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備蓄米について
備蓄米について(本文3,179文字)
農林水産省は、米の取引価格高騰を受け、「備蓄米の放出」の検討に入りました。「備蓄米」とその粗放出についてご案内します。
<大臣記者会見から>
江藤農林水産大臣は1月31日の定例記者会見で、米の供給は十分であるが市場に出回っていないため、備蓄米の放出を検討していると述べています。このところの米価の急激な高騰を受け、政府は買戻し条件付きで備蓄米を売り渡すことで市場の安定を図る方針です。
江藤農林水産大臣記者会見概要(令和7年1月31日)から
記者
備蓄米に関して、これまで活用を否定してきましたが、米の相対取引価格が過去最高値を更新する中で基本指針を変えるのは、タイミングとしては適切とお考えでしょうか。
大臣
昨年からずっと申し上げてきましたが、米はあると。そして、昨年よりも18万トン多い、679万トンです。このような状況の中、米は十分に供給されているのに、市場に出てこないのであれば、どこかにスタックしていると考えざるを得ない。私も地元に帰れば、生産者の方々は、米の値上がりを喜んでいます。営農意欲が湧いたという声もたくさん聞いて、よかったと。私は農業をずっとやってきた人間ですから、正直そう思います。しかし、農水省は国民の皆様方に安定的に食料を供給する義務もありますので、国会議員になって、もちろん目は通していましたが、これほど食糧法(主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律)を隅々まで読んだことはありません。それぞれの条項について検討した結果、これを諮問することが適切だろうと。農水大臣としての判断で、買戻し条件付きですけれども、売り渡せることになれば、それなりの効果が期待できるのではないかと考えています。
https://www.maff.go.jp/j/press-conf/250131.html
<概要>
1. 備蓄米とは
備蓄米とは、凶作や不作時に備えて日本政府が保存している米のことです。1995年に「主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律」が施行され、制度が発足しました。この法律では、米穀の生産量の減少によりその供給が不足する事態に備え、必要な数量の米穀を在庫として保有することを「米穀の備蓄」と定義しています。
備蓄米の歴史は、1993年の「平成の米騒動」に遡ります。この年、日本は記録的な冷夏に見舞われ、米の供給が大幅に不足しました。この経験を踏まえ、1995年に備蓄米制度が導入されました。当初の備蓄水準は150万トンでしたが、その後200万トンを超えるようになり、財政負担の問題などから100万トンに削減されました。
このように、備蓄米制度は日本の食料安全保障を支える重要な仕組みとして機能しています。制度の発足以来、政府は備蓄米の管理と運用を通じて、安定した米の供給を確保し、国民の食料安全を守るための努力を続けています。
2. 備蓄について
米を備蓄する目的は、凶作や不作時に安定した米の供給を確保することです。自然災害や経済危機、疫病の大流行などのリスクに対処する備えであり、米不足や価格の急騰を防ぎ、国民の食料安全を守ります。
備蓄米の管理者は農林水産省であり、全国農業協同組合連合会(JA)や政府寄託倉庫が低温保管システムを利用して品質を維持しています。農林水産省は、備蓄米の数量や品質の定期的にチェック、必要に応じた更新および補充、地域ごとの需要や供給状況を考慮した計画的運用などを実施しています。
現在の備蓄量は約100万トンです。この量は、日本の米の年間総需要量の約8分の1に相当し、10年に1度の不作や通常程度の不作が2年連続で起きた場合にも対応できる量として設定されています。備蓄米は毎年20万トン超を購入し、これを5年間保持して、常に合計約100万トンの米を備蓄する方式で運用されています。
3. 備蓄米の放出に指摘される問題
3-1. タイミングと量の調整
米価が高騰している場合でも、備蓄米の放出が遅れることがあります。これは、放出のタイミングや量が適切でないと市場に混乱を招く可能性があるためです。また、過剰な放出は市場価格の急落を引き起こし、農家の収入に悪影響を与える可能性があります。
3-2. 品質
長期間保存された米は品質が劣化してしまうリスクがあります。備蓄米は低温保管され、定期的に品質チェックが行われていますが、それでも保存期間が長くなると品質が低下する懸念があります。これに対して、農林水産省は品質管理を徹底し、消費者に安全な米を提供するための取り組みを行っています。
3-3. 市場への影響
備蓄米の放出が過剰に実施されると、通常の流通米の価格や供給に影響を与える可能性があり、米市場全体の安定性が損なわれるリスクがあります。
4. 政府方針
政府は2025年1月24日に、備蓄米の放出方針を見直す考えを発表しました。この新しい方針では、備蓄米の放出後に一定期間内での買い戻しを条件とする制度が導入される見込みで、備蓄米の運用がより柔軟になり、市場の安定に寄与することが期待されています。また、民間在庫を正確に把握するため、調査対象を農家や小規模な卸売業者などにも広げる考えです。
この方針転換の背景には、昨今の米価高騰があります。2024年産米の収穫量は前年から18万トン増えたものの、主要な集荷業者の集荷量は減少しており、米の先高観を見越した小規模業者や農家が在庫を抱え込んでいると見られています。
政府は、これらの状況を踏まえ、備蓄米の放出を通じて市場の安定を図るとともに、国民の食料安全を確保するための取り組みを強化します。
5. 備蓄米の放出
備蓄米の放出にかかる今後の見通しとしては、2025年1月31日に開かれた食料・農業・農村政策審議会(農水相の諮問機関)食糧部会にて政府備蓄米を放出する新たな制度が了承されたことを受け、農林水産省は今後の流通状況を見極めながら、適切なタイミングで備蓄米を放出する予定としています。放出の大まかな手順は次の通り;
5-1. 市場の状況監視
農林水産省は市場の米価や流通状況を常に監視し、必要に応じて食糧部会で議論
5-2. 放出の決定
市場に流通の支障が生じた場合、農林水産大臣が食糧部会の意見を参考にしつつ最終決定
5-3. 放出の実施
決定後、備蓄米はJAなどを通じて市場に放出
5-4. 買い戻し
放出後、1年以内に同等同量の国産米を買い戻し、備蓄米の数量を回復・維持
6. 今後の展望
6-1. 市場の安定化と連携強化
備蓄米の放出は、米価の急騰を抑えるための重要な手段です。政府は、米価が高騰した際に備蓄米を放出することで、価格の安定を図り、消費者の生活費負担を軽減と米市場全体の安定を目指します。また、適切なタイミングで備蓄米を放出することで、米価の急激な変動を防ぎ、安定した供給を確保します。
6-2. 新制度の導入
2025年1月31日に農林水産省が発表した新制度では、備蓄米の放出後に一定期間内での買い戻しを条件とする仕組みが導入されます。この制度により、備蓄米の運用がより柔軟になり、長期的な備蓄量の維持が可能となります。
6-3. 経済効果など
備蓄米の放出は、米価の急騰を抑えることで、消費者物価指数(CPI)の上昇を抑制し、米価の高騰が物価を0.4%押し上げ、さらに個人消費やGDPを年間0.2%押し下げると試算されます。備蓄米の放出により、これらの経済的な負担を軽減し、消費者の購買力を維持することが期待されます。
<まとめ>
農林水産省は、2025年1月17日に米に関するレポートを発表し、江藤農林水産大臣は1月31日の記者会見で、米の供給は十分だが市場に出回っていないため、備蓄米の放出を検討していると述べました。米価の高騰を受け、政府は買戻し条件付きで備蓄米を売り渡す方針です。
備蓄米は凶作や不作時に備えて保存されており、現在の備蓄量は約100万トンです。2025年1月24日に政府は備蓄米の放出方針を見直し、流通に支障が出た場合にも放出できるようにしました。新制度では、放出後に一定期間内での買い戻しを条件とする仕組みが導入され、備蓄米の運用がより柔軟になり、市場の安定に寄与することが期待されています。
<一次情報>
【農林水産省】米をめぐる参考資料
https://www.maff.go.jp/j/seisan/kikaku/kome_siryou.html
「農林水産省」備蓄米制度(びちくまいせいど)について教えてください。
https://www.maff.go.jp/j/heya/kodomo_sodan/0012/07.html
【農林水産省】政府備蓄米の交付について
https://www.maff.go.jp/j/seisan/kokumotu/bichikumai.html
【農林水産省】政府備蓄米の運営について
https://www.google.com/url?client=internal-element-cse&cx=015840603635610229114:d5nyfxhiq78&q=https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/syokuryo/250131/attach/pdf/250131-70.pdf&sa=U&ved=2ahUKEwjQlumXpKSLAxWOslYBHYbIAqo4ChAWegQIBxAC&usg=AOvVaw0lBuf1Izi-BxpyN9pr4-Gw
【農林水産省】江藤農林水産大臣記者会見概要(令和7年1月31日)
https://www.maff.go.jp/j/press-conf/250131.html