レバレッジETFは参照資産とズレる(付録:レバレッジETFの長期保有は破産への近道)
おはようございます。ひよこさんがSOXとSOXSが微妙に連動してない、という重要な気づきについてお話をされていたので、レバレッジETFについて軽くお話しておきます。
ひよこさん!タイトル!これ共有をためらうやつです(笑)
結論
まず結論ですが、n倍レバレッジETFを買ったとして、
①そもそもレバETFは参照資産と(少しだが)ズレるもの
②逓減する
③コストが高い
ことから、短期的にも長期的にもきれいに原資産のn倍にはなりません。
これはレバレッジ投信も同じです。
①については、そもそも参照資産と言いつつその資産を実際に保有して値動きさせているわけではないことが多いですので、短期の値動きも、ほんの少しですがズレます。また、②、③から、レバレッジETFはレバ比率が高いほど長期で保有したときの破産確率が高くなります。
チャートで実証
分かり易いSOX、SOXL、SOXSの比較チャートを張っておきますね。
原資産のSOXはグラフ表示期間内で+2.23%である一方、SOXLは-36.4%、SOXSに至っては-60%超えです。3倍連動とは…
(チャートはTrading viewより)
「そりゃぁ半年以上持ってたらそうなるでしょう」って思ったあなたへ。もっと短期でも起きます。
次の図は期間3か月ほどで、原資産は+0.12%, SOXLは-4.44%, SOXSは-11%です。
結論としては、レバレッジETF(特にベア/インバースと呼ばれるもの)は、塩漬けたら終わりです(右肩上がりのインデックスでたまたま成功した場合を除く)。ぜひ覚えておいてください。
(チャートはTrading viewより)
ところが、日足の長期チャート、特にブル型のSOXLでは、このような傾向は全く見えないんですよね。右肩上がりに見えます。
(チャートはTrading viewより)
これは、SOXの構成銘柄が半導体で、ここ100年はまさに半導体による成長の世紀だったからです。当然、当面それが続くとみるのであれば、SOXLを保有する手はあります。が、私は半導体産業の恩恵をもろに受けている電子情報系の技術者であるけれど、そんな自信はとても持てません。
上のグラフを見たら欲が出そうなので、次のグラフでその欲を削ぐようなグラフも提示しておきますので、必ず見てください。
最大の注意:単一の産業は成長→成熟→衰退する
これが一番重要なのですが…
石炭が石油に置き換わったように、半導体が成長産業からただの成熟産業・衰退産業とみなされるようになったら、まったく違う光景が見られます。
エネルギーセクタの指数であるXLEと、そのレバレッジETFであるERX(ブル型)、ERY(ベア型)のチャートを見てみましょう。
参照資産は長期で7.86%の上昇ですが、ERXが-83.5%, ERYは-91.3%です。レバレッジETFは予言者でもない限り、長期で持ったら怖いですね!一方で、短期では爆益が出てる期間がありますね。レバレッジETFは、本来、こういう短期の爆益狙いで買うものです。参考まで。
(チャートはTrading viewより)
以上が本編になります。以下、今回のお話とは関係のないおまけです。
おまけ:レバレッジETFの長期保有はなぜダメか?(破産への近道)
いたるところでレバレッジETFを長期保有すべきではないという注意喚起は見ますね。役所も証券会社も、ETFを出している会社も、軒並み注意喚起しています。
一つは本編で述べた通りのリスク。4つ目のグラフを見たら、長期で持つ気は失せると思います。
もう一つは、そもそも論として、経済成長が長期で見込まれるという前提が簡単な仮定のもとに成立するのは、セクタ分散が十分に見込まれる場合のみという問題です。
・セクタ分散されたETF(S&P 500のETFなど)は、経済全体での成長が見込まれる限り、暴落しても長期的には再上昇が期待されます。
・一方、セクタに偏ったセクタETFは、セクタが衰退した場合、先ほどのXLEのように、長期的な再上昇が見込めない場合があります。
したがって、「長期成長が予言できない限り、セクタの偏ったよくわからないレバレッジETFの長期保有は、宝くじに全財産をつぎ込むようなもの」です。
短期的には、笑いが止まらないぐらい上がることもあるでしょう。しかし、長期的には、本編の4枚のグラフからわかる通りです。再度、よく見ておいてください。
最後に、統計的に右肩上がりのリスク資産にレバレッジをかけるならどうでしょうか。素人考えでは、レバレッジを掛ければかけるほど大成功の確率が上がりそうですが、統計的には平均値が上がると同時に、破産確率も上がるという、素人には理解できないことが起きます。
…だから持つな、とは全然言いません、夢に賭けるのは自由です。しかし、レバレッジETFの長期保有は、長期的に破産確率を上げる賭けであることはせめて事実として認識しておくべきでしょう。
本日有休消化で今から妻とデートですが、その前に記事を書きました。お読みいただきありがとうございました。