的な販売等調査を行い、現に販売の用に供されていない可能性があることから、販売等の実態について調査を行うこととした。
3-2-2. 対象の既存添加物
消除の調査対象とする既存添加物は以下の8品目とした。
・ アクチニジン・・・ 名簿番号3、キウイフルーツに含まれる酵素で、タンパク質分解作用がある
・ アントシアナーゼ・・・ 名簿番号25、アントシアニン色素を分解する酵素
・ イソマルトデキストラナーゼ・・・ 名簿番号28、デキストランを分解する酵素
・ ウェランガム・・・ 名簿番号33、アルカリゲネスの培養液から得られる多糖類
・ トレハロースホスホリラーゼ・・・ 名簿番号223、トレハロースを分解する酵素
・ ファフィア色素・・・ 名簿番号253、ファフィアの培養液から得られるアスタキサンチンを主成分とする色素
・ マルトースホスホリラーゼ・・・ 名簿番号309、マルトースを分解する酵素
・ リポキシゲナーゼ・・・ 名簿番号343、脂肪酸を酸化する酵素
3-2-3. 消除予定添加物名簿の作成に向けた今後の作業
都道府県等自治体を通じて、対象となる8品目の販売等の流通実態調査を取りまとめる。申出期間は令和7年3月31日までとし、調査結果に基づき、消除予定添加物名簿を作成・公示し、必要な手続きを経て、既存添加物名簿から消除することとする。
Step 1. 通知の発出・・・ 対象品目の販売等の実態について、関係機関に通知を発出
Step 2. アンケート調査・・・ 添加物事業者及び食品製造事業者に対して、アンケート方式で調査依頼を実施
Step 3. データ収集・・・ 対象品目の製造工程、使用方法、食品への使用量、最終食品での残存量などの情報を収集
Step 4. 結果の取りまとめ・・・流通実態が確認できなかった品目については、消除へ
 
3-3. 食用赤色3号について
3-3-1. 食用赤色3号とは
食用赤色3号(別名:エリスロシン)は、食品衛生法第12条に基づき、昭和23年から食品添加物として指定されている着色料(食用タール色素)である。日本では主に菓子、漬物、かまぼこ等に使用されているが、特定の食品には使用が禁止されている。
3-3-2. 米国FDAの措置
2025年1月15日、米国FDAは連邦食品・医薬品・化粧品法(FD&C法)のデラニー条項に基づき、FD&C Red No.3の使用許可を取り消した。これにより、食品は2027年1月15日まで、内服薬は2028年1月18日までに処方変更が必要である。FDAは、ラットにおける発がん性試験の結果を基にしたが、人においては発がん性が認められないと結論した。
3-3-3. 海外評価機関による評価
1989年、EU食品科学委員会(SCF)は、ラットにおける甲状腺腫瘍の発生について、ヒトとラットの甲状腺生理学的な相違を考慮し、ADIを0-0.1 mg/kg体重/日と設定している。また、2011年のEFSAによる再評価では、エリスロシンが精子に与える影響についての新たな知見が報告されたが、ADIの改訂は不要とされた。
3-3-4. JECFAによる評価
1990年、JECFA(国連食糧農業機関/世界保健機関合同食品添加物専門家会議)はEFSAと同様の論文を根拠に、ADIを0-0.1 mg/kg体重/日と設定した。2018年の再評価では、遺伝毒性および生殖・発達毒性に関する新たな知見が報告されたが、ADIの修正は不要とされた。
3-3-5. 発がん性にかかる国内専門家の見解
国内専門家は、ラット試験で認められた甲状腺での発がんについて、人では安全性上問題とならないと考えている。食用赤色3号はラットの甲状腺ホルモンの変換を阻害するが、人とラットでは甲状腺ホルモンとTSHの動態に種差があり、高濃度での摂取は想定されないためである。
3-3-6. 国内における摂取量の推定
国内の生産量調査によると、食用赤色3号の一人あたり一日摂取量は0.032 mg/人/日であり、対ADI比0.6%である。また、マーケットバスケット方式による推定一日摂取量調査では、表示群で0.007 mg/人/日、混合群で0.003 mg/人/日と推計され、対ADI比はそれぞれ0.112%、0.048%である。いずれの調査においても、食用赤色3号の国内における推定一日摂取量はADIと比べて大きく下回っている。
 
 
4. 今後の展望
4-1. 既存添加物の取扱いにかかる今後の方針

既存添加物の安全性評価と規制の見直しが進められます。特に、成分規格が設定されていない既存添加物については、成分規格の設定が検討されます。これにより、添加物の品質と安全性を確保し、消費者の信頼を高めることが期待されます。また、最新の科学的知見を取り入れた再評価が行われ、必要に応じて使用制限や禁止措置が講じられます。
4-2. 既存添加物に係る販売等調査
既存添加物の市場での流通状況や使用実態についての調査が継続されます。調査結果に基づき、特定の添加物については販売停止や使用制限が検討されます。これにより、消費者の安全を確保するための適切な規制が行われることが期待されます。
4-3. 食用赤色3号の使用規制
食用赤色3号(エリスロシン)に関する最新の科学的データを基に、使用規制の強化や禁止措置が検討されます。特に、米国FDAの措置を踏まえ、日本でも同様の対応が求められます。これにより、消費者の健康リスクを低減することが期待されます。
4-4. 消費者への情報提供
既存添加物や食用赤色3号に関する情報を消費者に適切に提供することが重要です。これにより、消費者が添加物に関する正しい知識を持ち、安心して食品を選択できるようになります。情報提供の手段として、ウェブサイトやパンフレット、セミナーなどが検討されます。
4-5. 国際的な調和
既存添加物の規制において、国際的な調和を図ることが重要です。特に、輸出入に関連する添加物については、国際基準との整合性を確保することが求められます。国際的な規制動向を注視し、必要に応じて国内規制を見直す方針が示されます。
 
今後も継続的な調査と評価が行われ、必要に応じて規制が強化される予定です。詳しくは<一次情報>からご確認ください。
 
 
5. 議事・資料
議事次第
https://www.caa.go.jp/policies/council/fssc/meeting_materials/assets/fscc_cms101_250217_01.pdf
委員・参考人名簿
https://www.caa.go.jp/policies/council/fssc/meeting_materials/assets/fscc_cms101_250217_02.pdf
【資料1】既存添加物の取扱いにかかる今後の方針について
https://www.caa.go.jp/policies/council/fssc/meeting_materials/assets/fscc_cms101_250217_03.pdf
【資料2】消除予定添加物名簿の作成に係る販売等調査について
https://www.caa.go.jp/policies/council/fssc/meeting_materials/assets/fscc_cms101_250217_04.pdf
【資料3】食用赤色3号について
https://www.caa.go.jp/policies/council/fssc/meeting_materials/assets/fscc_cms101_250217_05.pdf
【参考資料1】「食品、添加物等の規格基準」において成分規格が設定されていない既存添加物リスト
https://www.caa.go.jp/policies/council/fssc/meeting_materials/assets/fscc_cms101_250217_06.pdf
【参考資料2】既存添加物 安全性評価検討中品目リスト
https://www.caa.go.jp/policies/council/fssc/meeting_materials/assets/fscc_cms101_250217_07.pdf
【参考資料3】消除予定添加物名簿の作成に係る販売等調査及び既存添加物「5’-デアミナーゼ」の基原等調査について(周知依頼)(令和6年12月27日付け消食基第413号)
https://www.caa.go.jp/policies/council/fssc/meeting_materials/assets/fscc_cms101_250217_08.pdf
【参考資料4】FDA to Revoke Authorization for the Use of Red No. 3 in Food and Ingested Drugs
https://www.caa.go.jp/policies/council/fssc/meeting_materials/assets/fscc_cms101_250217_09.pdf
【参考資料5】米国FDAプレスリリース(仮訳)
https://www.caa.go.jp/policies/council/fssc/meeting_materials/assets/fscc_cms101_250217_10.pdf
 
 
 
<一次情報>
令和6年度第3回食品衛生基準審議会添加物部会(2025年2月18日)
https://www.caa.go.jp/policies/council/fssc/meeting_materials/review_meeting_002/041163.html
令和6年度第3回食品衛生基準審議会添加物部会の開催について
https://www.caa.go.jp/notice/entry/041090/
 
<関連情報>
令和6年度第2回食品衛生基準審議会添加物部会(2024年11月28日)
https://www.caa.go.jp/policies/council/fssc/meeting_materials/review_meeting_002/040191.html
令和6年度第1回食品衛生基準審議会添加物部会(2024年6月5日)
https://www.caa.go.jp/policies/council/fssc/meeting_materials/review_meeting_002/038019.html

 
 

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