(小説)リリック・アンシューン(4)
突き抜けるほど爽快に、空が晴れ渡っている午前。
書斎の電話が鳴っている。
しかし、エブニーザは暗い顔で下を向いて出ようとしない。
クラハがいつも通り、郵便物を抱えて入ってきた。
「電話取らないの?」
と聞いたかと思うと、勝手に受話器を取った。
「エブニーザ様は忙しいから私が受けるわ?どなた?……えっ?」
クラハがびっくりした顔でエブニーザに向かって叫んだ。
「アンゲルが刺されたって言ってるわ!!」
「わかってますよ」
エブニーザは、暗い顔で、下を向いたままつぶやいた。
「だから、取りたくなかったんです」
エブニーザの友人で、精神科医でもあるアンゲル・レノウスが、患者に刺し殺された。
電話は、彼の妻のエレノアからだった。
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