ザ・バナナ工場-バナナの対価-
これは私が派遣社員としてバナナ工場で2週間働いた時の話です。
正直辛かった……。
もう2度とやりたくない。
あれは4年前ーーたしか、南にどんどん下った海の近くの土地にひっそりと建っている工場でした。
私は朝6時に起き、車を走らせ、現場へと向かいました。
現場に着くと、一人の白衣と衛生用の帽子を被った30代くらいの男性社員が立っていました。
「こんにちは!派遣会社〇〇から来ましたスペ(仮)です!本日はよろしくお願いします!」
「よろしく!では、早速こちらの紙に名前と出勤時間を書いてください!」
私は紙に記入した後、渡された衛生用の帽子をかぶり、工場の中へと向かった。
作業場は2階にあり、そこには他の派遣の方達も集まっていた。
パートのおばちゃんが7割、パートのおじさん1割、派遣1割という構成で、8時半から始まったラジオ体操が終わると、各作業場に配属された。
作業工程は、レーンから流れてくるキウイに丸いシールを貼り、専用の段ボールに詰めていく作業で、私はキウイが詰められた箱をパレットという台の上に重ねていく作業だったが……。
「ちょっと君いいかな?」
作業し始めて30分経った頃だった。声の主は先ほど挨拶した男性社員だった。
「はい、何でしょうか?」
「下の作業で来るはずだった派遣さんが急遽休みになってねーー、悪いんだけど下の作業をやってもらってもいい?」
社員さんは困った顔をして助けを求めていた。
「時給も上がるしーー」
「大丈夫ですよ!」
即答でOKした。別に断る理由なんてないだろう。
「マジで?じゃあ早速下に向かおうか!」
私と社員は下の階に向かって歩き始めた。
「どんな作業ですか?」
「バナナの荷降ろし」
「重いんですか?」
「15キロくらいかな」
「重そうですね」
「そうそう、時給は50円アップの1030円」
「なるほど……」
あれ?なんかキツくない?10時から始めたとしても、18時までで休憩1時間だから、7時間バナナの箱降ろし続けるってこと?いや、まさか、そんなハードなわけ……。
しかし、私の予想を大きく上回るハードな作業が待っていた。
下の階に着くと、どう見ても筋肉質な男達(職人)が、脚立を使って高さ2.5メートルくらいまで積まれたバナナの箱を降ろしているのが見えた。
たっっっっっっっっっっっっっか!!あんなところからバナナの箱を、嘘だろ?嘘だと言ってくれ!!
「じゃあ早速、そこの一人分空いてる場所があるから、そこの作業員さんに教えてもらってね!」
私は作業員さんに挨拶し、作業の流れを何となく教えてもらうと、すぐに始まった。
脚立に上って作業する人と下ろしたバナナの箱を検査機に入れて異常がないか確認する人がいて、もちろん私は前者だった。
脚立に上って、思いっきり手を伸ばして箱の持ち手である穴に手を入れ引っ張った。
「ぐっ……、きっつい。この体制はキツすぎ」
上から下まで全部終えると、他の作業員がパレットを走って取り除き、すぐさま次のバナナがやってきた。
なんだこの作業ペース。これナニ?ナニコレ?
作業員はすぐに一段ごとに束ねていたバナナの箱の紐を切り、荷降ろしを始めた。
「おい!早く脚立出して下ろして!」
私はすみませんと言い、すぐに作業を始めた。50円下げてキウイに戻りたい気がした。いや戻りたい。しかしバナナはやってくるのだ。
永遠と同じ作業だった。作業する度にバナナの箱が体に触れてベチャついたが、ランナーズハイならぬバナナーズハイがあったため気にならなかった。
12時になると45分休憩でお昼ご飯だ。私はあまりにも体力を使ったので、現場にくる前に買ったおにぎりとパンだけでは足らず、自販機の日清のカレーヌードルを食べた。
しかしながら、何故食堂で納豆を食べる人がいるんだ?その発酵した臭いと、体についたらしっかり洗うまで取れないネバネバの糸が本当に苦手です。そんなに納豆をかき混ぜないでください。よろしくお願いします(そんなことは私しか思っていないのだろうが……)。
昼食後は、体がリラックスしてダルくなり、これからバナナかーー辛いなーーと思った。
作業に戻ると、もうずっとバナナの荷降ろしだった。15時になるまでずっと。15時になったら、15分の休憩があった。
休憩後はなんと……、バナナの荷降ろしだった。バナナタワーからバナナ箱を下ろすのがこんなに辛いとは思わなかった。腕、肩、背中、腰がパンパンに張っていた。
18時まで作業を続けた後、クタクタになりながら家まで帰った。
この作業をずっと続ける作業員さん達は本当にタフですごいし、物流には絶対必要な作業だ。
よし!明日は絶対バナナやらねぇ!絶対的にキウイだ!キウイしか勝たん!
そして、翌日の現場に向かうと、何故かまたバナナ派遣さんが欠勤し、経験者の私が駆り出され、そこから2週間バナナと戯れることになったとさ。
終わり。
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