短編ミステリー「教会にて」
それから、不思議な人を見た。夕暮れ、教会のステンドグラスに差す斜陽、眩しい。だがその人は、強烈なまでの夕陽を避けて、影のある席に腰を据えている。教会全体を見渡せるような、最後部の長椅子の、更に一番端の席。そこだけは、太陽の悪あがきから逃れることが出来る。そしてその人は、いつもそこに座っている。
私はその人を何度も見かけている。だから、見たと言うのは今となっては間違えた物言いだ。私は何度もその人を見かけ、そして見かける度に「不思議な人だ」と飽きもせず、つくづく思うものだった