サウロ・ヒベイロ『柔術大学』-茶帯-

1 本稿では、サウロ・ヒベイロ『柔術大学』の「茶帯」の章について紹介する。「茶帯」の章のテーマは「パスガード」であるが、本章は『柔術大学』全体の中で最も分量があり、各種パスガードのテクニックについての詳細な記述がある。
 とは言え、それらについて詳述することは「セルフディフェンス」「サバイブ」を柔術の本質と考えるサウロ・ヒベイロの柔術観を伝えるのにふさわしくないので、本稿では「パスガード」についてのサウロの考え方の一般論と、具体例としていくつかの「パスガード」テクニックについてピックアップして論じようと思う。
 ヒベイロ柔術では、「サバイブ」「セルフディフェンス」という柔術の本質に関するコンセプトを大事にすると同時に、実際の試合においてはテイクダウン→パスガード→マウント→バック→サブミッションという組み立てを非常に重視している。テイクダウンからサブミッションまでの組み立ての要となる「パスガード」について、前章までで述べた「ディフェンス」「エスケープ」「ガード」の技術を基礎として「パスガード」が成り立っている事を理解する事が重要だと思う。

2 ①「パスガード」の原理

 ガードをパスする時は、重力を味方に付けなければならない。
 私は君と1対1で戦うことは決してない。その代わりに、私が最初に行うべきことは、重力の助けを借りて、どのような種類のゲームでも私をロックできないようにし、一貫して相手に体重をかけることができるようにすることだ。
 これが「パスガード」の鉄則である。
 君がどんな種類のガードであれ私をロックできず、私が君の身体に体重を乗せることができれば、私は君のガードをパスすることができる。 それはとても簡単なことだ。

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