『今、甦る死』を改めて視聴してのとりとめのない感想
先日の記事で書いた通り、中高生の頃に一度だけリアルタイムで観たことしかなかった『今、甦る死』をとうとうTVerで再び観ることが叶いました!万歳!
※ちなみに先日の記事とは以下のものです。よろしければご覧ください。
というわけで、わたくし「今、甦る死」を観た中高生の頃はミステリといえばシャーロック・ホームズくらいしか触れていませんでした。「名探偵コナン」はアニメをある程度観ていましたがその程度。江戸川乱歩の「怪人二十面相」シリーズは読破した記憶がありますが、あれはミステリでは無いです……よね……?(シリーズ中で二十面相が一時期調子に乗って四十面相と名乗って途中でやっぱり二十面相に戻すのがなんか好き。)金田一耕助と言われても「金田一少年の事件簿」の「じっちゃん」が彼らしいということしか知識のない子どもでした。(『病院坂〜』を読む限り、個人的には金田一耕助がその後伴侶を得たのかというところから疑問なんですが、それは野暮というものでしょうか。)一昨年の夏から急に「金田一耕助ファイル」ほか数編を読み、多少知識がつきました。そして改めて、満を持して「古畑任三郎『今、甦る死』」を視聴いたしましての感想です。
金田一耕助祭りやないかい!
そりゃそうか、石坂浩二が出演するんだもの。実質金田一耕助だもの。(石坂金田一版「犬神家の一族」は辛うじて観ています。めちゃくちゃキュートですね彼!!)
鬼首(オニコベ兼オニクビ)村に名前の似ている鬼切村はあるし「雪の中の密室殺人」といえば『本陣殺人事件』、鎧が絡むといえば何となく『八つ墓村』(屍蝋と化した要蔵は鎧武者でしたよね)、珠代さんは『犬神家の一族』だし(珠世さんですが)、いなくなった幾三さんは『悪魔の手毬唄』だし、ていうか「童謡見立て殺人」もおばあちゃんにそれを歌わせてるのも『悪魔の手毬唄』だし、よく見たら同じ部屋に『悪魔の手毬唄』の表紙等によくいる日本人形ちゃんもいたし、今泉くんがやたらめったら「祟りだ〜!!」って騒ぐのも多分(映画)の『八つ墓村』だし、日本家屋でお葬式何回もするし、青年団の協力による山狩りはしてないけど、音弥くんが亡くなったのは山だし。なんとなく『獄門島』や『犬神家の一族』の気配をこの辺から感じます。(あと、他の方が指摘されてましたけどレジャーランド建設によるトラブルは『悪霊島』だそうですね。)
息切れしそうですけどあと少し!犯人コンビ(?)の「音弥」とか「天馬」という名前も横溝正史が好んで使いそうな珍しくておしゃれな名前だし(『三つ首塔』の音禰さんとちょっと似てる??)、パン工場で雇用を創出して村の経済を一手に支えている一族っていうのも何となく横溝正史!!って感じ。濃縮還元!!ゼェハァ……(満足げ)
いやぁ、古畑任三郎が横溝正史世界に迷い込んだら……って感じでしたね。異世界転生ものなの……???(違います)
何度か都会に戻って仕切り直して村に帰ってくるのがおしゃれというかなんというか。都会的な雰囲気の田村正和さんの雰囲気に合ってる気がしました。「古畑任三郎」はどちらかといえばモダンな世界観ですから、鬼切村は実質「異界」でしたね。(第三シリーズの「古畑、風邪を引く」が準備運動のようなものでしょうか。あっちも金田一モチーフてんこ盛りでしたね。「裏で大きな力が働いている」というのも「今、甦る死」と鏡合わせのような作品だったと思います。長くなるのでこれは割愛。)
登場した途端に何回も都会に帰りたがってわーわー言う古畑さんが、部屋の状況から西園寺くんに確認を始めた場面を観て「あ、やっと電源(?)入った」と笑っちゃいました。それにしても古畑任三郎すら駒として操ったわけで天馬先生は怖いですね!!音弥くんは何も知らずにすんで、かえって良かったんじゃないかな。珠代さんがひたすら気の毒です。兄も甥っ子二人も(夫はおそらく事故でしょうけれど……ですよね、天馬先生?)信用していた人に殺されていて、その上で斜陽となっている工場や山の権利関係の処理とか……。想像しただけで泡吹いて倒れそうです。
さて、該当するミステリ作品をぱっと挙げられないんですけども、ミステリ作品の後半で探偵に向かって怒る人はだいたい犯人な気がします。(天馬先生のような黒幕タイプでなくても)何か、いくつか作品で読んだ気がするんですけど……何だったんだろ……。
犯人死亡にショックを受けて、めちゃくちゃ甘そうなハニートースト食べたがってる弱々しい古畑任三郎は新鮮でした。(「すべて閣下の仕業」は視聴できていません。観たいなぁ。)今泉くんが彼なりの労りの心でもって言う「作ってもらいましょう、パンならいっぱいあるし。」という返しは彼らしさが詰まってて好きです。あんぽんたんというか天衣無縫というか愛嬌というか。そして肩に手を置いて叱られる。
あと、まったく関係ないですが、堀部パンのポスター個人的に好きです。パンを顔みたいに並べて\おいしいよ!/って喋らせてるポスター。素朴で好き。今のTwitterならややバズるのでは?でもきっと山を売る前にSNS戦略も試したんだろうなぁ……。(とはいえ私も採算を考えてもレジャーランド建設は反対です天馬先生。あーでも、メガソーラーよりはマシかな……。)
石坂浩二さんが出演されたことで、金田一耕助対古畑任三郎の様相を呈したこの作品。ついでなので色々と比べてみました。(石坂浩二さんと田村正和さんの比較でなく、金田一耕助と古畑任三郎を比較していきます。書いている私も混乱しそうですが、そこに気をつけて書いてみたいです。)
探偵としてのあり方は金田一耕助と古畑任三郎とでは真逆な気はします。
そもそも外見からそうですね。かたやピシッとした洒落たコート、スーツ、サスペンダーにシャツ。かたやよれよれの袴、くちゃくちゃのお釜帽、ぼさぼさの髪。
モダンでシックなのが古畑任三郎。
土俗的で野暮ったいのが金田一耕助。
(とは言っても金田一耕助も都会のいや~な事件は複数取り扱ってますけどね……。)
あと人柄で言えば、子どもの相手が下手そうなのは古畑任三郎。今泉くんに押しつけてそう。古畑任三郎そのものが子どもっぽい性格ですしね。金田一先生ならお馬さんごっこの馬役ぐらい平気でやってそうな人懐っこさがありますね。「あっはっは。たいしたこたぁありませんよ。」とか言ってそう。子どもっぽさは彼にもありますが、なんというか。子どもと同じ視線になってくれそうね。
古畑任三郎は黒装束なのもあって悪魔的な雰囲気を持っています。時おり見せる犯人の失点に気づいてニヤリとする顔はめちゃくちゃ悪い顔してますよね。プライドが高く、諦めが悪く粘着質なのが「探偵」としては美点だけれども、「お客さん」となるともう、流行りのカスハラをばら撒いてますもんね。酢豚弁当とか電車での携帯でひたすら抗議するとか。観てて店員さんや駅員さんたちに申し訳なくなりましたもん。でもそこが人間くさいともいう。
金田一耕助は地縁血縁諸々でこんがらがった人々を解きほぐし、解決へと導く天使のような役割もあるように見えます。(これ、何かで読んだ指摘の受け売りな気がします)無邪気さ、人懐っこさ。「お客さん」としても(ヨレヨレの袴だとか髪ボサボサとかいう衛生面は置いといて)かなり感じの良い人じゃないかな。天然のせいで失言はしますけど。(カレー食べてるときに言っちゃいけない話題を出して顰蹙買ったり)
どっちに捕まりたいか、と言われるとどちらの探偵さんにも魅力がありますから甲乙つけがたいのですが……うーん、犯人死亡率を考えると古畑任三郎かなぁ……。金田一先生の手にかかると自決しちゃいそうです……でも金田一先生は犯人の気持ちを汲んである程度好きにさせてくれるからなぁ……。古畑任三郎だとそうはいかないもんなぁ……。目をつけられたら最後、ずっと付け回されて嫌がらせされるもんなぁ……。部下というかワトソン役なら金田一先生ですね!今泉くんじゃないと古畑任三郎の相手はできませんよ!!金田一耕助は基本的に誰とでも仲良く仕事できますからね。密にさえなるのを防げば大丈夫!!
それにしても、あんなに爽やかでキュートだった青年石坂浩二がこんなにも貫禄のある凶悪頭脳犯を演じていて、共演された横溝正史先生はさぞや天国でびっくりされているだろうなぁと思ったりしました。石坂金田一も観たいです……!石坂浩二出演作は『犬神家の一族』を除けば『細雪』しか観ていないので、他にもたくさん観たいなぁ。『細雪』のときの石坂さんは終始苦労人で、観ていて気の毒なくらいでした。映画の『細雪』を観てない人に説明するなら「個性と意志の強い四人の美人姉妹の間で、石坂浩二が振り回されて右往左往する映画」と言ってしまいそう。(あれ?谷崎潤一郎作品としてはこれはこれで正解……??)
天馬先生にもチャーミングさはありましたね。割烹着とか、「でも、犯人は捕まる」と古畑任三郎に言われたときの\てへ/って感じの笑顔!!何だあれは!!
中高生の頃、藤原竜也さん目当てで観ていた「今、甦る死」ですが、今回は石坂浩二さんに夢中になってしまいました。藤原竜也さん、金田一耕助演じたりしないかなぁ……。いや、どっちかっていうと犯人側かなぁ……。
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