たかが「おでん」されど「おでん」おでんについて考えてみた【KOZUKA 513 shop paper vol46 2023/02】
おでんが好きだ。寒い季節はもちろんだけど、暑いときでも気がつけば作っていたりする。じっくり炊くことが身上なので、本気で暑い時期にコトコトするのはきついのだけど、それでも冷房を効かせたキッチンでおでんを炊いて冷房を効かせた食卓で食べる。なんて贅沢な!とさすがに思う。
「夏のおでん」というレシピも散見するけれど、夏の特別感は必要なくとにかく好きな具材を好きなだけ入れるのがいい。
おでんの必須アイテムとは何だろう、と考えないでもないけれど、基本的には自分の好きなものでいいのだと思う。
自分が必ず入れるのは、①大根②厚揚げ③こんにゃく④玉子⑤さつま揚げ⑥河岸揚げ⑦赤ウィンナー
「赤ウィンナー」は異質と思われるかもしれないけれど、ほぼほぼ野菜と練り物(魚)なおでんにとって、少しの動物性の旨味は合うと思うのだ。もちろん、本当は牛すじを入れたい。昔々は牛すじは安価な食材で、圧力鍋を使ったりして下ごしらえする手間さえ厭わなければ、おでんにぴったりの具材だったのだ。いつの頃からか牛すじはなかなかスーパーなどで見かけなくなり、たまに見つけると「えっ…?」と引くような値段になっている。(下処理済みの冷凍の牛すじも売ってるけど、やっぱり高いし、おでんって自分で下ごしらえするから美味いのだと、変にこだわっている)
他に動物性の旨味って何があるんだろう。巾着って手もあるか。とにかく燻製的な香りのない赤ウインナーはありだと思うのだ。
こと、おでんとなると書きたいことがあり過ぎて、前段が長い。
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寒い季節になると おでんを食べたくなる それ以上に 作りたくなる
週に5日ぐらいは「おでんでいいな」とさえ思う
ランチプレートの小鉢をおでんにしようと決めたとき ふと考え込んだ
小鉢だからたくさんは入れられない
ならばおでんの最小限の具材ってなんだろう
具材には「旨味を出すもの」と「旨味を含んで美味しくなるもの」があるように思う
練り物は旨味を出してくれるし 大根はその旨味を含んで美味しくなる
それともう一つ 食感の取り合わせも大切なような気がする
全体に柔らかい歯応えなのだけれど
その中でもこんにゃくのように噛み切る食感か
練り物のように歯にまとわる食感か
その取り合わせがおでんの醍醐味なのだと思う
決まったのは 大根・こんにゃく・竹輪・揚げボール・厚揚げ
揚げボール・厚揚げは熱湯で油抜きをして
先につゆを張ったおでん鍋に入れて温める
こんにゃくは隠し包丁を入れ熱湯で湯がいて独特の臭みをとって鍋に入れる
大根は厚めに皮を剥いて面取りし隠し包丁を入れ下茹でしてから鍋に加える
串が通った大根を冷水にさらして完全に冷まし
芯まで透明感が出ていることが大切
鍋は土鍋かルクルーゼ 厚みのある鍋にじっくり弱火を当て温める
決してグツグツ煮立たせない
「煮る」というよりもあくまでも「温める」のが肝心
煮立たせてしまって汁が濁ったらそれはもうおでんではない
とさえ思っている
来客の多い家だった実家で 母親はおでんで客をもてなすことが多かった
彼女の作るおでんは絶品 「おでんの汁は濁らせたらだめ」が口癖だった
金色に透き通った汁は それだけで手間暇かけた上等な一品であるような気がしている
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実は、「おでんとご飯」が苦手である。おでんはご飯のおかずではない、自分の中では。子どもの頃、卓におでんがおかずとして登場することはなかった。おでんは、大人が酒席で食べているもののおこぼれにあずかるものだった。父親はよく自分を屋台に連れて行ってくれ、そこで焼き鳥・おでんをつまみ食いさせてもらったていた。
大人になって酒を飲みながらおでんを食べるようになって、「ああ、やっとおでんをつまみに酒を飲めるくらいにまでなったんだな」と感動した。
「おでん弁当」とか「おでん定食」なるものの存在を知ったときは愕然とした。どうして米粒と一緒におでんを食べる…?
どうして自分はそうなのだろう。いつかきちんと自己分析してみたい。
…そんなたいそうなものでもないか。