Newwspicks Newschool コンテンツプロデュース講座④ 食の「カリスマ」とANAのご縁
小泉&ブッシュ会談でサービスを担当した新川義弘氏へのインタビュー
NewspicksのNewschool 佐々木紀彦氏が講師のコンテンツプロデュース講座の最後の回は、「コンテンツアントレプレナー」をテーマにしたオンライン配信をするインタビューイベントの開催というものだった。受講者全員が5~6名のチームに分かれて、各チームがゲストを選び当日の進行を行う。
私たちのチームは、Zoomで何度か打ち合わせする中で、「食」をテーマにしてはどうかという流れになってきた。
そこでふと、思いついた人がいた。株式会社HUGE(ヒュージ)代表取締役兼CEOの新川義弘さんだ。新川さんは、2002年の、歴史的な小泉&ブッシュ会談で、サービスを担当されて、現在は銀座のダズルを始め新川ブランドのレストランを次々とオープンさせている、言わば「食のカリスマ」的な存在だ。
新川氏の奥様はANAの先輩
実はこの新川さんの奥様が私のANAの先輩で、現役時代お二人は皆の憧れの存在だった。新川さんの奥様は、美しいのに気さくな方で、先輩後輩の垣根を越えて皆から慕われていた。その方の心を捉えた方が新川さんだ。
お二人が出会った当時、新川さんは三宿にあるZESTの店長さんだったと聞いた。その頃の三宿のZESTは、素敵な自分をお披露目に行くような場所で、皆が自身に満ち溢れているそんな空気感があった。(少なくとも私はそう感じた。)
私は、地方出身者で垢抜けないまま、ラッキーにもANAに合格することができ、そしてこれまた、たまたま会社で行なったマークシートの英語の成績が良かったということで、2年目で国内線から国際線に移行することになった。(昔は国内線と国際線のCAの所属が分かれていた。)
何が何だか分からないうちに華やかな世界に身を置いている状態だったので、このキラキラした世界に頑張ってついていかなければ!という余裕のない中で、どこか自分に偽物感を感じていたのが正直なところだ。(当時は私のような人が多かった気もする。)
ところが、新川さんと新川さんの奥様のキラキラは本物で、お二人にはスポットライトが用意されているのかと思えるほど輝いていた。そして新川さんが代官山に新たに出店したタブローズの店長になられた際には、CA達が連日詰めかけているという眩い世界だった。
年を隔てて、新川さんは今や「食」のカリスマとも言っても過言ではない多くのレストランを経営し、大成功を収めている。
新川氏のレストランは宝石箱
新川さんのレストランは、例えばダスルに至っては内装が宝石箱のようで、食事をしているとまるで映画のワンシーンに自分が出演しているように感じさせてくれる。空間が自分を魅力的に演出してくれるのだ。そうなるとラグジュアリーな気分になってきて、いつしか自分の振る舞いもそんな風に変わってくる、そんなレストランだ。
まさに「食」のコンテンツアントレプレナーとして、今回の企画にピッタリの人だと思った。メンバーも新川さんに是非お願いしたいということになって、私がアポドリと交渉をすることになる。しかし、当時はただ新川さんと奥様を勝手に遠くから見て憧れていただけの私だ。当然私のことはしらないであろう。
そこで先ずはお知り合いだという方に連絡先を教えてもらい、いきなりメッセンジャーで連絡し、更には新川さんの奥様と繋がっているANAの先輩や、同期に連絡にも後押しをお願いするという周囲を囲む作戦に出た。おそらく誰だ?と思われたと思うのだが、面会のご快諾をいただくことができた。
新川流 人との接し方
初めて原宿の事務所に伺った際、「美佳さん!」といきなり親しげに呼んでくださったのが印象的だ。初対面で緊張している私に、何でも話していいんだよ!という雰囲気を作ってくれたのだと思う。実は秘書の方もお見送りの際に「美佳さん」と呼んでくださり、社内全体に新川マインドが浸透しているのだと感じた。
新川さんの著書「愛されるサービス」にも、小泉&ブッシュ会談でのエピソードとして、ファーストネームで呼び合うことを提案したことで、一気に距離が縮まり信頼感が増したと書いてあった。
ふと、Newschoolの佐々木さんを「紀彦さん」と呼んだら距離が縮まるのか?と考えたてみたが、何かおかしい。年上の女性から年下の男性をファーストネームで呼ぶと、どこかお母さん感が出てしまう。。。とは言え、いつかどこかのタイミングで初対面の方をファーストネームで呼んでみたいと感じた。その後の距離感がきっと変わるに違いない。
さて挨拶の後、やはり新川さんも新川さんの奥様も私のことはご存知ではないとおっしゃったのだが、「ANA出身の徳永さんですから、このお話はお受けしますよ!」と言っていただいた。
在籍時は一度もお話していなくても、同じ会社にいたと言うだけでご縁がつながるということは、本当に有難いことだ。これはANAという会社であったことも大きい。初めて会ったクルー間でも本当に信頼し合ってフライトが出来た。ANAというだけで相手を信頼できると思わせる、そんな会社で働けたことに感謝する。
新川節に皆引き付けられる
さてイベント当日、新川さんのインタビューは大成功だった。新川さんが登壇してから会場が一気に活気付いたと言っても過言ではない。コロナ禍で皆が元気がなくなっている中、最高益をたたき出した店舗もあったそうだ。このリーダーの下なら何があっても大丈夫だと思わせるオーラが、熱量のある話力から溢れ出していた。
そして何よりも、若い世代の対応が素晴らしかった。ナビゲーターの男性は20代。挨拶の後のやり取りでやや緊張の面持ちの彼に、新川さんはこんな言葉をかけた。
「君はやんちゃだろ? 僕もやんちゃだったから良くわかるよ!」
この一言で空気が一変した。一気に打ち解けた雰囲気になったのだ。年も半分ほどで、人生経験も同じく半分であろう彼に、僕と一緒だよと言ってあげることで、ずいぶんと気持ちを楽にしてあげたのだと思う。
素直に素敵だと感じた。最近、粋だとかダンディとかそんな言葉が似合う人に出会うことが少なくなったと思っていたが、ここにまだそんな人がいたではないかと感じさせる出来事だった。
奥様もやはり新川流だった
そしてイベント当日は奥様の誕生日だった。会場に奥様、お嬢様が来てくださり、改めてご挨拶をした。「私のことは、覚えていらっしゃらないですよね」と聞くと、「そうなの、でも○○ちゃんや○○ちゃん、○○先輩にも聞いてるよ」と言って両手でしっかり私の手を包み込んでくれた。ちゃんとフォローしてくれていたANAの同期たちと先輩に感謝だ。
相変わらず美しいと見とれている間に、憧れの方に手を握られていて、もはやすっかり虜になっている自分がいた。奥様はのこの距離の縮め方といい、このご夫婦は無意識レベルで素敵な関係を創り上げてくれる。人たらしのプロだ。
誕生日のお花をお渡しすると、奥様はカバンの中を整理し始めた。すると、大きなカバンの中に栄養ドリンクが30本程入っているのが見えた。
「この後、店舗を回って頑張ってくれてるスタッフに渡すのよ」と、まるでスタッフを見るかのような優しい笑顔を私に向けて話してくれた。自分の誕生日なのに、スタッフにプレゼントとは。何なんだろう、この人たちは。やはり輝き続けている人は違う。
50代、頑張ろう!
今回のNewschoolの講座は、決して安くない受講料だし、最年長だろうし、と様々悩んだ末の受講だったが、終了時には大きなものを得た。会いたかった人たちに会えたということだ。これはおそらく私個人では、叶わなかったことだ。Newspicksという肩書があって実現したことがほとんどだ。
この肩書は受講後は外れてしまう。でも、この経験は残る。経験こそ財産だ。この受講記録を残したのは、そんな想いもある。
そしてこの記事を読んでいただいた、特に私と同じ世代の方々と一緒に今後の人生を励まし合っていければ嬉しい。50代、まだまだ頑張ろう!!
*50代でも司会をしました~。