O先輩2
(前からの続き)
それから少しして、先輩はバス停で私を待つことも、電話をかけてくることも無くなった。
誰か好きな人が出来たのかも知れない。
私はそう思った。高校にはきれいな人、かわいい人はたくさんいるでしょう?
それに私は半年後に高校受験だ、勉強しなくちゃ…。
年が明けて3月、勉強の甲斐あって、私は希望高校に合格した。
朝刊の地元面に合格者の名前が発表された。
先輩は私の名前を確認して電話をくれた。
「合格おめでとう!良かったね」
先輩は、静かに待っていたのだ、私の合格を。
そして、言った。
「桜祭りに一緒に行こう」
「ううん…行かない」
私はその誘いを断ったのだ、好きなのに。
高校2年生と高校1年生、
この響きが怖かった。
淡い交際を、大人のそれに変えてしまうのではないかと怖かった。
私が今、その先輩に会いたいのは、懐かしいとか現在の姿を見たいからではない。
若くて浅い交際の中にあった先輩の分別、
気遣い、思いやり。
そんな大切なことにに、全く気づかなかった私の後悔が、どうしているのかな、と思わせる。
「わかった、じゃあね」
そっと受話器を置いた先輩の優しさに、
今だに胸が痛むのだ。
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