第6話 私の分も食べたしね

 高校卒業後の打ち上げは焼き肉だった。男子基準で選ばれたコースは量が多すぎて女子に不評だったけれど、私たちの卓は綺麗に片付いた。「いっぱい食べる君が好き」ってコマーシャルが昔あったと思う。君のためにあるような言葉だ。
 女子の顰蹙なんて知ってか知らずか、男子はこの後、スケートに行こうと言い出した。私は馬鹿だろと内心で思ったんだけれど、何故だか女子のみんなにも好評で話し合いを始めた。私は唖然としてしまう。嘘だろ。マジで行くのか。
 ふと、君が私の手を引いて勝手に歩き出した。最初はふざけているんだと思った。しかし、その足がどんどん集団から離れていくことに気が付いて、私は驚く。気づけば同級生は遥か後方で点になっている。君の足は止まらない。みんな居なくなった。いや、私たちが居なくなった。誰にも内緒で抜け出して来てしまった。
 どうするつもりなのか、私はようやく尋ねる。
 君は一言、「スケートとか嘘じゃん」と答えた。

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