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涙はマロウティーのいろ、の日。
2023 6.10
夜明けに起きる。
梅雨の晴れ間は
園芸者にとっては、宝石だから、
鳥たちも、
それを知っているから
美しい囀りで、
わたしを起こしてくれた。
去年の5月ごろ植えた
2年目のコモンマロウさんが
冬を越して、逞しくなって
今年は花茎を増やし、
花をたくさん、咲かせた。
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葉の葉脈にも、紫が見える。
この花で、お茶を淹れる、と
ブルーのお茶、になる、と聞いた。
そこへ、檸檬を搾ると
ピンクになる、とも。
花を摘んで、乾燥させて
マロウ・ブルー・ティーの
茶葉をつくると、
喉に良い効能などと共に
一年じゅう、楽しめる、とも。
わたしは、お花にそのまま
湯を注いでみることにした。
梅雨晴れの朝には、
それが、似合う、と。
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亡き母が刺繍をほどこしたクロスを敷いて。
ダリアさんたちを活けて
マロウさんの花をみっつ。
湯を注いで待てば、
みづうみいろのtea.となった。
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幼いころ、
涙はこんないろをしている、と
思っていた。
瞳から、みづいろの涙が
頬をつたう、と信じていて
ちいさな瓶に
それを溜めてみたい、と
思ったことがあった。
泣いたときに、
試してみたけれど、
瓶に溜まるほど
涙は出ず、
瓶のツメタサだけが
頬に残った。
そんな大昔のことを
思い出しながら、
みづいろのお湯、を、飲んだ。
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さて、
ヒトリのお茶会が終われば、
庭しごと、で、ある。
庭の東南側の奥の奥は、
ナンニモナイトコロで、
何年も花さえ咲かせない、
柚子の木が、ぽつり立っている。
そこは、隣家との境でもあり
壁近く、ということもあり、
日当たり悪く、
近くにある柘榴の木と
台湾椿の木と夏椿の木とで、
お日さまのひかりを奪い合い、
枝がねじくれて
樹形も、どこか悲しげ、
なのだった。
そして、その下は暗く、
じめじめして、
ギボウシがかろうじて、
生き残るのみ、の
更に《ナンニモナイトコロ》だった。
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2020年ごろのナンニモナイトコロ。
それでも草を抜き、ヴィオラなどを
植えてみたりしていた。
柘榴の木は、昨年、低く斬った。
今年は、柚子の木を斬ることにした。
木の棘が、するどく、
そこへ行くたびに
なんどか、腕や指を
ひっかきそうになり、
剪定にも、
難儀をしていたので
新しい枝に生えた棘が
鋭く硬くなるまえに、と
作業をした。
葉をとりのぞき、
枝を細いものから、切り
太い枝から、棘を全部折り、
と、昼過ぎまでかかった。
そして、いつも
思うことを、思った。
『おとうさん、どうして
こんなにたくさん、木を植えたの?
みなが枝をねじくれさせて
それでも、尚、日当たり悪くて
花もつけられなくなるほどに
密に、植えてしまったの?
わたし、ほんとうは
斬りたくないのよ』
そして、また、
いつも思うことを思った。
『木がイキイキとたくさんある、が
お父さんの庭、だったんだよね。
それを夢見た、のよね』
母が亡くなってから、庭に
木をどんどん庭に足していった父。
それは、きっと
やっぱり、《再生》を
願っていたのだろう。
今のわたし、みたいに。
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母が愛した草花は無くなって
木と、宿根草だけが
寂しく、生えていた。
柚子の木を幹だけ残して、
低く斬り終えた。
そのあと、雑草抜きをかねて
周辺の土をシャベルで
掘り起こした。
深く掘れた場所には、
抜いた花茎などを庭の隅で
干していたものを、埋め、
糠も足し、上からまた
土をかぶせたり、した。
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が、まいにち、年を取るので
いちにちでも若いうちに、と
作業をこつこつ、すすめる。
すぐに、午後も過ぎていった。
泥だらけ汗だらけになったので
風呂に入り、湯に長く浸かった。
髪を乾かしてから、庭をめぐった。
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涼しげ、で、良い。
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蕾にいろがつきはじめた。
日暮まえ、夫が、
車で、来てくれた。
ひと月ぶりに、庭を見て
よくがんばっているね、と
ほめてくれた。
ふたりで、バスに乗り
馴染みの中国料理店に行った。
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また、庭での
いちにちが終わる。