『機動戦士ガンダムAGE』昭和とZ世代に挟まれた平成サラリーマンに告げる。
本記事は2011年10月から2012年9月にかけてTVアニメとして放映された
機動戦士ガンダムAGEについて語る。
この作品で注目したいのは、3人の主人公たち
第一部:フリット・アスノ
第二部:アセム・アスノ(フリットの息子)
第三部:キオ・アスノ(アセムの息子・フリットの孫)
この3人は家族であり、アセムはフリットの息子。
キオはアセムの息子かつ、フリットの孫という形になる。
最初は美少年だった第一部の主人公フリット・アスノが歳を取り
中年となり息子ができ、最後には孫ができておじいちゃんとなる。
ガンダムAGEで最も重要なのが、第一部主人公のフリットだ。
彼は物語の冒頭こそ心優しい美少年だが、第一部の最後に思い人で
あったユリンという名の少女を失う。フリットを庇って戦火の凶弾に
倒れるのである。思い人の死は彼の人生に大きな影を落とす。
第2部・第3部で大人となり、軍の最高司令官となった彼がとる問題行動が
本作の醍醐味でも、あり元凶である。
フリットの問題、その最たるものが孫のキオに関する教育。
第3部に入り、丸くなって家族大好きおじいちゃんになっているかと思いきや
孫のキオに与えたお手製のゲームはガンダムの操縦訓練装置であり、キオを戦場に送り込む気満々。あげく「撃つ時はコックピットを狙え」「捕虜はみな死刑じゃ」など人権無視のとんでもない英才教育を孫に施している。
初恋の人を殺されたとはいえ、孫の代でも敵勢力の殲滅せんとするその根性。
昨今のナヨナヨしたガンダムのパイロット達に見せてあげたい苛烈さである。
次に語るのは、そんなとんでも教育を施された孫のキオ。
彼はこの作品を終戦に導く救世主。
登場時は自分の銃撃で人を吹き飛ばしても
「ゲーム(訓練装置)と同じだ!やったよ!じいちゃん!」
と楽しげであり、戦争とゲームの区別がついて無いのかな?と思われる場面がある。13歳という年齢を考えれば仕方がないが、なかなかにサイコ味の強い発言。
おじいちゃんの教育大成功といえよう。
しかしこれを許さなかったのが、敵勢力の首領。
物語終盤、キオは敵勢力こと〈ヴェイガン〉に捕まり、敵の本拠地で過ごすことに。そこでキオが見たものは、敵もまた人間であったということ。フリットおじいちゃんから化け物扱いされていた彼らは、単に〈火星に移住して困窮した人類〉であること知る。
同年代の少年ディーンやその妹ルウとの交流で、彼は考えを改めていく。
端的に言えば、敵の本拠地にいた儚げで病弱な美少女にほだされる形に。
砂漠の遭難者に水を与える様に、戦火の少年に薄幸の美少女を与える。
これに落ちない男子はいない。
彼はまんまと不殺主義に目覚め、戦争を終わらせるべく救世主となっていくのだ。手のつけられない敵のエースパイロットを本拠地に呼び寄せて懐柔する。
ヴェイガン首領の手腕は実にお見事である。
最後に語るのは、フリットおじいちゃんの息子であり
救世主キオのお父さんであるアセム・アスノ。
彼は天才発明家兼、軍の最高司令官であるフリットが父で
いずれ救世主になる天才パイロット、キオを息子に持つ。
そんな優秀な2人に挟まれたアセムだが、彼はキオが生まれた後に突如として失踪する。物語終盤にフリットとキオと再開するが、アセムはなぜか海賊となって、敵味方問わず略奪行為を繰り返している。
「・・優秀な身内がいるとキツいよな。グレちゃった?」
当時そう思った視聴者は私だけではないだろう。
だがそれも仕方がないと思える理由がある。
アセムがメインの第2部では、彼が学生からパイロットになる過程が描かれる。同級生女子と親友との三角関係、その親友が敵のスパイだったこと。
本作エースパイロットの必須能力である〈Xラウンダー適正〉が無いこと。
〈Xラウンダー適正〉が無いことで父親から相手されないこと
など見るも涙、語るも涙の鬱屈とした青春が描かれている。
視聴当時学生だった私は「何も音信不通になることないやん」と思ったものだが
会社員になった今だからこそ彼の気持ちがわかる・・。
結婚はしてくれたけど、自分が一番好きか疑わしい嫁。
スパイだった親友は敵勢力のエースになり
父親は自分に失望して相手をしてくれない。
それでも「一番にはなれないけど、できることがある」と軍に入隊するアセム。
そうやって頑張っていた矢先、慕っていた上官が戦死。
それでもと踏ん張っていた矢先、自軍に敵の内通者がいることに気づく。
そんな中、嫁は子供を出産。
平均台の上を一輪車で渡りながらジャグリングをしている人を蹴飛ばすが如し。
これ以上頑張り様が無い人に、さらに仕事を振るかのように。
アセムのメンタルは限界寸前。
ある日突然全てが嫌になって、海賊にもなろうというものである。
一応海賊行為をやっていた理由は説明されるが・・13年間も音信不通だったこと
からして、全て放り出して逃げ出したくなる気持ちもわかる。
これ以上頑張れない時に限って増える仕事、責任。
頑固で考えを変えない上司、自分ができなったことをサラリとこなす新入社員・・。彼はまるで、現代社会の会社員を写した鏡である。
以上、3人の主人公について語ったが、本作品には他にも魅力的な
キャラクターが多数いるため、ぜひ時間のある時に視聴してみて欲しい。
根暗なパイロットが多いガンダム作品において、珍しく明るい登場人物が多く
ストーリーも非常もわかりやすい。ガンダムシリーズ特有のシリアスな雰囲気
や複雑な展開はないが、頭を空っぽにしてみれる作品が好きな方はぜひ。
2024年12月現在、UーNEXTにて配信中。