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ラーメンと悟り

ラーメンを禁止していた。正確に言うと小麦を。
あと、チョコレートと焼肉。塩コショウ、醤油以外の調味料。

理由はシンプル。夏が来るから。太ったから。
好きな人に会いたいから。
筋トレのやる気が起きなくて、ダラダラあまりにも適当な食事制限をしていただけ。

ついに解禁してしまった。
いや、解禁じゃなく我慢が頂点を突き抜けて豚骨ラーメンが頭を支配していたからである。

ずっと我慢していたラーメンを一人で食べに行った。
大好きな一蘭。
実にラーメンを食べるのは実に3ヶ月ぶりだ。

彼と暮らしていた時は、毎日のように夜食にラーメンを食べていたから3ヶ月我慢したことは、私的には実に偉業だ。

最後まで罪悪感と戦う。
一蘭の発券機にクレジットカードを差すと「エラー」が出る。
これは神様のお告げなのではないか。
「お前は一蘭を食べるに値するに人間ではない。精進しなさい」
ということか。

そんなことを考えていると
「申し訳ありません。そちらの発券機は現在クレジットカードが利用できなくなっていてこちらの発券機をお使いいただけますか?」

天使なのか、悪魔なのか。
若い店員さんに誘導された。
悪魔の監視の元、発券機を触る。
もう逃げることはできない。少しの抵抗でトッピングは我慢した。

例の味と向き合うカウンターに座る。
待つのも束の間、帳が開いてご対面である。

一口スープを啜る。
震えた。震えたと思う。
こんな美味しい???

こんなに美味しかったけ。

もう何もかも忘れて、目の前のラーメンに向き合う。27歳女。

「幸福」は最後の一滴までなくなり、空の器に残されたのは「罪悪感」だった。
ああ、本当に自分が嫌い。意志が弱い。

嫌いだ嫌いだ嫌いだ。
本当に嫌いだ。

一蘭から出て、コンビニに行ってチョコレートを買う。

嫌いだ。自分が嫌いだ。

チョコレートを口に含む。

家に帰って、お皿に冷凍米にキムチとマヨネーズをかけてチンする。

嫌いだ。嫌いだ。嫌いだ。

錯乱しているわけでは、ないはず。
ラーメンの脅威的な美味しさが咎を外してしまったのだ。
とにかくチートデイというものをこなした。
不可思議な気分。自己嫌悪と自棄と。

残ったのは、急な量に驚いた胃と浮腫んだ体である。

さすがに困惑し、今からやっても遅いという言葉がピッタリな腹筋200回をこなす夜になった。

次の日、スッキリ目覚めた。
こんなにスッキリとした朝はいつぶりか。
しかも、目覚ましよりずっと前に起きれた。罪悪感や不安は吹き飛ばされている。

これは一蘭の「幸福」のおかげか
はたまた、焦りの1ヶ月ぶり筋トレのおかげか。
チートデイというのも意味があるのだと悟ったこと。誰かに笑ってほしい春の日の話。


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