第2回食品期限表示の設定のためのガイドラインの見直し検討会 概要
第2回食品期限表示の設定のためのガイドラインの見直し検討会 概要(本文5,488文字)
消費者庁は、令和6年10月21日に第2回食品期限表示の設定のためのガイドラインの見直し検討会を開催しました。本検討会は、食品ロス削減と食品安全性の確保の両立を目指し、食品期限表示の設定のためのガイドラインを令和6年度末を目途に見直すものです。具体的には、消費期限と賞味期限の区別、客観的項目における代表的な試験、ハザードとリスク等のガイドライン改正と、賞味期限切れ食品の取扱い、食品表示基準Q&Aの改正について検討していきます。
<議題>
(1) 第1回検討会での委員からの意見について
(2) 加工食品の期限表示設定に関する実態調査アンケート結果及びヒアリング中間報告について
(3) 「食品期限表示の設定のためのガイドライン」見直しに向けての論点(案)について
(4) 表示期限を過ぎた食品の取扱いについて
(5) その他
<概要>
1. 第1回検討会での委員からの意見について
1-1. 諸外国における安全係数と日本における安全係数0.8の根拠
1-1-1. 諸外国の安全係数について
米国: 期限表示の具体的な計算手法は定められておらず、事業者の判断に任されている。
EU: 欧州食品安全機関(EFSA)は食品事業者が適切な保存可能期間を決定する考え方を示しているが、安全係数の具体的な数値は示されていない。
イギリス: 期限表示の具体的な計算手法は明示されていないが、食品事業者が科学的根拠に基づいて設定することが求められている。
フランス: 期限表示は食品の特性に応じて設定されるが、安全係数の具体的な数値は示されていない。
韓国: 消費期限は「品質安全限界期間」に安全係数(80~90%)を掛けて設定される。
コーデックス: 食品の安全性を確保するための基準を設けているが、安全係数の具体的な数値は示されていない。
1-1-2. 日本の安全係数0.8の根拠
日本では、食品の品質のばらつきや保存環境の差を考慮し、安全側に余裕を持たせるために安全係数を設定している。一般的には0.7~0.9の範囲で設定され、中間値として0.8が採用されている。これは、製造年月日表示に代わる期限表示導入に向けた各種検討結果や事業者の実態を踏まえたものである。
1-2. 消費期限「製造日を含めておおむね5日以内」とされることが広まった経緯について
① 1995年2月17日: 厚生省が「食品衛生法施行規則等の一部改正について」の通知を発出。この通知で、品質が急速に劣化しやすい食品は製造日を含めておおむね5日以内に消費する必要があると定めた。
② 1995年以降: 自治体や業界団体がこの通知に基づきガイドラインを作成し、具体的な消費期限の設定方法を確立。牛乳や生菓子などが対象となった。
③ 2003年: 食品衛生法の改正により、消費期限の表示が義務化された。これにより、消費期限の基準がさらに明確化された。
④ 2008年(平成20年): 消費者庁が設立され、食品表示に関するガイドラインがさらに整備された。これにより、消費期限の基準が一層明確化された。
⑤ その後: 消費者庁のガイドラインや検討会での議論を経て、この基準が広く認知され、業界全体で統一された基準が確立された。
1-3. 自治体における食品衛生監視上の指標について
食品の安全性を確保する食品衛生監視上の指標は、食品等事業者に対する衛生指導や助言、自主衛生管理の推進を目的として、生菌数や大腸菌群などの微生物基準が設定されており、また調理ご飯や生菓子、豆腐などの食品ごとに異なる基準が設けられている。自治体はこれらの指標に基づき、定期的な監視や検査を行い、食品の衛生管理を徹底している。
2. 加工食品の期限表示設定に関する実態調査アンケート結果及びヒアリング中間報告について
2-1. アンケート
2-1-1. 期限表示設定について
2-1-1-1. 現状と課題
加工食品の期限表示設定に関する現状と課題が調査された。企業は、消費期限や賞味期限の設定基準や方法について回答し、設定における法的規制やガイドラインの遵守状況が確認された。
2-1-1-2. 設定基準
企業は、製品の特性や保存条件に基づいて期限を設定している。例えば、温度管理が必要な製品では、厳密な期限設定が求められる。
2-1-1-3. 課題
一部の企業は、期限表示の設定において消費者の理解不足や誤解を招く可能性があると指摘している。また、法的規制の解釈にばらつきがあることも課題として挙げられた。
2-1-2. 食ロス削減に向けた期限表示設定における取組について
2-1-2-1. 見直しと延長
食品ロス削減を目的とした期限表示の見直しや延長の取り組みが報告された。具体的には、製品の品質保持期間を再評価し、必要に応じて期限を延長することが行われている。
2-1-2-2. 具体的な取組
原材料の変更や製造方法の改善が挙げられた。例えば、保存料の使用や包装技術の向上により、製品の保存期間を延ばす試みがなされている。
2-1-2-3. 消費者教育
企業は、消費者教育や啓発活動を通じて、食品ロス削減の意識向上を図っている。具体的には、期限表示の正しい理解を促すキャンペーンや情報提供が行われている。
2-1-3. 容器包装デザインと期限表示設定の管轄について
2-1-3-1. デザインと表示の関係
容器包装のデザインと期限表示の関係性についての意見が収集された。例えば、パッケージのデザインが期限表示の視認性に与える影響について議論された。
2-1-3-2. 消費者への影響
期限表示が消費者に与える影響や、デザインの工夫について議論された。特に、高齢者や視覚障害者に配慮した表示方法の必要性が指摘された。
2-1-3-3. 改善提案
期限表示の見やすさや理解しやすさを向上させるための提案がなされた。例えば、フォントサイズの拡大や色のコントラストを高めることが提案された。
2-2. ヒアリング
2-2-1. 期限表示設定について
2-2-1-1. 意見収集
企業や専門家からの意見を基に、期限表示の設定基準や方法の改善点が検討された。
2-2-1-2. 設定基準の見直し
現行の期限表示設定基準が適切かどうかについて議論が行われた。特に、製品の特性や保存条件に応じた柔軟な基準の必要性が指摘された。
2-2-1-3. 法的規制の解釈
法的規制の解釈にばらつきがあることが課題として挙げられ、統一的なガイドラインの必要性が強調された。
2-2-1-4. 消費者の理解
消費者が期限表示を正しく理解し、適切に利用できるようにするための教育や啓発活動の重要性が強調された。
2-2-2. 食ロス削減に向けた取組について
2-2-2-1. 具体的な施策
食品ロス削減のための具体的な施策が企業から報告された。例えば、製品の品質保持期間の再評価や、保存技術の向上が挙げられた。
2-2-2-2. 課題と対策
企業が直面する課題についての意見が集められた。特に、消費者の意識改革や、流通段階でのロス削減の難しさが指摘された。
2-2-2-3. 成功事例
成功した取り組みの事例が共有され、他の企業への参考として紹介された。例えば、期限表示の見直しによる廃棄削減や、消費者教育の効果が報告された。
2-2-2-4. 今後の方向性
今後の取り組みの方向性について議論が行われ、食品ロス削減に向けたさらなる努力が求められた。
2-3. 実態調査まとめ
2-3-1. アンケート結果の分析
アンケートの結果を総合的に分析し、加工食品の期限表示設定に関する現状と課題が明らかにされた。企業の回答から、期限表示の設定基準や方法に関する多様なアプローチが確認された。
2-3-2. ヒアリング結果の統合
ヒアリングで収集された企業や専門家の意見を基に、期限表示設定の改善点や食品ロス削減に向けた具体的な施策が検討された。特に、法的規制の解釈や消費者教育の重要性が注目された。
2-3-3. 食品ロス削減の効果
食品ロス削減に向けた取り組みの効果が評価され、期限表示の見直しや延長による廃棄削減の成果などの成功事例が紹介された。
2-3-4. 今後の改善点
今後の改善点として、期限表示の見やすさや理解しやすさを向上させるための提案がなされた。具体的には、フォントサイズの拡大や色のコントラストを高めることが提案された。
2-3-5. 提言
調査結果を基に、加工食品の期限表示設定に関する今後の方向性や政策提言がまとめられ、統一的なガイドラインの策定や消費者教育の強化が求められた。
以上のとおり、本調査では、加工食品の期限表示設定に関する現状と課題が明らかにされた。アンケートとヒアリングを通じて、企業の設定基準や方法、食品ロス削減に向けた具体的な取り組みが詳細に報告された。特に、期限表示の見直しや延長、消費者教育の重要性が指摘された。容器包装デザインと期限表示の関係性についても議論され、視認性や理解しやすさの向上が求められた。今後は、統一的なガイドラインの策定や消費者教育の強化が必要であり、食品ロス削減に向けたさらなる努力が期待される。調査結果を基に、政策提言がまとめられ、持続可能な食品管理の実現に向けた方向性が示される。
3. 「食品期限表示の設定のためのガイドライン」見直しに向けての論点(案)について
第2回検討会にて提案された論点案は、次の3項;
3-1. 期限表示設定の指標
【問題点】微生物試験において、一般生菌数とそれ以外の食中毒菌等の試験項目を重複して実施している事業者が多い。ただし、現在のガイドラインでは、両方必要であると解釈されている。
【論点案】食品の特性や事業者ごとの検査体制に応じて、自ら必要な指標を適切に選定するよう促すガイドラインの検討。
3-2. 安全係数
【問題点】「食品表示基準Q&A」の(加工-22)において「0.8以上を目安に(安全係数を)設定することが望ましい」とあるが、「0.8未満」の設定をしている品目が4割弱ある。
【論点案】微生物の増加状況等の食品の特性等に応じた、安全係数の必要性も含めた見直し。
3-3. 「まだ食べることができる食品」の取扱い
【問題点】「食べることができる期限」に関する情報開示については、期限切れ食品の食用活用をしている品目のうち、「今後、必要に応じて開示することができる」と回答した品目が約6割であった。
【論点案】「食べることができる期限」を有している事業者もあることがわかったので、寄附の促進につながるよう、それらの情報の活用方法を検討。
4. 表示期限を過ぎた食品の取扱いについて
4-1. 食品ロス削減目標達成に向けた施策パッケージ
「食品の期限表示の在り方」として、平成17年に策定されたガイドラインを見直し、期限表示の設定根拠や安全係数の実態を調査し、有識者による検討会を設けることが提案されている。特に、賞味期限が過ぎても「まだ食べることができる食品」の取扱いを具体的に検討し、食品寄附活動の促進を目指す。
施策パッケージには次の2点が背景にある;
①諸外国の事例として、米国、EU、イギリス、フランス、韓国の調査結果が紹介され、賞味期限を過ぎた食品の販売や寄附が認められている国もある。特にイギリスとフランスでは、公的機関やフードバンクが期限を過ぎた食品を扱っている。
②日本では、「令和3年度地方消費者行政に関する先進的モデル事業」で、防災備蓄食等の長期保存食を対象に、賞味期限を超過した食品の安全性確認を前提とした消費の目安の認証方法を策定した。しかし、賞味期限を超過した食品に対する消費者のネガティブな感情を改善し、社会的な共通認識を形成する必要があると指摘されている。
4-2.諸外国における表示期限を過ぎた食品の取扱い(腐敗等がない場合)
表 諸外国における表示期限を過ぎた食品の取扱い(腐敗等がない場合)
4-2-1. イギリスの状況
イギリスでは、賞味期限を過ぎた食品の取扱いについて、WRAP(循環経済推進NGO)のガイダンスに基づき、再流通が可能な期間を設定している。例えば、生鮮果物や野菜は1~14日、パンは1週間、ポテトチップスは1か月など、食品ごとに異なる期間が定められている。また、最大のフードバンクであるFare Shareでは、賞味期限を過ぎた食品も受け入れており、再流通前に目視検査を行うことで安全性を確認している1。
4-2-2. フランスの状況
フランスでは、国立消費研究所(INC)が「食品保存表」を公表し、賞味期限や消費期限を過ぎた食品の可食可能期間を整理している。例えば、「賞味期限表示が付された冷蔵食品」のバターは賞味期限後も最長2週間、「冷凍・急速冷凍された食品」の鮮魚は最長6か月まで配布可能とされている。また、フードバンクや慈善団体は「適切な衛生慣行とHACCP原則の適用に関するガイド-2022」による目安に基づき、賞味期限を過ぎた食品の配布可能期間を示している。
4-3. 令和3年度地方消費者行政に関する先進的モデル事業
事業内容1: 賞味期限を超過した食品の流通システム構築
防災備蓄食などの長期保存食を対象に、賞味期限を超過した食品の安全性を確認し、消費の目安を認証する方法を策定した。この取り組みは、食品ロス削減と消費者の安全確保を両立させることを目的としている。また、賞味期限を超過した食品に対する消費者のネガティブな感情を改善し、社会的な共通認識を形成することも目指している。
事業内容2: 受益者における心理学的検証
あんしん期限を付与された「生活応援食品」をフードバンクや社会福祉協議会の職員および最終受益者がどのように感じるかを、社会心理学的に検証している。取組へのモチベーションや受益者が感じるスティグマ(恥、不名誉な烙印)などが焦点である。結論として、賞味期限を超過した食品がまだ食べられるものであることを社会的に認識する必要があると指摘されている。
事業内容3: 提供・寄付者の寄附を行いやすい体制(自動概算見積もり機能等)構築
提供・寄付者が寄附を行いやすい体制を整えるために、自動概算見積もり機能のシステム構築が検討されている。このシステムは、寄附品の品目、数量、賞味期限、保管場所などの情報を入力することで、寄附にかかる経費を自動的に算出する機能を提供する。これにより、寄附手続きが迅速かつ効率的に行えるようになるとしている。
<配布資料>
【議事次第】第2回食品期限表示の設定のためのガイドラインの見直し検討会
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/meeting_materials/assets/food_labeling_cms201_241018_01.pdf
【資料1】第1回検討会でのご意見について
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/meeting_materials/assets/food_labeling_cms201_241018_02.pdf
【資料2】加工食品の期限表示設定に関する実態調査_アンケート結果及びヒアリング中間報告
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/meeting_materials/assets/food_labeling_cms201_241018_03.pdf
【資料3】実態調査結果を踏まえた_ 「食品期限表示の設定のためのガイドライン」_見直しに向けての論点(案)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/meeting_materials/assets/food_labeling_cms201_241018_04.pdf
【資料4】表示期限を過ぎた食品の取扱い
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/meeting_materials/assets/food_labeling_cms201_241018_05.pdf
<一次情報>
第2回食品期限表示の設定のためのガイドラインの見直し検討会(2024年10月21日)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/meeting_materials/review_meeting_011/039619.html
第2回食品期限表示の設定のためのガイドラインの見直し検討会の開催について
https://www.caa.go.jp/notice/assets/food_labeling_cms201_241010_1.pdf
<関連情報>
第1回食品期限表示の設定のためのガイドラインの見直し検討会(2024年5月27日)
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/meeting_materials/review_meeting_011/037912.html