本気で選んだ最も偉大なアーティスト ランキング 〖前編〗TOP100~51
○傍若無人なローリング・ストーン誌
ここ数年ローリング・ストーン誌はかつて自分たちが定めてランキングを改訂しているが、その選定基準は疑問に思うばかりだ。なにせ、バランスがグチャグチャなのだ。今まで保守派を貫いた反動で、過度に伝統的な名盤やアーティストを下げ、その空いた枠をこれまで過小評価を受けてきたミュージシャンが埋める形になっているため、「エリック・クラプトンが偉大なギタリストTOP30に入らない」「Hey judeが偉大な曲TOP50に入らない」という流石にやりすぎじゃない?という順位になっているのだ。
勿論、革新派のスタンスをこの先も取り続けていくのならまだ筋は通っている。
だがそれならそれで、真っ先に改訂するべきランキングがあるのだ。それがこちらだ。
ボーディドリーよりもマイケル・ジャクソンの方が下だって!? んなわけあるかよ
さらには、流石に渋すぎるだろってくらい60年代のガールズグループやロックバンドなどもランクインしてやがる。10年以上前に選出したランキングとはいえ、そろそろ認識をアップデートすべきじゃない?ってことで待ちきれなくなった俺がランク付けしてみたとさ。
○選定基準
①名曲はもちろん、名盤も作っている必要がある。特に複数の名盤を発表しているアーティストは一気に上位にランクインさせている
②批評的に優れているか、人気も誇っているかのバランスを重視
③新たな音楽ジャンルを創ったミュージシャンは軒並み評価高め
④ビートルズ中心史観、ロック中心主義にならないように注意し、現代の素晴らしいアーティストにはレジェンドたちと比べても相応の評価をつける。
⑤一時の人気だけでなく、長年にわたっての影響力を持ってるかもしっかり加味する
⑥基本的にはアメリカの評価基準に軸を据えるが、イギリスのバンドもしっかり入れる
⑦あくまで2024年度版
⑧当然ジャズは選外、20世紀前半は選外
②を重視するのが1番難しかったです。
ランキングで並んだ時の違和感の無さ。これを重視するためにかなりバランスには配慮しました。
例えばマライア・キャリーなどは売上だけで見ればTOP10に入るでしょうが、アーティストとしての革新性という所だと疑問符がつきます。
逆にザテレヴィジョンやパティスミスは革新的な音楽性で評論家からも絶賛されてますが、肝心なセールスの面では致命的です。
こういった極端な2タイプはどちらも選外にしました。そうしていく内に今回惜しくもランキングを逃したアーティストは50人以上います。
ただ、逆に批評的にも優れていて、かつセールスも安定しているバランスの良いミュージシャンは軒並み上位になりました。
④を補足すると、例えば70年代のプログレやサザンロックなど、現代のアーティストから見て参照される機会があまり少ないジャンルのアーティストはごく一部の大物を除いてランクインしてません。時代のせいにしたくは無いのですが、仕方ありません。
⑦は、これが10年後かに全然違う評価になってしまってる時の言い訳です。それならそれでまた改訂版を作ってもいい気がしますが。
⑧に関しては許してください。彼らを入れるとそれこそ基準がグチャグチャになってしまいます。
一応ライブの上手さなども評価基準ではありますが、基本売れてるアーティストは皆ライブが上手いので結局そこまで差は広がらなかったです
100位 トラヴィススコット
新陳代謝の激しいHIPHOP業界の中で、安定したヒット曲と名声を手にしているラッパー。従来のトラップビートに加えてサイケデリックな音使いが特徴的。若くして、既にレジェンド達とも比較されている存在だ。
99位 The 1975
2010年代のロックは冬の時代とも揶揄されるほど、シーンが盛り上がらずHIPHOPやR&Bに遅れをとっていた。彼らは、そんな中で、今まで見逃されてきた80'sのソフィエティポップに目をつけアーバンなサウンドを斬新に鳴らして、新時代のロックを提供した素晴らしいバンドである。
98位 カーティスメイフィールド
ニューソウルのアーティストの中でも特にファンク色と政治色が強い彼。日本での人気と知名度はあまり無いものの、HIPHOP勢からも多大なリスペクトを受けており、黒人のエンパワーメントの歴史の中でも外せない存在だ。
97位 Avicii
EDMというジャンルは一般的な人気と反比例して、批評筋からの評価は残念ながら低い。Aviciiはデヴィットゲッタが完成させたEDMのフォーマットをさらにもう一段階引き上げた漢だ。『wake me up』含むナンバーは未だに根強い人気を誇ってるし、ドロップとブレイクの旨味を最大限引き出す手腕はもっと評価されてもいいはず。
96位 バットバニー
近年の謎のレゲトンブームの中で、2022年に見事シーンを制した覇者。必ずしもレゲトン一辺倒ではなく、ボサノヴァやインディーポップなどの要素も大胆に含んでいて、よりプログレッシブな表現を目指している。またコラボレーションにも積極的で業界を盛り上げようとする真摯な姿勢も伺える。
95位 デュラン・デュラン
ニューロマンティックの象徴ともいうべき存在。華やかなシンセポップと奇抜な服装はかつて一世を風靡した。
80'sリバイバルであまり再評価されなかったのは痛いが、MTVをふんだんに活用した彼らの躍進はその後のヘアメタルのシーンに大きな影響を与えた。
94位 コールドプレイ
人気だけでいえば間違いなく現代のロックバンドでトップクラスなのだが、『yellow』から『vila da vila』までの極端な音楽性の変化だったりスーパーボウルのパフォーマンスの印象もあってか、どうしてもキョロ充的なイメージを持ってしまう。それでも安定したヒット曲を送り続けてるのは間違いない。
93位 パール・ジャム
グランジブームの一角を担ったものの、ニルヴァーナが語られすぎたせいで、逆に過小評価されすぎてるPJ。グランジバンドの中でもハードロックやブルース色が強く、高い演奏力を誇る。
シリアスな社会問題を歌詞にしたり、シングルを出さないという武骨な姿勢も評価が高い。
ライブパフォーマンスもクオリティが高く、観客との一体感を大切にし、毎回異なるセットリストでファンを楽しませている。
92位 ストーン・ローゼズ
UKロック史においてこのバンドの存在は欠かせない。80年代の後半のイギリスは、ニューウェーブのブームが一通り治まり、それに取って変わってアシッドハウスというクラブミュージックが社会現象ともいうべき人気になった。
そこで彼らはアシッドハウスがもたらす陶酔感や16ビートの快楽をロックに取り入れ、軽快で新しい音楽を作ったのだ。彼らがいなければ後のブリットポップも無かったかもしれない。
91位 ホワイトストライプス
2000年代以降に起こったガレージロックリバイバルの中でも最も成功したバンド。90'sの骨太なロックをさらにソリッドにミニマムに仕上げ、2人組ながらも圧倒的なサウンドを生み出した。特にギターのジャックホワイトは21世紀の中でも屈指のギタリストとの呼び声も高い。
代表曲「Seven Nation Army」は、近年でも稀有なロックアンセムとして広く知られ、スポーツイベントでも頻繁に使用されてる。
90位 ブラー
ブリットポップの一角を担うバンドであり、オアシスのライバルとして広く知られている。
高いインテリジェンスから生み出される品のある能天気さが持ち味。フロントマンのデーモン・アルバーンは、その後も『Gorillaz』というプロジェクトでも成功を収め、多彩な音楽性を披露。
2023年に待望の活動再開を果たし、最新作も絶賛された。
89位 オーティス・レディング
無数のソウルシンガーの中でもレジェンドの1人。しゃがれたヴォーカルと激しいパフォーマンスはまさにソウルの体現者として扱われている。代表曲「Sittin’ On The Dock of the Bay」や「Try a Little Tenderness」は、ソウルミュージックの頂点を極める名曲として知られ、未だに多くのアーティストにカバーされている。ただ R&Bの進化によって直接アーティストに参照される機会は次第に減っていってる印象。
88位 キンクス
60年代UKバンドの四天王の一角。いわゆる「奴は四天王の中でも最弱…」と言われるような知名度と実績ではあるものの、フロントマン レイデイヴィスの描く素朴なメロディーと詩性はイギリスらしさを構成するパーツとして欠かせないもので、後続のミュージシャンからも慕われている。
87位 アデル
エイミーワインハウスがもたらしたモダンソウルのスタイルを完成させたのがアデルだ。
稀有な歌唱力と作曲能力を持ってるのは間違いないが、アルバムをリリースする度にそれを遥かに凌駕するセールスを叩き出しており「過大評価だ」という声もチラホラ散見されてる気がする。
86位 ビョーク
アイスランドの地で奇天烈な音楽を奏でるオバサン。
トリップポップやエレクトロニカなどの前衛的なクラブミュージックを吸収しつつクラシックやジャズなどにも幅を広げた個性的な音楽性は、単なるポップスとして語れる次元ではなく表現者として扱われている。
神秘的な歌声とファッションも相まって、ついつい目が引かれる。
85位 ラナデルレイ
日本での知名度はあまり無いが、2010年代のシンガーソングライターでも特に影響力が高く、今流行りのサッドインディ系の元祖的な立ち位置だ。
彼女のサウンドは様々なジャンルがクロスオーバーしており、上手く言語化できない。ノスタルジックなのにどこか近未来的。コード感覚やメロディーセンスもどれも癖があり、1度沼ると抜け出せないカルトアーティストだ。またウィークエンドやテイラーなどともコラボしており、業界から一目置かれてる存在でもある。
地味ではあるが確実に人の心に残る曲を書き続けている。
84位 ザキュアー
ゴスロックのレジェンド。
ポストパンク由来の陰鬱な世界観と様々な音が織り成すサイケデリックな世界観が奇妙に融合し、誰にも似ない独自の音楽性を築き上げた。
フロントマンのロバート・スミスの奇抜なビジュアルが目を引くが、メロディーメイカーとしての能力も並々ではなく、「lovesong」や「friday i'm in love」などメンヘラ心がくすぐられる切ない名曲をいくつも世に送り出してる。
その実績はただのカルト的人気に留まることはなく、スタジアム級のライブも楽々成功させるほどだ。
83位 BTS
KPOPはかつてのスパイス・ガールズやtATooなどの商業的なダンスポップの手法に頼らず、細部までブランディングを施し独自の文化を作り上げていった。
その中でもBTSが突出した成功を収めた理由は、彼らの持つ高い実力はもちろん、アイドル業界の中で異例の長期的な成長戦略にあるだろう。
初期には社会に反抗する若者の視点を取り上げ、中期には青春をテーマに、後期には普遍的な楽曲と社会的なメッセージを発信する立場へと変わっていった。このように7年にわたってスケールを拡大し続けたことで、ついには大国アメリカでビルボードチャートを制するに至ったのは偉業以外の何物でもない。
82位 スクリレックス
プロステップの生みの親。電子音楽という批評上不利な立場にあるジャンルに属しているにも関わらず、その斬新さでグラミー賞に度々ノミネートされている。EDMをさらに過激にしたビートと爆発的なベースラインが特徴的なサウンドは非常に汎用性が高く、様々な電子音楽のミュージシャンに影響を与えた。というか彼のサウンドを真似したものは未だに大量に生産され続けており、映画やゲームなどで耳にする機会も多いのではないだろうか。
81位 ドレイク
歌モノ系ラッパーの頂点に君臨する存在。テイラーと並んでアルバムをリリースする度にチャートを席巻しており、単純なファンの数で言えばHIPHOPアーティストの中でもトップかもしれない。
オートチューンを駆使することで、メロディックさを際立たせる手法は、喋り言葉が中心のラッパーにとってあまりにも有効的で、ある意味ドレイクの登場はHIPHOPの更なる躍進のために不可欠な出来事だったのかもしれない。実際、彼の2番手を狙って'歌うラッパー'がたくさん続出し、彼らでビルボードチャートは埋まっていくことになったしね。
80位 ブルーノマーズ
ハワイ出身の稀代のポップスター。
ファンクからバラードまでどれを歌わせても1級品の歌唱力とパフォーマンスを魅せ、さらにはメロディーメーカーやプロデューサーとしても評価されてることから「マイケル・ジャクソン2世」等の呼び声も高い。本人もそれに倣うかのように、1970~80年代のポップミュージックを忠実に再現し、ノスタルジックであり近未来的な味わいもある音楽性が特徴。
リリースする度に大ヒットを記録するものの、アルバムやシングルの総数は少ない方で、むしろライブ活動に精力的だ。
79位 エイミーワインハウス
21世紀にこの手の歌姫が現れると誰が予想できただろうか。薬物やアルコール依存症に苦しむ破滅的で破天荒な人生、それに裏打ちされたかのように妙に説得力ある妖美なハスキーボイスは懐古厨の老人達からカリスマを求める若者にまで支持された。
60年代のガールズポップやソウルミュージックを忠実に再現した2ndアルバム『Back to Black』はデジタルサウンドで埋め尽くされフォーマット化した音楽界に'原点回帰'を提示し、翌年のグラミー賞を席巻した。
その後に勃興したモダンソウルのシンガーで、エイミー・ワインハウスの影響を受けていないアーティストはほとんどおらず、彼女がいなければアデルやサム・スミスといったシンガーも日の目を浴びなかったかもしれない。
彼女は残念ながら2011年にアルコール中毒で死去してしまうが、彼女の残したインパクトは今後も語り継がれていくだろう。
78位 アイアン・メイデン
ヘヴィメタル界大御所バンド。
バンドのマスコットキャラ エディー、ツインギターの絡み合い、太く鋭いベースなど他のメタルバンドと比べても個性と存在感は1段上であり、キャリアの安定感もメタル界随一である。
『The trooper』などの疾走感溢れるナンバーから『Rime of the Ancient Mariner』のような重々しいプログレ的な楽曲まで、ワンパターンと揶揄されがちなメタルの中でも非常に曲想が広く、後続のバンドに大きなインスピレーションを与えた。
当然ライブも上手く、会場のキャパがでかければでかいほど盛り上がる。2001年に行われた『Rock in rio』は25万人以上が集まり、熱狂の渦に包んだ。
77位 APHEX TWIN
Richard D. Jamesによるプロジェクトであるエイフェックス・ツインは、基本クラブをいかに盛り上げるかが目的の電子音楽業界で、芸術性を追求し続けた異端児だ。
アンビエント、アシッドテクノ、ドラムンベースを混在させ動と静を意識した彼の作風は、個性的で反骨精神と知性が溢れるものであり、ロック界からも一目置かれた。
彼の発表した作品群は、どれもが後のエレクトロニカやIDMのシーンに不可欠なマテリアルであり、ハウスの陶酔感に忠実に沿ったものである。
76位 ABBA
スウェーデンで結成されたポップグループ。男性2人のユニットに女性2人のメンバーが加入。
老若男女が楽しめるディスコビートと余りにもキャッチーなメロディーと美しい4人のハーモニーが巧みに混ざりあったサウンドはビートルズに匹敵する普遍性を有していて、スウェーデンという不利な立場に置かれてるにも関わらず世界中で愛された。
「Dancing Queen」「money money money」「Mama Mia」など、代表曲の数だけでいえば歴代で10本の指に入るくらい多く、その圧倒的なポップセンスはユーロビートなどのヨーロッパのダンスシーンに大きな指針を与えた。
75位 リアーナ
Def Jamが輩出した21世紀の新たなディーバである彼女は、攻めに攻めたエレクトロなサウンドや、R&BもロックもHIPHOPもごちゃ混ぜにしたハイブリッドなサウンドが特徴で、凡百のポップスターを超越して、ジャンルレスな時代の新たなカリスマとなった。
自身でファッションブランドを出かけるほど、力強い挑戦心に満ち溢れていて、自由自在に表現の形を変えられる。
また、ここまでリアーナが人気を博しているのは、そのクリエイティビティーもさることながら、きちんと「踊れる楽曲」に仕上げている部分があるからだろう。この芸術性と大衆性のバランス感覚もまた凄まじいものだ。
74位 サム・クック
60年代のR&Bの中でも類まれなる才能と人気を有したシンガー。ゴスペルを背景に持つ彼の瑞々しく軽やかな響きは、当時の泥臭さのあったR&Bシンガーの中でも際立っており、アイドル的な人気を博した。彼のライブパフォーマンスは、若き日のマイケル・ジャクソンにも大きなインスピレーションを与え、その影響は後のポップミュージックにも広がっている。また、社会問題に深い関心を持ち、『A Change Is Gonna Come』は公民権運動のアンセムとして広く支持された。この楽曲は、時代を超えて人々に希望を与え続けている。
73位 ACDC
オーストラリアが生み出した伝説のロックバンド。下手にテクニカルな演奏に頼るのではなく、ロックの快楽に忠実に沿ったミニマルなビートとギターリフで「Back In Black」をはじめとする数々のロックアンセムを世に送り出した。その聞けば聞くほど味の出るグルーヴは、半端に芸術を気取った作品よりも強靭な力を持ってることを何十年にも渡って証明し続けたのだ。その証明として、1980にリリースされたアルバム『Back In Black』は世界で最も売れたアルバムのひとつである。
ライブパフォーマンスも文句の付けようがない。スタジアムクラスの公演も難なくこなし、学生の姿でステージを縦横無尽に走り回るアンガスヤングの姿はいつ見てもエネルギッシュだ。
72位 フランク・オーシャン
彼のような難解なアーティストを語るにはまずオルタナティブR&Bの存在を説明しなければならない。90年代にR&Bの進化はピークに達し2000年代以降から行き詰まりを見せることになる。形骸化したジャンルにうんざりし、従来のフォーマットとは全く別のアプローチを探し始めた勢力がオルタナティブR&Bである。そんな中でもフランク・オーシャンのセンスはずば抜けていて、HIPHOP的な感触は残しつつも繊細なコード進行や切ないメロディーを紡いだ楽曲群は、「これってほんとにR&Bなの?」と疑問に感じるくらいジャンルレスでジェンダーレスなサウンドで出来ている。
71位 キング・クリムゾン
プログレッシブロックのパイオニアであり代表的な存在。完璧主義者 ロバートフリップによって構築されるテクニカルで複雑なサウンド、難解な歌詞、目まぐるしい楽曲構成は、アートロックの原点にして頂点だ。
なにもテクニック一辺倒ではなく、時に『epitaph』のような叙情的なロックバラードがかけるところもこのバンドの良さでもある。
とにかくバンドのラインナップが変わることで有名で、作品によってはだいぶ音楽性の毛色が変わってることもある。しかしどこまでも先鋭的な姿勢と名曲の数々は、プログレが廃れた現在でもプログレッシブ・メタル、ひいてはHIPHOPにも多少なりとも影響を与えている。
70位 ガンズ・アンド・ローゼズ
1987年のデビューアルバム『Appetite for Destruction』にて売り上げ全米1位を獲得し、瞬く間にシーンの頂点に君臨。
セックス・ドラッグ・ロックンロールがモットーなのか、どこまでも過激で退廃的なバンドだ。
だが、AC/DCと同様にブルースの重々しさやロックの初期衝動にも理解が深く、硬派な一面も垣間見える。
作曲能力も優れていて、バラードを書かせても1級品。『sweet child of mine』の持つ瑞々しさは歴代のパワーポップの中でも屈指の名曲で、『November rain』はyoutube上で屈指の再生回数を誇っている。
残念ながらHR/HMのバンドの中でここまでの売上と人気を記録したのはガンズが最後であり、今思えば彼らの登場がハードロックの最終形態であり完成系だったのかもしれない。
69位 N.W.A
短い活動期間にしては、あまりにも存在が大きすぎるグループ。彼らがいなければギャングスタ文化はここまで大きいものになってなかっただろうし、HIPHOPはもっと享楽的な音楽になってたかもしれない。リアルな街の現実を赤裸々に描き、社会問題や警察の暴力に対する強烈なメッセージは今でもあまりに斬新で異質なものであり、文字通り歴史を変えたものだ。
68位 TLC
90年代のR&Bグループの中でも最も成功を収めたグループの1つ。彼女らの魅力は圧倒的なクールさ。当時急成長を遂げていたHIPHOPのビート感覚を吸収したスムースなメロディーとラップや、『Waterfalls』などのシリアスな社会問題を取り上げたリリックで評価を固める。
そこからさらに、1999年に発売されたアルバム『Fanmail』にてTLCはさらに近未来的なプロダクションへと発展し、R&Bの先進性を象徴するグループへと進化を遂げた。
その功績は近年のR&BリバイバルやNewjeansに代表されるY2Kリバイバルによって再評価されてきている。
67位 ビリー・アイリッシュ
弱冠14歳でデビューを果たし、順調にスターとしての名声と評価を得た若き天才。今はこの順位に収まってるが、あと10年も経てばもっと上にランクインしているかもしれない。
Z世代らしいジャンルレスな感覚で独特のサウンドを奏でる。それに加え、彼女の独特なウィスパーボイスとダークな歌詞は、10代特有の不安を想起させるだけでなく2010年代のインディーシーンで密かにトレンドだったポストダブステップ/ベッドルームポップを完成の領域まで押し上げた。
近年、複数の作曲家と共にプロジェクトを進めるアーティストが多い中で、自身と実兄のFINNEASの2人だけでほぼ全ての楽曲を生み出すDIY精神も凄さのひとつ。
彼女のような異質な存在がグラミー賞を席巻し、日本でもある程度売れてることを考えると、まだまだ音楽が持つ可能性は存分にあるなと実感する。
66位 ブルース・スプリングスティーン
アメリカンロックの象徴的存在。アメリカの労働者階級の視点から描かれる人生観を巧みに描写した歌詞をストレートなロックに乗せ、当時は『時代の代弁者』『第2のボブディラン』とまで扱われた。代表作『ボーン・イン・ザ・U.S.A.』や『ザ・リバー』などは、アメリカ人としてのアイデンティティや生き様を呼び起こすような逞しい曲で、筆者のような純日本人としてはいつもそのガッツにやられる。
またライブパフォーマンスも非常に上手く、時には3時間以上に渡るステージも厭わない熱血漢だ。
65位 ポール・サイモン
サイモン&ガーファンクルでの活動を含めれば、50年以上に渡って活躍し続けてるソングライター ポール・サイモン。『sound of silence』や『Bridge over troubled water』などの圧巻のメロディーが印象深いが、ソロとなってからはレゲエやカリプソなど当時では新鮮なローカル音楽を探究し出す前衛的な一面も見せている。
もちろんただの前衛に留まらずアーバンなポップスに仕上げる手腕はまさに一流のソングライターだ。
その広い視点と、確かな技術が最大限組み合わさったのが1986年にリリースされたアルバム『Graceland』。アメリカの白人の立場からアフリカ音楽を大胆に取り入れ、奇しくも80年代のグローバリズムを象徴する作品として絶賛された。
64位 ウィークエンド
美しく切ないファルセットが持ち味の彼は、現代のR&Bアーティストの中でも最高峰の人気と評価を得ている。2020年にリリースされた「ブラインディング・ライツ」は数々の記録を打ち立てた。
80年代をオマージュしたムーディーなシンセポップとそれに相反する苦悩と狂気に満ちた歌詞が特徴で、このアンビバレントな音楽性が逆に共感を集めているのだろう。
気分はとっくに沈んでるのに享楽的になりたい、そんな時に彼の楽曲は非常に心に響くのだ。
彼の描く空虚な世界観はどこかサイバーパンクにも通ずるところがあり、その影響は音楽を超えてファッション業界にも及んでいる。
またインターネットを足掛かりに活躍したパイオニアでもあり、自作の音楽を無料でダウンロードできるようにしていた先鋭的な姿勢も評価に値する。
63位 アークティック・モンキーズ
ロック不況と叫ばれる21世紀において数多くのアンセムと名盤を残し、もはやレジェンドに片足を踏み入れているバンドだ。
2005年、彼らはガレージロックリバイバルの真打的存在として彗星の如く現れ、デビュー作『Whatever People Say I Am, That’s What I’m Not』は、全英初登場1位、英国史上最速で売り上げを記録し、その新鮮なサウンドと若者の日常を象った歌詞で大きな話題を呼んだ。
それから時はすぎ、5作目 『AM』をリリースする頃には、ガレージロックの衝動を思いのままにぶつけていた若者としての彼らの姿は薄れ、HIPHOPを経由したミニマルなビート感覚とBlack Sabbathを想起させる重々しいリフを融合させ、色気漂う大人としての姿に変貌しデビュー作以上の成功を収めた。特にリード曲「Do i wanna know?」や「R U mine」は未だにSpotifyのグローバルチャートにランクインするほどの人気を博してる。
さらに時はすぎ、7作目『the cars』ではバンドとしてのエネルギーを完全に排除し、20世紀前半のジャズやラウンジミュージックなどに接近しだした。彼らの音楽性は果たしてどこへ向かうのやら…
62位 ローリン・ヒル
ヒップホップにとって1998年は運命の年である。東西戦争が終結し、ロックを凌駕する勢いでセールスが上昇していく。そんな重要な年に天下を取ったのがこの女性、ローリン・ヒルだ。
この年に発売された最初で最後のソロアルバム『The Miseducation of Lauryn Hill』は、HIPHOPファンからもR&Bファンからも受け入れられる文句のつけ所がないサウンドで構成されており、グラミー賞で11部門でノミネート、女性アーティストとして史上最多の5部門を制した。
娘を妊娠したことによる心身の変化からインスピレーションを得て制作された本作は、今でもフィメールラッパーのなかでも最も赤裸々で自信に満ち溢れたアルバムの1つとして知られている。
そんな卓越したラップスキルを持ちながら、ソウルやレゲエまで、様々な音楽ジャンルを違和感なく表現出来る卓越した歌唱力もあり、そのハイブリッドな技術はアリシア・キーズなど数多くのボーカリストに影響を与えた。
61位 キャロル・キング
ポップス最初期のソングライター。
60年代に夫のジェリーゴフィンとタッグを組んで数多くのオールディーズ楽曲を提供し、ヒットさせた。その成熟した作曲能力は当時のレノン=マッカートニーも参考にするほどだった。
60年代後半になって自作自演のアーティストが増えてきてからは、次第に彼女もソロとしてのキャリアを始めだし、1971年にリリースされたアルバム『タペストリー』は、70年代においてシンガーソングライターの時代を切り開いた1作であり、全世界で2500万枚以上も売り上げている名盤だ。
当時としては斬新な7thコードを織り交ぜた都会的な楽曲は今でも数多くのミュージシャンにカヴァーされている。
60位 エルトン・ジョン
エルトン・ジョンのように、ただただいい曲を書くソングライターはこういったランキングで評価を下げがちだが、単純な売上や人気で見れば彼の才能は自明である。彼の楽曲は、ピアノの旋律と彩り豊かな歌詞が特徴であり、多くのヒット曲を生み出してきた。「ユア・ソング」のようなピアノバラードも勿論、プログレやレゲエなどにも手を広げており、曲作りに対して貪欲な姿勢が伺える。ロックスターとしても名を馳せており、彼のライブパフォーマンスは圧巻だ。
59位 ナズ
ブルックリン生まれクイーンズ育ちの彼は、
ストーリーテリング、フロウ、ライムのどのスキルも『天才』と呼ばれるほど才能に満ち溢れていて、聴き手を自身の世界観に引き込む。
デビューアルバム『Illmatic』で彼が吐き出した貧困問題や死生観は衝撃を与え、ビギーやウータンクランと共に東海岸を代表するラッパーとして名乗りを上げた。
その後もストリートの日常を謳った硬派なスタンスやJayZとのビーフも含め、業界の中でも稀有な存在感を発揮している。
58位 パブリック・エネミー
闘志溢れるバリトンボイスに定評のあるチャックDと、そのメッセージをさらに煽るFlavor Flavが中心の彼らは、あくまで言葉遊びとして面白がられていたHIPHOPを黒人の怒りを表現する手段に変えた。
彼らの登場はHIPHOPの文化的,政治的な価値を再認識させただけでなく、公民権運動以来、未だに解消されない黒人の貧困や差別の問題を提起したのだ。
またプロデューサー The Bomb Squad のメタルやパンクをサンプリングしコラージュのように構築されたサウンドはHIPHOPに懐疑的だったロックファンからも支持された。こういったジャンルのクロスオーバー精神は、ミクスチャーロックやニューメタルのミュージシャンにもヒントを与えた。
57位 ジョイデヴィジョン
本来パンクがUKロックの基準を全て破壊した後、次なる表現を求めたアーティストたちをポストパンクと呼んでいるはずなのだが、『ジョイデヴィジョン=ポストパンク』と言い切ってしまえるほど彼らは完璧なサウンドとアティチュードを作り上げた。
耽美的で抽象的な歌詞、無機質でミニマルなビート、硬質のギター、ヘロヘロな歌声のヴォーカルは圧倒的な個性を有しており、 にも関わらず多くのインディーアーティストが彼らのメソッドを真似した。活動期間はたった2~3年でフロントマンのイアンカーティスは自ら命を絶ってるにも関わらず影響力は絶大だ。
56位グリーン・デイ
ポップパンク界のレジェンド。
従来なDIY精神溢れるパンクを踏襲しつつ、親しみやすいメロディーと疾走感溢れる演奏でweezerやオフスプリングらと共に一斉を風靡した。
2004年発表のアルバム「American Idiot」では、アメリカの抱える問題や反戦思想を混ぜこみながら 、この時代には珍しいコンセプトアルバムに仕上がり大ヒット。パンクバンド初のグラミー最優秀レコード賞を獲得するという偉業を達成したことで、ほかのパンクバンドと比べて評価と存在感が1段上になった。
55位 マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン
アイルランドで結成されたシューゲイザーを代表するバンド。シューゲイザーとはギターの歪みとノイズを多用した轟音ギターサウンドで、陶酔感ある幻想的な世界観を作る音楽だ。 まあ知らない人は『Loveless』を聴いてみるだけでいい。というかこのバンドは『Loveless』を作り出しただけでもこの順位に値する。彼らがほぼ独自に生み出したメソッドは羊文学やきのこ帝国も影響受けている。
54位 マドンナ
マイケル・ジャクソンと並んで理想的なポップスターのロールモデルともいうべき人物であり、セールス面においても抜群の数字をたたきだしている。『Material Girl』などでの革新的な女性像や『like a prayer』で発するシリアスなメッセージなど、社会的・文化的な面から見ても多大な影響力を持っていて、実際マドンナに憧れてポップスターを目指した女性歌手は数え切れない程いるだろう。また、『Bedtime Stories』や『Ray of light』などの後期の作品を見てもわかる通り時代に合わせて自身の音楽性を大胆に変化する野心も持ち合わせている。
53位 リトル・リチャード
1950年代ロックンロールに活躍した一人で、「Tutti Frutti」 などのいくつものアンセムを世に放った。彼の生み出したシャウト唱法は今では当たり前のように使われてる技術なのでその凄さは実感しづらいが、あまりにも大きい0→1を発明したということだろう。
52位 フリートウッド・マック
1967年に結成されたイギリスのバンドではあるものの、幾度のメンバーチェンジと音楽性の変化によって、最終的にスティーヴィーニックス,リンジーバッキンガム,クリスティーンマクヴィーによる女2人男1人のソングライターを擁するソフトロックバンドとなった。
3人それぞれ音楽的志向が異なることに加え、シングルヒットを狙える高い能力を有しており、その多様な音楽性と小気味よいポップセンスは、インディーポップなどの若いミュージシャンからもリスペクトされてる。
特にスティーヴィーニックスは最初期の女性ロックスターでもあり、フェミニズムの観点から見ても評価が高い。
1977年、人間関係がゴタゴタの中制作したアルバム『Rumours』は、その異様な緊張感が功を奏したのか名盤に仕上がり、4,000万枚を超えるセールスを記録し、グラミー賞を受賞した。このアルバムの中の楽曲は何回もリバイバルヒットを起こしており、それだけ普遍的な魅力があるのだろう。
51位 フィル・スペクター
フィル・スペクターの登場は、アレンジメントの歴史における特異点である。
スタジオの支配者として振る舞い、何十人ものシンガーが一斉に声を出すことで確立した「ウォール・オブ・サウンド」は、録音芸術が持つ可能性をいち早く知らしめた。
彼が手がけた楽曲は数多いが、中でもThe Ronettes『Be my baby』はオールディーズの最高傑作として挙げるものも多い。
とりあえず前編はこれで終了となります。後編もお楽しみにしててください!
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