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【短編小説】星の降る夜(5分で読めます。ヒューマン)

「雨、早くやまないかな」

紫陽花の葉にちょこんと乗っていた、カタツムリのサムが呟いた。

同じ葉っぱにとまっていた、アゲハ蝶のミアが不思議そうにサムに尋ねる。

「えっ?
君達カタツムリは、雨が大好きだと思っていたけど違うの?」

それを聞いたサムは、首を横に振った。

「それは思い込みだよ。
ずっと乾燥してたら僕らは死んじゃうから湿気は必要だけど、雨は好きじゃない。
雨が降り始めると、ツノの先端にある目玉に雨粒が当たって痛いし、僕達は貝の仲間だけど肺呼吸しているから、大雨で地面に水が溜まると溺れて死ぬ事もある。
だから雨が降ってきたら、急いでブロック塀や紫陽花の茎を登って、雨が止むのを待っているんだよ」

サムは、葉っぱの裏側にとまり寝支度を始めたミアに説明した。

ミアは、サムの唯一の友達だった。

「へぇー。
そうだったの。
ねぇサムは、ホタルを見た事ある?
星のようにキラキラ輝いて綺麗なんだって。
私、1度でいいから見てみたいの。
でも私達蝶々は、紫外線の少ない夜には何も出来ない。
ただ、じっと眠るだけ。
こんなんじゃ、きっと死ぬまで見れないわね。
そろそろ、寝る時間。
サム、おやすみなさい」

「おやすみ、ミア。
僕も、今夜はここで一晩を過ごさなきゃいけないみたいだ」

サムは薄暗い空を見上げた。
雨はやみそうにない。

空から落っこちてきた雨粒がサムの目玉に当たり、サムは思わず下を向いた。

次の日の事だった。

サムは、どこからか聞こえてくるミアの叫び声で目を覚ました。

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