家族性(遺伝性)胃ポリポーシス[GAPPS ギャップス]とは?
先日の記事で、GAPPSについて少し書きました。
この病気について調べたいと思い、家族性(遺伝性)胃ポリポーシス[GAPPS ギャップス]という病気を、単語をいろいろ変えながら検索してみました。でも実は、あまり記事が出てきません。出てくる記事は、わたしなどが読んでもちんぷんかんぷんな専門家向けのものばかりです。
というのも、家族性(遺伝性)のポリポーシス(=ポリープが密生する状態)で、大腸にできるものでなく限定的に胃にのみ発生する状態のこの病気は、確認されたのが、ここ数年の出来事だからだそうです。幸いなことに、わたしはこのポリポーシスとGAPPSを最前線で研究しているグループに所属されている先生のところへ紹介されましたので、こうしてすぐにこれが何なのかわかったわけです。
「家族性(遺伝性)」との判断
まず、家族性大腸ポリポーシス(FAP)において、原因遺伝子が判明しています。APC遺伝子と言うそうですが、そこに生まれつき異常があるひとが家族性大腸ポリポーシス(FAP)になりやすいということがわかっていた。その優性遺伝の確率が50%だった。つまり、父親か母親がこの遺伝子を持っていると、50%の確率でその子どもに遺伝する。となると、大腸カメラで大腸にポリープが密生している(または100個ちかく発生している)のが発見されたとき、両親のどちらかの大腸が同じ状態であれば、ほぼ「遺伝している*」と言えるのですね。そうなった場合は、その子世代にも50%の確率で遺伝するということになります。
*遺伝でなく後天的にポリポーシスが発症する場合もある。
遺伝子検査をしAPC遺伝子に異常があれば、この「遺伝(=家族性)」が確定されるわけですが、先生によれば、親族に聞き取りをして、なおかつ内視鏡でポリープの状態を見れば、遺伝子検査の結果を待つまでもなく「(これはほぼ間違いなく)遺伝しているね」と言えるそうです。
さて、大腸でなく、限定的に胃にポリポーシスができることが数年前に発見されました。こちらもおなじくAPC遺伝子の異常によるものだそうです。わたしの親族の誰がはじめに発覚したのかは、別の記事でお話したいと思いますが、遺伝子検査の結果を待つまでもなく、母親の姉妹に100%の確率で病気があり、その子世代―わたしたち従姉弟妹たちの40%に、この胃ポリポーシスがあったのです。
ポリポーシスは放っておけない
大腸ポリポーシスも胃ポリポーシスも、100個程度、または100個以上の密生するポリープがその消化管を覆います。30代までにポリポーシスが発生していなければ、その病気である可能性は低いと言われましたが、ポリポーシスが発生している場合、その密生したポリポーシスが消滅することはなさそうです。最初の先生から、紹介された手術を受ける病院の主治医、そして執刀医にまでおなじ質問をしましたが、苦い顔をして「(ポリポーシスが消えたのを)見たことがない」と言われました。そしてポリポーシスを放置した場合、60歳までに、ほぼ100%の確率でポン化する、ということです。
患者数は、家族性大腸ポリポーシス(FAP)でも日本全国で約7,600人、家族性胃ポリポーシス(GAPPS)は今のところ日本全国でたったの四家系しか報告されていません。(2019年9月現在)
そんな少ない統計で、100%ポン化すると言えるのか?ポン化をとめたり、ポリポーシスを消すことはできないのか?など、素朴な疑問がしばらくの間ぐるぐると頭をめぐりました。けれども、3人の先生方に苦い顔をして「(ポリポーシスが消えたのを)見たことがない」と言われたことや、現在の西洋医学では薬などでポン化しないようにすることは難しいということ、“標準治療”としてはポン化して進行する前に切除することだと言われたことで、心を決めるに至りました。
心の紆余曲折があった3ヵ月間でしたが、本当はいちばん最初に心のなかに根付いていた根拠がありました。それは、胃を全摘してから25年、当時の体重まで戻った母が元気にいまも健在だということ。わたしたちの家系には、突然降ってかかった災難のようなこの出来事に対する「こたえ」が、すでに用意されていたんですね。そう、わたしの母は25年も前にわたしたちと同じ病気で胃を全摘していた。当時の病院の先生方には、これが何なのか、わからなかった。母にもわからなかったから、わけもわからず取らされたと感じていたに違いない。けれども、母にとっても、そのことに対する「こたえ」が、こうやって25年越しに提示されたのです。
参考
今回の記事では、診察を受ける中で3人の先生方から聞いたお話や、いただいた資料、下記のウェブサイトなどを参考にしました。