第9話 間違ってはいる


 たった一人を光明に例えるのは間違っている。いわんや神様だと思うのはどう考えても間違っている。
 そう確信している横で堂々と、君を神様だと思う私は頭がおかしいのかも知れない。
 ただ、君の頭がべらぼうに良いのも良くないと思う。知り合った後に知ったことなんだけれど、君は偏差値が七十を超えていて、県内の模試ランキングで一桁を取ったこともあるらしい。え、なにそればけもの? そんな人、うちの高校にいたわけ?
 それでいて、君には気取ったところがない。なんというか、頭が良さそうに見えない。むしろふわふわしていて、掴みどころがなくて、変な奴だという印象が強い。
 そういう矛盾が、君を神様然とさせている。全知全能というより、八百万の神様という感じだ。私は、君の一番の信奉者であるという自負を密かに持っている。
 そして信仰心に、場所の制約は無い。私はいつどこでだって、君を神様みたいに想っている。
 君の中から私が消えても。私が君から姿を消しても。

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