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髭とスパゲティと私
髭のオヤジとの出会い
それは4年前のこと。仕事にぶち当たり、家路につくはずが、なぜか見知らぬ路地裏に迷い込んだ。疲れ果てた頭が、少しだけ冒険を求めていたのだろう。
薄暗い路地の奥で、不思議なオーラを放つ髭のオヤジを見つけた。緑っぽい袈裟のような着物を身にまとい、そこに「いる」だけで何かが違う。近づいてみると、オヤジは目を瞑って微動だにしない。私はおそるおそる声をかけた。
「こんにちは。」
髭が動いた。オヤジの片目がこちらを一瞥し、また眠りに落ちたようだった。が、次の瞬間、髭の奥から声が響いた。
「どうした?」
驚く間もなく、オヤジが口を開いた。いや、正確には髭のあたりから声が聞こえてきた。
「金言を授けよう。」
は? この状況で金言? 迷える40代会社員に与えられる金言って何?
「攻撃とはな、自分がおかしいんじゃない。自分の周りがおかしいんだ。」
その言葉を聞いた瞬間、胸がドンと重くなった。それまで「自分が悪いんだ」と思い込んでいた私にとって、価値観を根底から覆される言葉だった。
金言の重み
「でも、自分の価値観を信じられなくなったら、何を信じて生きればいいんですか?」私は恐る恐る尋ねた。
「それを見つけるために、今こうして生きているんだろうよ。」オヤジは淡々と言い放つ。
その夜、私はなぜか涙を流しながら家に帰った。そして、解雇されるのを覚悟しながら新しい道を探し始めた。そう、あの髭のオヤジが言った金言を胸に抱きながら。
今日という新たな一歩
上映会では、誰も私を「道道雄さん」とは呼ばなかったし、名刺交換もされなかった。でも、それでいい。自分の価値観を疑い、新しい道を探すことが重要だと髭のオヤジが教えてくれたから。
私たちは常に変化し続ける。それが40代会社員という生き物の宿命だ。そして、その変化を受け入れるためには、ほんの少しの勇気と、奇妙な出会いが必要なのだ。
さて、次は何が起こるのだろう?
髭のオヤジ、またどこかで会えますように。