「肛門記(作:朝井リョウ)」がやや他人事でなくなった話〜序章〜

 ある日、用を済ませて立ち上がり振り返るとそこには真っ赤な池があった……。

 生理にしては血が鮮血すぎるし多すぎる、ていうか生理終わったのは、つい先週じゃ!あと近頃の私の生理はPMSを伴っているはずだが、今メンタルそれなりに元気やぞなんやこれ!?誰や!?と頭の中で喧々諤々と会議が行われた結果、全会一致で「ひょっとして痔じゃね?」となった。
 痛みは一切ない。ただ、鮮やかな赤がそこにはあった。症状をネット検索するなとはよく言われますが、そんな事言われたって調べちゃうよ!そのための板だもの!!いくつかの肛門科クリニックさんのHPを覗いた感じ、おそらく痔で、なかでも内痔核といわれるもののよう。とはいっても私は素人!小学生の頃自分の症状と耳鼻科にあったポスター読み比べて中耳炎を当てたことはあるけど私はド素人!お医者さんに診てもらわないと確定はできない!
 というわけで、念の為近所の消化器内科にサッと触診(腹部)含めて診てもらった結果、確定はできないけどおそらく痔だろうとのこと。現時点では他の病気(大腸がんとか)も否定はできないけど、心配だったら大腸内視鏡検査する?痔だとは思うけど……って感じで先生の話し方からも緊急性は感じなかったんです。だからとりあえず痛みもないしこのままフェードアウトしてくれたらいいなぁ……と一縷の期待をかけて数ヶ月暮らしました。
 ダメでした。月に少なくとも1回、赤く染まった湖面が現れました。痛みは一切ないんです。血だって生理で見慣れてるから、「あらこんにちは。また来たのあんた」って感じだから実害だってない。じゃあもうこのまま月に1、2回やってくる困ったアイツってことにすればいいかと思ってました。(どうせ生理という困ったアイツもいるんだし、実害がない分こっちのほうがマシ。今更ひとり増えたところで変わらん変わらん!)
 しかし、毎月毎月病院に行けというのに「また血が出た〜」と呑気な顔で報告してくる妻に堪忍袋の緒が切れかかった家人がとてつもないことを叩きつけてきました。「肛門から血が出てるってことは、アンタは傷口に大腸菌塗りつけてるのと一緒だよ!!いいの!?」「イヤァァァ!!」「早めに受診したら内服薬で済むこともあるみたいだから!早く行きなさい!!!」「ヒェェ……」
 ということで、諦めて肛門科を探し、受診しました。いろんな体験記を読んだ感じ、診察には仰向け体操座りパターンと横向き体操座りパターンがあるようで。なお私がお世話になっている病院では横向きでした。婦人科で慣れたので下半身の診察そのものにはそれほど抵抗感は無いものの、先生と同じ空間で下着を脱ぐのは初めてでした。タオルを駆使して羞恥心をカバーしてくださる看護師さん。ありがたい……。(男性の方に説明しますと、婦人科では先生から説明を受ける部屋と別に内診用の椅子?のある部屋がありまして、その控え室みたいなところでひとりで下着を脱いでから椅子に座るんです。で、椅子がウィーンと動いて診察できる状態になってから先生が診に来てくれます。ちなみにちょうどお腹のあたりにカーテンが設置されているので顔を合わせる気まずさも軽減されています。ちなみにお尻で同じことすると多分患者が椅子から落っこちますね。よくて逆さ吊り状態かな。)
 診察されながら「内服薬で済め……内服薬で済め……」と組分け帽子を被った気分でうかがった先生のお話は「にゅういーーーん!」(どうぞグリフィンドールと同じテンションでお読みください。あっ、診断は内痔核でした。)
 治療としては、注射による硬化療法としっかり手術する方法とあって、病院によっては硬化療法は日帰りでやるところもあるそう。ただこちらの病院ではしっかり麻酔して確実に治療するために硬化療法でも一泊入院するんだそうで。(ちなみに手術だとおよそ1週間弱の入院。)で、下血しているわけだから他の病気が無いかをまず確認する必要があるわけで、流れるように大腸内視鏡検査の予約の話に。(おっ!??消化器内科の先生!結局検査必要なんじゃないすか!じゃあ早めに検査勧めてよぉ!!??※彼も勧めてなかった訳ではない)この時はまだ現実感が伴ってなく、検査かぁ〜大変だなぁくらいな気分でした。
 軟膏を塗布してもらったお尻にガーゼを貼られ、少し気恥ずかしい思いで待合室に戻り、検査の説明にくる看護師さんを待ちました。……なんですかその片手に握られたペットボトルは。ちゃぷんちゃぷんしてるけど何それ。私、勘のいいガキになりたくないよ……(???)500mlペットボトルと見紛うような下剤。アッ『腸よ鼻よ(作:島袋全優)』で見たことあるやつ……アッアッ……。
 看護師さんの説明を要約すると、早起きして2時間弱かけて出てくるものが透明になるまで全て出し、適宜記録も取るという壮大な計画。(早起きなのは検査の時間に合わせるためであってむしろ私が寝坊なだけ)途中から「ホエェ」「ヒェェ」としか鳴かなくなった私に「検査初めて?頑張ってね」と微笑む白衣の天使。力づけられながらも同時に「やっぱ頑張んなきゃいけないんすね……!」と怯えてみたり。
 隣の薬局でどっさりと軟膏をいただき、震えながら帰路につきました。

 長くなってきたので一旦ここで区切ります。
 朝井リョウのエッセイ集『風と共にゆとりぬ』所収の「肛門記」を他人事ながら大変そうだなぁ……と思いつつ、コミカルな筆致にくすくすしながら読んでいたのですが、今となっては卒論の先行研究論文を読む真剣さで(それでも笑いながら)読み返しています。
 私の症状と彼の症状とは全く違いますが、痔瘻の方の体験記は彼のエッセイのようにたくさん見かけるのに、内痔核の体験記はなかなか見つからなかったので、どなたかの何かの参考になればと思い、もう少し書いていきます。

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