第2話 意外とミーハー
私が好きなロックバンドは、二年前に君がバンドサークルの発表曲に選んでいたもの。私が一番好きな曲は、君が「今度これを歌うんだ」と、少しお節介気味にURLを送りつけてきたもの。
音楽が特にそうなんだけれど、私の主成分はどうしようもなく君でできている。別にそうしたかったわけじゃない。君のことを全肯定するつもりもなかった。
君の悪いところは知っている。意外と怒りっぽくて、気分屋で、高校の十分休みにいきなり腹パンしてきたことを、私は未だ根に持っている。いや、あれ本当になんだったんだ。
私はどうしようもなく君で構成されている。自分でも正直気持ち悪いくらいに、君が知ればきっと引いてしまうだろうほどに。私は私の中で、君との境界線を持たない。
ひとつ安心なのは、君がこれを知ることは、恐らくもう無いことだ。私は君に、もう一年会っていないのだから。再会することも無いだろう。
今日も私は、君の好きだった曲を聞く。今の君が、一体何を口ずさんでいるのかは知らない。