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【レポート】わが国の食料システムの現状と研究開発の潮流

【レポート】わが国の食料システムの現状と研究開発の潮流(本文2,307文字)
 
 
国立研究開発法人科学技術振興機構研究開発戦略センター(CRDS)は、令和6年10月19日に、「食料システム」に関するわが国の現状と関連する研究開発の潮流ならびに今後の展望を、エグゼクティブサマリーとして公表しました。以下にその内容のエッセンスをまとめます。詳細は<一次情報>からご確認ください。
 
 
1. 食料システムを取り巻く状況
食料システムを取り巻く状況は多岐にわたり、持続可能な未来を実現するためには包括的なアプローチが求められている。
食料システムは環境負荷の大きな要因であり、特に畜産業が温室効果ガス排出の主要部分を占める。世界の温室効果ガス排出の14.5~20%が畜産業から発生しており、窒素・リン循環の悪化も問題である。低環境負荷で高効率な食料生産への変革が求められている。
気候変動も大きな影響を与えており、異常気象や気温の上昇が農作物の生産量に直接影響する。豪雨や干ばつが収穫量を減少させるため、耐気候性の高い作物の開発や灌漑技術の改善が必要である。
また、日本の食料自給率は約38%と低く、多くの食料を輸入に依存している。国際的な供給チェーンの変動や貿易摩擦が国内の食料供給に影響を与える可能性があるため、国内生産の強化や多様な輸入先の確保が重要である。
 
2. わが国の食料システムの全体俯瞰
日本の食料システムは、資材調達、生産、流通、消費の各段階で多くの課題に直面している。肥料や飼料の自給率が低く、輸入依存が高いことが問題である。農業従事者の減少と高齢化、物流の2024年問題も深刻である。食料自給率は約38%と低く、フードロスや食料価格の高騰も課題である。持続可能なシステムの構築が求められている。
 
3. わが国の食料システムに関する問題
わが国の食料システムに関する問題は、「資材」、「生産」、「食料」、「流通」、および「消費」に大別され、資材の輸入依存、生産者の高齢化と減少、低い食料自給率、物流の課題、消費者の意識変化とフードロス問題など、多くの課題に直面している。
①資材・・・ 肥料や飼料の自給率が低く、肥料はほぼ0%、飼料は約26%にとどまる。輸入価格の高騰がリスクとなり、資材調達の多角化が求められている。特に、肥料の輸入依存度が高く、経済安全保障上の課題となっている。
②生産・・・ 農業従事者の減少と高齢化が進み、労働力不足が深刻。2020年には農業従事者の平均年齢が65歳以上で70%を占める。災害や気候変動による収量変動も課題であり、省力化技術や生産力向上が必要である。
③食料・・・ 食料自給率は約38%と低く、特にタンパク質供給が危機的状況にある。主要農産物は主に同志国から輸入されており、油脂類と畜産物の海外依存度が高い。フードロスも大きな問題であり、効率的な食料利用が求められている。
④流通・・・ 物流の2024年問題があり、物流従事者の減少や高齢化が進行。これにより、食料の安定供給が脅かされる可能性があるため、物流の効率化が必要である。地政学的影響やエネルギー価格の変動も物流に影響を与えている。
⑤消費・・・ 消費者の健康志向や環境意識の高まりにより、オーガニック食品や地産地消の需要が増加。食品ロス削減の取り組みも進んでいるが、さらなる改善が求められている。栄養過剰や不足による健康問題も懸念されている。
 
4. 食料システムに関する研究開発
日本の食料システムの研究開発は、持続可能性と効率性の向上を目指している。主な分野は以下の通りである。
(A)予測・評価のデータ科学
データ科学を活用し、気候変動や災害の影響を予測する技術が開発されている。これにより、農作物や畜産物の生産量変動を予測し、食料供給の安定化を図る。
(B)生産資材の供給・省資源農業
資材の高騰や輸入途絶に備えた代替資材の開発が進められている。低エネルギーで高効率なアンモニア生産法や、廃棄物からの肥料回収技術が含まれる。
(C)生産力の向上・省力農業
微生物を活用した収量向上技術や光合成活性の向上技術が開発されている。AIを活用したデータ解析や自動運転農機の導入も進められている。
(D)代替生産技術・食品関連技術
雑穀類の品種改良や培養肉の製造技術が開発されている。精密発酵によるタンパク質生産や藻類による食用油脂の生産技術も含まれる。
 
5. 今後の展望
さらなる進展が期待される研究開発として、サプライチェーンの「資材」、「生産」、「食料」、「流通」、および「消費」の各段階における今後の展望は、次の通り。
①資材・・・ 低エネルギーで高効率なアンモニア生産法や、廃棄物からの肥料回収技術の開発が進められている。これにより、資材の高騰や輸入途絶に備える。
②生産・・・ 気候変動に対応した作物の開発や、省力化技術の導入が重要である。AIを活用したデータ解析や自動運転農機の導入も進められている。
③食料・・・ 雑穀類の品種改良や培養肉の製造技術が開発されている。精密発酵によるタンパク質生産や藻類による食用油脂の生産技術も含まれる。
④流通・・・ 物流の効率化が求められており、特に物流従事者の減少や高齢化に対応するための技術開発が進められている。
⑤消費・・・ 消費者の健康志向に対応した食品の機能性向上やおいしさを追求する技術が進展している。フードロス削減に資する技術も重要である。
 
6. まとめ
持続可能性と食料安全保障を満たす食料システムの構築が求められている。一次生産従事者の減少・高齢化、低い肥料・飼料自給率、低い食料自給率などの課題に対し、データ科学、省資源農業、省力農業、代替生産技術の研究開発が進展しており、今後もさらなる進展が期待されている。
 
詳細は<一次情報>からご確認ください。
 
 
 
<一次情報>
わが国の食料システムの現状と研究開発の潮流
https://www.jst.go.jp/crds/pdf/2024/XR/CRDS-FY2024-XR-10.pdf
 

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