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3つの主力支援体制で「幸せな子育て生活」を国を挙げて保障するデンマーク

日本はすでに子育て世代はマイノリティー(少数派)に
ほぼなりつつあります。
日本も・デンマークも「子どもは国の宝(資源)」と表現されますが、デンマークの出産・育児に対する切れ目のない支援体制が半端ないらしい?!

ということで、今回は未来がなんとなく見える「幸せな子育て生活」があるデンマークの安全・安心のあり方を垣間見てみたいと思います。

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支援体制①ホームドクター(家庭医)  
支援の切れ目がないデンマークの子育ての始まり


Sue:今日は、「産む」という切り口からまずは色々とお話ししたく。
まず、子育てするには、赤ちゃんという存在が欠かせませんよね。

Chiba:それでは、まず「出産」というところから話を始めましょうか。
社会福祉国家の保障として「ゆりかごから墓場まで」という言葉は
どこかで聞いたことがあると思います。
デンマークの場合は、「子どもが生まれるゆりかご以前から」始まります。


Chiba:すなわち、妊娠がわかったところから、国民一人に一人ついている、自分のホームドクター(家庭医・主治医)(※1)によって出産直前までフォローされます。ホームドクターは総合医(GP:General Practitioner)ともいわれて、ありとあらゆる診療科目を1人で担当するんですよ。
ここは日本と違うでしょうね。

出産直前になると、助産師が出産までいろいろと助言指導をしてくれます。当然出産時にも病院で付き添います。この辺りは日本と一緒かもしれません。

Sue:ホームドクターは産婦人科医、産科医、といった専門ではないんですね!一人の先生があれこれ見ていて何か見落としたりしないんですか?

Chiba:いやいや、産婦人科もありますし、産婦人科医もいます。当然出産時は病院の産婦人科で出産します。病院は全て公立(5つの州=5つの広域地方自治体)病院です。産婦人科に専門医がいますので見落としはまずないと思います。

Sue:日本の出産に関する医療レベルはめちゃくちゃ高いです。世界TOP1−3に入るデータも出てますよ。周産期と呼ばれる出産前に妊婦に対するフォローは多分世界一かと。少しの異変があったら、何時でも電話してきてくださいと言われたことがありました。
私の場合、出産したときは結構な難産でしたが、助産師さん始め、先生たちの判断力で母子の命を大切にしてくれて、無事に生まれてホッとしました。生まれた時は最初は保育器に入ったから心配でしたけれどね。

出産後はホテルへGo

Chiba:大変でしたね。ところで、Sueは出産後は、そのまま病院に入院していたのですか?

Sue:そうです。日本は大体3−7日程度、入院してから自宅に戻りますが、デンマークはその日のうちに帰るって聞きましたけれど。

Chiba:その日のうちに帰るってことはですねえ~、産婦人科病棟から同じ敷地内にある公設民営の患者ホテルへ移るというケースだと思いますよ。

Sue:ホテル、ですか?患者ホテル?

Chiba:デンマークは、基本的に出産後数時間で病棟から患者ホテルに移されアフターケアが施されます。患者ホテルには配偶者・家族なども宿泊できますがホテル代は産婦(母子)だけが無料で家族は有料となります。 

Sue:個室・・・とか?

Chiba:そうです。個室もツインもあります。患者は入院の代わりにホテルに滞在するわけですので入院費同様無料となります。

OHUオーデンセ大学病院のPatienthotellet患者ホテル
Denmarkは入院費が高い!のでホテルを併設。患者ホテル自体は民間経営。http://www.adhophta.eu/partner/odense-university-hospital-ouh

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支援体制②保健師   
保健師は1週間以内に訪れる


Chiba:さて!
退院後(患者ホテル滞在も含めて産後4~5日内に自宅に戻ります)1週間以内に市の保健師が自動的に家庭訪問して育児の助言指導を行います。この時点で保健師さんによって障がいの有無なども判断されることもあります。

Sue:この話はよく覚えてます。この最初の段階で、子ども一人ひとりを国が直接見守る体制が作られるんですよね。

Chiba:そうですね。子どもが生まれると保健師が一番頻繁に接触することになります。

Sue:私も保健師さんの家庭訪問がありましたよ。出産後1回だけでしたが。体重を計りにいらして、家庭内や育児で何か困ったことはないか、とか。

Chiba:デンマークの保健師は1回のみならず複数回家庭訪問してくれます。

Sue:へぇ。保健師さんが出産後に他にやってくれることってあるんですか?

China:デンマークの保健師は日本の保健師と守備範囲が異なり0歳から18歳までの児童・青少年のみ担当なのです。ですから当然出産後の家庭訪問から保育園・幼稚園、学校と必要に応じて子どもの成長をフォローしていきます。

Sue:日本の保健師さんも優秀ですが、活躍の場面がなかなか見えないのがもったいないですね。認知力があがったら、きっと日本の子育ても安心が増えるに違いない・・・。私は1回の訪問のときに、「小児科」が、どこがいいのかわからなかったので教えてもらいました。デンマークはホームドクターがいれば何かあったらすぐに相談に行けますね。

Chiba :ホームドクターがいなくても日本にはかかりつけ医はいませんか?

Sue:かかりつけ医を持つことは推奨されてますが、診療科目ごとに必要なわけです。小児科は小児科専門のかかりつけ医を探す感じですね。自分の足や口コミ、ネットで探すんです・・・。

Chiba:そうですか・・・デンマークでは例えば、A市に転入したときに、住民登録課の職員に「誰をえらえびますか?」とその市内に勤務するホームドクターを数名提示されます。その内から自分で選びますよ。
後に自分が選んだホームドクターとどうも相性が合わないというときは家庭を変えることも可能ですし、ホームドクターも自分に登録された住民を拒否することが出来ます。

家庭医

Sue:それ大事ですね。
この先生にお任せしたいという空気って大切にしたいところですから。

支援体制③ソーシャルワーカー   
大人から子どもまで国民一人に一人の担当制

Chiba:先ほど、保健師が出産後1週間以内に訪問する、という話をしましたが、その先の話を少ししておきましょう。
何か子どもに身体的な異常が発見され、入院を余儀なくされた場合、市のソーシャルワーカー(ケースワーカー)(※2)に連絡(病院にもMSW医療ソーシャルワーカーが勤務)が取られます。

今後の人生で、子どもが抱えるだろう問題の支援方法がケースとなって記録されるわけです。

例えば障がい児の医療以外の担当はソーシャルワーカー(ケースワーカー)となり子どもの成長に伴ってケースが継続支援されていきます。
デンマークには障がい者手帳がないのですが、その理由もこれでお分かりだと思います。

Sue:このソーシャルワーカーの存在は、生きていく上ではとても安心できるものだと思っています。日本でも、こういう制度があったら本当にいいのに、と思ってデンマーク留学後に、日本で企画を考えたことがあります。
実際にはマネタイズポイントがどうにも厳しく、断念しましたが、これまで話に出てきた、ホームドクターも、保健師も、ソーシャルワーカーもデンマークでは全て税金で賄われていて、その費用も無料で、全国民に保障されている。福祉と経済は常にセットだ、と改めて思いました。

パートナーの産休・育休は最初の1ヶ月で

Chiba:それでは続けて産休の説明をしましょう。産休、育休はその名の通り最初の1か月は母体の快復と新生児を新社会の空気に適応させるよう配慮した家庭生活が営まれます。
したがって最初の1月の間にパートナーも産・育休を取ることが多いですね。
ここにも保健師の存在感がありますよ。
保護者は保健師の助言指導に従って巣を温かくし生きる糧を与えるのです。
生後2~3か月になるとパートナーは職場復帰しますので日常の育児家事のリズムは母親だけに委ねられます。

Sue:おぉ、日本と一緒。日本の女性は引き続き、超頑張ってます。タフですよ・・・。精神的にも、身体的にも、きっと。

Chiba:デンマークは女性もほとんど男性同様に労働市場に出ておりますので共働き夫婦が多いのです。
そして、労働者の労働条件は手厚く守られていますから、勤めている人は週休二日制・年次休暇6週間が完全に定着していることと、残業がほとんどないデンマークの労働市場ですから、パートナーは朝8時出勤し、午後4時ころには家路についています。職場の帰りに同僚と飲みに行くという習慣はありません。

Sue:すると、結構な確率でパートナーは家事参加している、ということですかね?

Chiba:その通りです。デンマークでは産休、育休の制度が充実しています。出産前に1か月、出産後に3〜5月産休が取れますがこの間パートナー(夫婦、同姓、異性を問わず)も2週間の産休を同時にとれるのです。産休後、育休を続けて8か月は本人かパートナーのいずれかがとることが出来ます。
この間の給料は国か、企業から支払われます。

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Sue:私は経営者なので、育休も産休もほぼなかったですね・・・。
給料なんて補填してくれる組織も、制度もなかったですから。
産後2週間で仕事に復帰しました。夫は会社員なので「育休」を取ろうとしてくれていましたが、断念。
多分、いろいろな空気がそれを許さなかったですね。

Chiba:空気ねえ~!日本の空気は悪い空気ですね。
ここで日本の男性の皆さんへお知らせしたいことがあります。
男性が一日何分家事、育児等に時間を使ってるか。
2019年のOECDの国際比較です。
デンマークは1位で186分(約3時間)/日、
そして日本は31か国中31位で40分(1時間弱)/日です。
住みよい国創りは男性の協力が必要だということです。

その空気を日本に上昇気流させましょう!

Sue:日本でも男性の育休を義務化しようという動きが出て、ワークライフバランスの一つとして、大きな注目を浴びています。
「義務化」しないと、動けないのが現状なのかもしれないですね。
日本人は真面目で勤勉。これは、教育の賜物かもしれませんが、自分の幸せを感じるための時間の使い方は学校では学んでいないかもしれません。

私の周りの友達家族は、どのお父さんも本当に子育てに積極的。
当たり前に参加している人もいれば、自分のスタンスで参加している人も。

次回は共働き家庭にもう少しクローズアップしてみたいと思います。

<次回へ続く>

Breaking News 
乳児殺害疑い 35歳母親を逮捕 
NHK News(12月02日 06時30分)

Chiba:(嘆)あぁ・・・今、生後15日の赤ちゃんを殺害した母親のニュースが入ってきました!
日本は病んでますねぇ・・・。しかし、思うに赤ちゃんを殺した母親が悪いと一概に言えない気がします。殺人という行為自体は確かに悪いのですが、赤ちゃんを殺してしまうような女性を生み出した社会環境も問われるべきだと思います。
「貴女は10か月の間、生まれ来る貴女の分身を貴女の温かい体の中に宿り、期待と大きな喜びをもって出産されたのですよ!
その僅か15日後に日本の大事な財産、貴女の愛する赤ちゃんの口をふさいだ手は貴女の手ではない!
貴女はそんな人では絶対なかったはずです。貴女自身が生まれた時、人を殺そうなどと思ってもいなかったはずです。貴女の手を動かしたのは誰だ?
それは貴女が35年間生きてきた日本社会なのです!」

Sue:あえて、女性・男性、という話をしますね。
女性って命を生むために、命かけるんですよね。必然的に。
だから「生きる」ということにものすごく現実を感じるんだと思っています。生きていけるのか。生き抜けるのか。私は立ち向かえるのか。とか。

 今、目の前にある問題を解決する方法が、この女性がとった結末に到ってしまうまでの間に、もし、誰にも「助けて」と言えなかったとするならば、きっと本当に孤独な世界にいらしたんだろうなぁと。

Chiba:社会から取り残されるとそれが孤独を生むんです。日本には社会福祉という言葉さえ単なるお役所用語になっているのでは?
だからこそ、逆に村八分、差別、いじめが横行してるんですね。

Sue:日本の文化として、調和しなければ災難を生き抜けない、というDNAがあるはず、と思っています。日本は災害大国ですから。
だから、忖度も調和も、お互いに程度はあるにしても大切にしてきている。

ただ、日本人はかなり承認欲求が高いと言われています。
承認と評価は私は違うと思っていますが、評価=承認がわかりやすい構図になっているのがいまの日本社会でしょうね。
学歴社会もしかり。誰かの評価(高学歴の承認)があるから、認められたとなる。

いつのまにやら、自分の行動に「誰かの評価」が入った瞬間に、評価を自分で受け止めて、孤立する存在が生まれるようになっているしくみがあるのだと思います。自分の意思や行動は責任こそあれ、自由であるはずですが。

そして、この「評価する誰か」が人間的に成熟しているかどうかによって、そのコミュニテイでは、人は、村八分ではなく助けあう存在になり、差別ではなく違いを尊重しあえる存在になり、いじめは恥と思える存在になると思えるのだと思います。

長く生きた人、学歴が高い人、お金持ちの人・・・・その人を飾っているのは一つの見せ方であって、その人の「本質」は表していない。

ちなみに、この「誰か」になるのは、私じゃない、と思っている自分をまずは「他人の意見ではなく、自分の意見はどうなのか?」からきちんと自問自答することから始めることで、日本は元気になると思っています。


<日本で今すぐやるべきこと>

少子化を防ぐため、乳幼児教育費(保育園、幼稚園)を無料にする。
国はどこの家庭に子供が生まれても必ず保育、幼稚園の定員を充足することを国民に保障する。
特に保育園の場合、施設運営となると費用が掛かりすぎるので、子育ての終わった主婦(主夫)で家庭内に部屋の余裕のある方々に保育ママ(パパ)の研修を施し、彼らに保育を委託すれば経済的である。
なお、保育園、幼稚園の教員養成には生活指導に重きを置くペタゴー(生活指導教諭※)の養成が急務である。

※生活指導教諭は以前Fritidspædagogと呼ばれておりました。その意味は親が仕事から家に帰ってくるまでの間、子どもたちの自由時間の面倒を見る教師です。その後一時期Socialpædagog(社会生活指導教諭)とも呼ばれましたが現在は生活指導教諭PÆDAGOG(ペタゴウ)に統一されました。
生活指導教諭の教育は3年半で卒業後は①保育・幼稚園、②障がい者施設、③SFO学童保育に勤務します。最近では④高齢者施設でも生活指導教諭を採用し始めています。
Sue補足:「生活指導」というと校則を守らない学生に対する、怖ーい指導教諭みたいなイメージがあると思いますが(私の世代だと映画「僕らの七日日間戦争」のオン・ザ・マユゲ!ですね。古っ)、デンマークの生活指導教諭は文字通り、毎日の生活をより豊かに過ごすための導きと指南をプロフェッショナルな知識とマインドを持って人に向かい合う素晴らしい存在です。
どうぞ、誤解のなきように。


参考資料 :周産期医療体制の現状について(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000096037.pdf

※1 ホームドクター(家庭医) 
厚生省の認可を受けている開業医です。一人の開業医に約1500人の住民が登録されています。GP・総合医(General Practitioner)ですから産婦人科から高齢者・精神病までカバーしています。デンマークでは発病時に直接病院で治療を受けることはできません。全員必ず第1次医療の家庭医にまず行きます。家庭医で解決できない病気は第2次医療の専門医・総合病院で治療されます。したがって家庭医は市民の健康のゴールキーパーともいわれています。ちなみに家庭医のもとで全治する病気は全体の80%くらいまでと言われてますので、住民には安心感を与え、国にとっては医療の経済性を与えてくれます。

※2 ソーシャルワーカー(ケースワーカー)は各自治体の社会部に所属しています、住民1500人に対して一人の割合で勤務しています。住民は個人的・社会的問題が生じた時、自分担当のソーシャルワーカーに相談に行きます。10人に一人の割合で利用してます。
ソーシャルワーカーは問題即ちケースを担当するのでケースワーカーとも呼ばれます。住民はどんな問題でも自分担当のソーシャルワーカーに相談すればソーシャルワーカーが問題解決への糸口を見出してくれます。


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