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食品安全委員会の20年を振り返る#8「無機ヒ素の健康影響は?」 概要

食品安全委員会の20年を振り返る#8 「無機ヒ素の健康影響は?」 概要(本文775文字)
  
1.     はじめに
本資料は、食品安全委員会設立20周年記念企画の一環として、無機ヒ素の健康影響に関する知見の変遷を概観するものである。
 
2.     毒性評価の進歩
・ 2003年、食品安全委員会は、暫定指針値0.01mg/kg体重/日を策定し、米中の無機ヒ素濃度調査を実施した。
・ 2010年、国際機関研究機関(IARC)は、無機ヒ素をグループ1(ヒトに対する発癌性が認められる)に分類した。
・ 2011年、食品安全委員会は、IARCの評価に基づき、暫定指針値を0.0009mg/kg体重/週に修正した。
 
3.     健康影響への理解
・ 無機ヒ素の皮膚、生殖・発生、神経発達への悪影響、発がん性に関する研究結果が積み重ねられてきた。
・ 特に、神経発達障害への影響は近年注目されており、胎児期・乳幼児期における低用量曝露のリスク評価が課題となっている。
・ 近年の研究では、無機ヒ素の低用量曝露が、神経発達障害、認知機能障害、糖尿病、心疾患などのリスクと関連する可能性が示唆されている。
 
4.     リスク管理の現状
・ 食品中の無機ヒ素濃度調査結果に基づき、我が国の現状では健康被害が懸念されるレベルではないと評価されている。
・ しかし、米をはじめとする食品中の無機ヒ素濃度低減に向けた取り組みが継続されている。
・ 2020年、食品安全委員会は、米中の無機ヒ素濃度目標値を0.005mg/kgに設定した。
 
5.     今後の課題
・ 無機ヒ素の健康影響に関する研究をさらに推進し、リスク評価の精度向上と効果的なリスク管理手法の開発が求められる。
・ 特に、神経発達障害への影響、低用量曝露のリスク評価、個体差の考慮などが重要課題である。
・ 国際的な情報共有・連携を強化し、リスク管理の国際的な調和を目指す。
 
6.     結論
食品安全委員会は、無機ヒ素の健康影響に関する科学的知見に基づいて、適切なリスク管理を実施してきた。今後も最新の科学的知見を取り入れ、国民の健康保護に努める。
 
 
 
<一次情報>
https://www.fsc.go.jp/iinkai/20shunen/08_mukihiso.html
 
 
<関連情報>
「食品安全委員会の20年を振り返る」
第1回 トランス脂肪酸〜リスク評価の意味を知ってほしい〜
https://www.fsc.go.jp/iinkai/20shunen/01_toransushibosan.html
第2回 薬剤耐性(AMR)のリスク評価に挑む
https://www.fsc.go.jp/iinkai/20shunen/02_amr.html
第3回 カンピロバクターとの長い闘い
https://www.fsc.go.jp/iinkai/20shunen/03_campylobacter.html
第4回 「健康食品」は安全とは限らない〜委員長らが異例の呼びかけ
https://www.fsc.go.jp/iinkai/20shunen/04_kenkosyokuhin.html
第5回 アクリルアミドともやし炒め〜リスク評価のその後は?
https://www.fsc.go.jp/iinkai/20shunen/05_akuriruamido.html
第6回 BSE問題前編〜20年前、食品安全委員会設立のきっかけに
https://www.fsc.go.jp/iinkai/20shunen/06_prion_vol1.html
第7回 BSE問題後編〜プリオン病情報を収集し、リスクに備える
https://www.fsc.go.jp/iinkai/20shunen/07_prion_vol2.html
 

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