片襟片袖
はじめに
ブラジリアン柔術(BJJ)における「ガード」には、大別して「クローズドガード」と「オープンガード」の2種類がある。
そして、「オープンガード」とは「両足をクローズしていないガード」という意味なので、「スパイダーガード」を始めとする「クローズドガード」以外の「ガード」は、全て「オープンガード」の下位区分に位置付けられる。
「オープンガード」の下位区分となる各種ガードについて、今思いつくままに名前を挙げてみても、スパイダーガード、デラヒーバガード、バタフライガード、Xガード、ワームガード、Kガード等々年年歳歳新しい名前のテクニックが開発されている。
BJJに熱中している人にとっては、それらの各種「オープンガード」を覚えることが楽しみのひとつになろうし、それとは正反対に、BJJの初心者にとっては「柔術迷子」となる原因にもなっているように思う。
ジョン・ダナハーは、「BJJにはありとあらゆるタイプの『オープンガード』が存在するが、君がその何を選択すべきか?で迷っているなら、私の答えは決まっている。『Cross collar cuff and bicep guard』一択だ。それ一つで白帯から黒帯まで君の柔術における生涯の伴侶となってくれるだろう」と語っている。
冒頭に掲げた記事で「ただのオープンガード」というタイトルを付けたのには理由があって、ヘンリー・エイキンスも「オープンガード」という名で呼んでいるのは、「Cross collar cuff and bicep guard」だけだからである。
ヘンリーの道場では、「スパイダーガード」を始めとする「モダンガード」(ヘンリーの中では「スパイダーガード」や「デラヒーバガード」すらモダンなのである!)を使っている生徒は「誰もいない」らしい。
私は、「スパイダーガード」や「デラヒーバガード」をやりたいという会員さんのやる気を削ぐような真似はしない。
ただ、「モダンガード」を使いこなすにはどうしても習得に時間がかかるし、相応の運動能力が要求されるので、仕事や家族等との兼ね合いで週1~2回程度の練習時間しか確保できないライト層にはお勧めできない。
また、「モダンガード」を得意とする人は、BJJにおける「ディフェンス」から「サブミッション」に至る各過程(注1)の中で、往々にして「ガード」と「サブミッション」に特化した練習をしがちであり、結果的に「ディフェンス」や「エスケープ」の基礎的な技術が抜け落ちてしまう可能性があるのではないか?と、危惧している。
注1)サウロ・ヒベイロは、柔術の過程を「ディフェンス」「エスケープ」「ガード」「パスガード」「サブミッション」の5つのパートに分け、各過程における技術の習得に集中的に取り組むべき時期と帯の色とを対応させて考えている。
それらの諸点を踏まえてみると、ライト層が「柔術迷子」にならないためにも、あるいは、BJJの練習に熱中している人が「オープンガード」全般の土台を作るためにも、まずは「Cross collar cuff and bicep guard」の習得に取り組むべきではないだろうか。
「Cross collar cuff and bicep guard」は、日本語では「片襟片袖ガード」と呼ばれ、英語では「Collar sleeve guard」という呼称の方が一般的である。
いくつか日本語のYOUTUBE動画を見てみたが、山脇先生の動画が「片襟片袖ガード」を理解する上で一番優れているのではないかと思う。
その上で、本稿では「片襟片袖ガード」こと「Collar sleeve guard」に関する私の「覚書」を記してみたい。
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