見出し画像

情報リテラシー例示集

先日は、兵庫県の職員アンケートがひどいというタイトルの記事をあげ、相互フォローの方にいいねをいただいたのにすぐ一旦非公開にしてしまってすみませんでした。ぶっちゃけ、我が国の情報リテラシーの低さに絶望していました。今は、本記事の投稿にあわせて再公開しました。

…その何度目かは分からない絶望を踏まえて、やや諦めつつも、記事を読んでくれた人の中で1人でも情報の精査力が高まる人が出れば、それでいいか、という気持ちで、情報リテラシーの練習用題材集を作りました。(事前知識を必要としないものをできる限り集めました。)

なお、一部、特定の政治思想の方々には直視できないテーマが含まれるかもしれませんが、ご容赦ください。なお、直視できなければ見なければいいので、どうぞ去っていただいていいのですが、1つだけ言わせてください。
もし自分の思想に反する勢力を擁護する意見が、たとえ正論であっても直視できない、というのであれば、それは良くありません。ぜひ、思想の眼鏡を一度取っ払って、是々非々の立場を取れるように、大脳新皮質を鍛えてみてください

Ex. 1) 「河野太郎と小泉進次郎が当選してる 神奈川県民バ力なんじゃないの」に反論せよ。

Ans. 1) 有権者は、候補者の中から1名を選ぶ必要がある。したがって、ある資質に疑義のある候補が当選している場合に疑義を呈するにあたっては、対抗馬を見た上で適する候補がほかにいることを示す必要がある。
河野太郎の対抗馬は、「社民党候補、反ワクチン強硬派の医師、参政党候補」の3名。民主主義国家における常識的範囲で申し上げれば河野太郎以外に選択肢がない。また、小泉進次郎の対抗馬も「共産党候補、参政党候補」の2名。同様に、民主主義国家における常識的な投票行動としては小泉進次郎以外に選択肢がなかった。
よって、この2名の当選は必然である。

※社民党・共産党・反ワクチン・参政党支持者は、(少なくとも現時点において)日本における主流にはなりえない、という認識が共有できる水準であることを前提とする。


Ex. 2) 衆院選の投票率に関する話題。「輪島市58・92% 珠洲市62・04% 穴水町68・76% 能登町66・10% さて、あなたの街は???」というXの投稿に対して論理的に反論せよ。

小数点を「.」ではなく「・」で書く人は言論界から退場してほしいという個人的な憤怒はとりあえず脇におきます。

元ツイートは、これを「自身に豪雨被害で疲弊しきっている地域で権利行使された方々には頭が下がる」という文脈から、被災地域だから投票率が高いかのように誤認させようという意図が感じられることに留意する。

Ans. 2) 統計的には、一部例外を除き、高齢化率の低いエリアで投票率が低くなり、高齢化率の高いエリアでは投票率も高くなる傾向があるのは明らかである。上記で挙げられたエリアは、いずれも高齢化率の高いエリアであり、投票率が高くなったことは年齢と投票率の相関で説明される。したがって、元のツイートの意図にあるような地震・豪雨との因果関係は考えにくい。


Ex. 3) 2024年10月の衆院選での国民民主党の躍進と、超長期国債利回りの16年ぶりの高水準を関連付けた「『玉木ショック』が始まったと」いうXの投稿を否定せよ。

このツイートは10/31におこなわれたものであることに留意

Ans. 3) 超長期国債の利回りのチャートより即座に否定される。例として、下記は40年債利回りの年間チャート。2024年1月から上昇を続けており、玉木、つまり国民民主党の2024年10月の衆院選での躍進とは無関係であることが分かる。


Ex. 4) 「斎藤知事は公益通報を握りつぶした!問題だ!」「斎藤知事は正義を訴えた個人を権力で押さえつけた」といった意見に反論せよ。

※実例多数につきネット投稿の例示を省略する。まだ一度も読んでいないという方は、ぜひ一度この腐りきった(主観です)原文をご覧あれ。

Ans. 4) マスコミの報道や議会の過剰反応もあいまって「結果的に」兵庫県政を混乱に陥れた怪文書の配付者が「公益通報」を行ったのは4月。一方、県政を混乱に陥れた怪文書は、3/12に配付されており、この時点ではそもそもまったく公益通報の体を成しておらず、したがって「握りつぶす」というのが該当しない。
原文(下のリンク)をあたると、最後の段落には、「各自のご判断でご利用」とあり、公益通報として保護して欲しいと考えているとは一切読めない。地方行政において頻繁に配布される怪文書の典型例である。
また、この文書の全文に当たれば分かる通り、職員や、関係する民間企業の個人名を挙げて誹謗中傷をしたり、実名で個人の病状に触れているなど、即座に関係者を厳重に処分しなければむしろ問題になりかねない代物であることは自明、このような文書を捨て置けず即座に対応した斎藤知事の対応は至極真っ当であった、と結論付けざるを得ない。


Ex. 5) 「日本の年金は、ちゃんと将来の人口推移を見込んで設計されていて安全安心」に反論せよ。

Ans. 5) 国の制度設計は、国立社会保障・人口問題研究所の推計に基づいているが、これは毎回新しい推計が出るたびに実績を大きく外しており(詳しくは厚労省の過去資料での推計と、実際の出生数実績を追えば明らか)、たとえばこの研究所の推計では2023年より2024年の方が出生数は回復して75.5万人になるという荒唐無稽な推計を出しているが、実際には70万人を下回る見込みである。このように、根拠となる人口推計自体が毎回、政策がすべてうまく行く前提の出生中位に基づいており、なんなら出生低位推計すらも実績値は下回り続けていることから、国の将来設計通りには進まないことが確定している。
※ただし、うまく行かなければ労働者負担を増やすことで制度維持ができるように制度を改定することが考えられるため、これが直ちに年金制度が破綻することは意味しないことに注意。「年金制度は必ず破綻する」といった意見は暴論である

Ex. 6) 「火のない所に煙は立たぬ」という言説の反例を挙げよ。

Ans. 6) たとえば「朝日新聞珊瑚記事捏造事件」、「朝日新聞の新党日本に関する捏造事件」などが挙げられる。
(朝日新聞を例示するのは、購読者数が多い割に大きな捏造の宝庫だからであり、他のメディアに捏造が少ないというわけではない。)
これは個人の主観的感想であるが、兵庫県知事選の動きを見ていても、日本のマスコミのモットーは、「火のないところに煙を立たせて火を起こせ」かもしれない


Ex. 7)「兵庫県の職員アンケートで、直接パワハラを見聞きしたという回答が140件!また、回答者の半数がパワハラを噂で見聞きしていた。問題だ」という言説に反論せよ。

Ans. 7)
これは、もしかしたら難問かも。背景知識やリテラシーなく兵庫県のWebページでアンケートを読んだら、職員の主観的意見に流されて、洗脳されるかもしれない。私も、一瞬「斎藤知事、普通に無能パワハラ上司では」と思いかけました。リテラシーがなかったら危なかったです。
ので、全文を読む方は、ぜひ、この投稿と、以下のリンクを、前説だと思って読んだ後で、兵庫県のWebページへ行ってください。

まず、アンケートの妥当性を、統計的なかんてんから否定します。
・アンケート自体、リンクを知れば誰でも回答可能・複数回回答可能であった可能性が高く、そもそもの信頼性に欠ける。議員がOBによびかけたSNSの発信の記録、県庁職員に手配りで郵送用アンケートを配っていた写真も残っており、少なくとも重複回答が可能であったことは間違いない。したがって、140件という絶対数についての議論が無意味。
任意回答になっており、したがって無作為抽出になっておらず、無作為抽出でなければ、母集団を(つまり職員全体を)代表してないことになるので「回答者の半数」といった割合についての議論すら無意味
・「実際に見た・体験した」という回答の中に、ただの伝聞が含まれている。また、「自分はパワハラを受けませんでした」「陳述書に自分の名前があったが、自分はパワハラという認識はなかった」などが含まれている。ただアンケートをそのまままとめただけで、整理はされていない。
長くなるので詳しくは下記のリンク記事にまとめました。

※アンケートのすべてを否定する気はありません。ただ、データとしての信頼性はございませんし、こんなものを基にどれだけ裁判ごっこをやっても、まともな結論は得られません。


今のところ以上ですが、この記事は、気が向いたら随時追記します。

いいなと思ったら応援しよう!