【超短編小説】私を食べたこともないくせに


 君からラインが来た。
 どうやら私の母が、誕生日プレゼントで白米を贈ったらしい。君の感想はずばり「キミの味がする」だった。意味が分からない。
 続けて君が「もしかして実家、コメ農家?」とか「炊き立てご飯の匂いがキミなんだけど」とか矢継ぎ早に送ってきた。
 私の実家は残念だがコメ農家ではないし、私は実を言うと、コメがそんなに好きじゃない。一人暮らしをしていると、面倒な家事はしなくなるので、最後に炊飯器を使ったのがいつかも思い出せない。食べたかったら、レンチンの奴とかでいいわけだし。そっちの方が美味しいし。
 だから私は、自分の匂いが――少なくとも君にとっての私が「ご飯の匂い」だったことに衝撃を受ける。いや、私の母が贈った米が、私の匂いなのか。いやどっちだって意味不明だよ。
 それにしても「私の味」って一体なんだよ。食ったことないだろ。鬼じゃあるまいし。
 私は考える。想像で相手の味が分かるのは、愛情って言っていいんじゃないだろうか?

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