第8話 予想はしてたから
他人の匂いが苦手だ。人混みなんか大嫌いで、夜祭なんか頭を過りもしないくらい他人事だった。
だが君が行こうと言ったので、私は何のなしに二つ返事をしてしまう。その日の夜に、君が計画書なんて大それたメッセージを送ってきた時には、私の意識はてんてこ舞いになった。君が誘ってきていたのは、全国的にも有名な大きなお祭りだった。山車が練り歩いて、巨大な太鼓が響き渡って、笛の音が鼓膜を揺らす。
普段は過疎を実感するほど空いている電車は当然満員になるだろう。住んでいる田舎から街の中央までは電車で一時間かかるから、その間ぎゅうぎゅうに詰め込まれて立ちっぱなしだろう。そもそも祭りだって、座る場所も何もかもが予約制で、行ってから帰るまで歩きっぱなしの立ちっぱなしになる。屋台は全部並ぶだろう。いちごあめ一つ買うにしても十分以上はかかるに違いない。
私の頭にはこれらのことがずらっと一列に並んだ。どれもこれも無表情に、私を睨みつけて来る。
結果として君と私は、地獄かよ、なんて言いながら帰宅した。
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