
LGBT問題をめぐる日本の現状まとめ
詳しい方々にお話を聞きつつ、情報をまとめてみました。
もし誤りなどあれば、ぜひご指摘ください🙏
【日本の背景】
●日本における性的少数者やその権利運動の歴史
日本は歴史的にキリスト教・イスラム教・ユダヤ教の国ほど性の規範に厳しくなかった。
歴史上の多くの男性権力者は、公に男性と性的な関係を持っており、実際のラブレターも多く残されている。
日本では同性愛が法律で禁止されたことは一度も無い。(1872年に外来のキリスト教文化の影響で肛門性交が法律で禁止されたことはあったが、たった10年で廃止された)
オカマやオネェ、ニューハーフと呼ばれるフェミニンな男性のタレントは昔から人気があった。彼らの中には男性同性愛者もいれば、そうでない人もいた。(例:美輪明宏、美川憲一、おすぎとピーコ、マツコデラックス)
以上のように、日本にはセクシャルマイノリティに対する偏見は西洋と比較すると少なかった。
少なくとも、日本では欧米のような性的少数者であることを理由とする殺人事件はほとんど発生していない。
1970年代、アメリカで起こったゲイリブ運動を日本に持ち込んだ活動家が存在した。
しかしアメリカのように激しい迫害を受けていない日本の性的少数者達の多くは、彼らの活動に積極的に賛成しなかった。代わりに日本の性的少数者たちはゲイタウンで彼らの独特な文化を形成したり、マジョリティの社会の中に溶け込んで普通に生活していた。
アメリカのゲイリブ運動がトランス活動家やクィア活動家に乗っ取られるとともに、日本のLGBT活動家の多くもトランス活動家(&クィア活動家)に変貌した。中にはその変化に反発して、グループを離れ、今は彼らを批判している人もいる。「LGBTQでひとまとめにするのではなく、LGBとTQは分離させるべきだ」「特にQ(クィア)の視点が同性愛者の生活を破壊している」などという強い批判もある。
ソ連が崩壊するまで、日本の共産主義者や左翼の一部は同性愛者たちを「資本主義社会がもたらした退廃である」と攻撃していた。特に日本共産党はその機関紙である『新聞赤旗』で同性愛を強く批判していた。彼らは最近10年ほどは、LGBT権利運動の推進を主張しているが、過去のことを知っている人々はその姿を冷たい目で見ている。
一方で、1970年代に欧米からゲイリブ運動を日本に持ち込んでやっていた性的少数者には左翼思想の人が多かったという証言もある。これは市民運動からの流れがあったからだろうと言われている。
2001年に日本で人気だった学園ドラマ「3年B組金八先生」で性同一性障害(FtM)の学生のキャラクターが出演し、多くの日本人が性同一性障害という疾患のことを認識した。なお、この時のFtMのキャラクターに影響されて、日本でもFtMの患者の数が大きく増えたが、その中には性別適合手術を後悔してのちに元の性別に戻った者もいる。
2003年に性別適合手術をした人の法的性別変更を認める「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(通称:性同一性障害特例法)」が制定された。(詳細は後述)
約20年前から日本にもジェンダーイデオロギーが欧米から入ってきた。
最初にアカデミアに浸透し、その後、法曹界・行政・教育界にも徐々に浸透している。特にこの約5年間で侵食が顕著化した印象である。
約10年前からはLGBT活動家の動きが活発化した。2015年に超党派LGBT議連が結成され、そのメンバーには2003年に性同一性障害特例法を作成したメンバーも含まれていた。議連に対するロビー活動を行い、LGBT差別禁止法を制定することを目的として、同年にLGBT法連合会が結成された。LGBT法連合会の働きかけにより2016年にはLGBT差別解消法というLGBTへの差別を禁止する法律が国会に提出されたが廃案になった。
2016年にアメリカのヒューマン・ライツ・キャンペーン(HRC)を真似したwork with Pride(https://workwithpride.jp)という団体がLGBTフレンドリーかどうかの認定や格付け(PRIDE指標)を始めた。この団体の代表は、かつて電通という日本最大の広告代理店に勤務し、多くのメディアに強力なコネクションを持つ松中権である。彼は2013年にアメリカ国務省が主催するIVLP(International Visitor Leadership Program)でLGBT研修を受け、HRCのやり方を学んだ。
特に日本の企業に大きな影響をもたらしたのは2020年に開催された東京オリンピックである。
オリンピックに先だって2017年に発表された「持続可能性に配慮した調達コード」の中で、東京オリンピックにかかわる全ての企業がLGBT施策の実施を求められた。恐らくはその影響で、その数ヶ月後に日本の大手企業の連合体である経団連が、LGBTについてのダイバーシティ&インクルージョン施策を実施するよう提言を発表した。
また、東京オリンピックに向けて首都付近の自治体ではLGBT政策に力を注いだ。
(ただし地方自治体に対するLGBT活動家の侵食自体は10年以上前から始まっており、2012年には大阪市泉南市で性的指向や性同一性障害を含んだ条例が作られている)
2018年に日本の女子大学が未手術トランス女性の学生を受け入れることを発表したことをきっかけに、一般人女性の間でもトランスジェンダーに関する議論が活発化。その中で、「男性器のあるトランス女性と女性スペースを共用することには不安がある」と意見を述べた女性や性被害者らが「TERF」や「差別主義者」などと攻撃をされた。
2019年に日本の大手フェミニスト団体であるWAN(Woman Action Network)が「トランス女性に対する差別と排除とに反対するフェミニストおよびジェンダー/セクシュアリティ研究者の声明」を発表し、トランス女性を女性スペースから排除しないように訴えた。
このWANの理事長は日本で最も有名なフェミニストである上野千鶴子である。
国際的な人権団体であるヒューマン・ライツ・ウォッチが、2019年に日本にジェンダー・セルフID制度の導入を求める提言書を送った。
また2020年には日本の全ての女子大学に対して、トランス女性の学生を受け入れるように要請書を提出した。
このヒューマン・ライツ・ウォッチの理事は、日本で最も影響力のあるLGBT活動家と言われる柳沢正和である。彼はゲイの活動家で、ゴールドマンサックスの社員である。イギリスの一流経済誌であるファイナンシャル・タイムスでは3年連続で世界の影響あるLGBTエグゼクティブ100人に選出されており、米国大使館で講演を行うなど、アメリカとの関係が深い人物である。
2019年にLGBT法連合会が大手新聞社(毎日新聞)の記者と協力して「LGBTQ報道ガイドライン」を作成した。アメリカのGLAADのようなメディアコントロールを目的としていると考えられる。
https://lgbtetc.jp/wp/wp-content/uploads/2022/04/lgbtq-media-gudeline-2nd-edit-1.pdf
2023年6月に、アメリカの民主党バイデン政権からLGBTに関する法律を作るように圧力を受けた。その結果、「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律(LGBT理解増進法)」が制定された。制定当時、野党やLGBT法連合会は「LGBT差別禁止法」の制定を求めており、この法律については、「直接的な差別に対する罰則が存在しない上に、国がLGBTに関する民間の取り組みをコントロールしようとする内容だ」として反対していた。
2023年10月と2024年7月に出た判決により、日本の法的性別変更の制度に大きな変化がもたらされ、数十人のトランスジェンダーが性別適合手術なしで法的性別を変更している状況である。(詳細は次項)
現在の日本には欧米のような包括的差別禁止法は存在しないが、日本学術会議という公的な学者集団やトランス活動家たちは、日本に包括的差別禁止法を制定して、トランスジェンダーへの差別を禁止し、ジェンダー・アイデンティティに基づいた社会システムを構築しようと積極的に行動を始めている。日本の著明なトランス活動家の1人である群馬大学准教授の哲学者である高井ゆと里(ノンバイナリー自認の男性)は、2024年8月に、国連女性差別撤廃委員会(CEDAW)に対して、「トランスジェンダー女性を差別から守るために、反差別法(差別禁止法)を作る必要がある」という内容のレポートを書いてトランス活動家団体であるTネットに提出させた。
●日本における法的性別変更に関する法律
1950年代から日本でも性別適合手術が行われるようになった。
それと同時に、町中に性別適合手術を行った男娼が現れ始めた。彼らの外見や肉体は女性に類似していたが、法的には男性であった。
警察は彼らを取り締まりたかったが、日本の法律は女性の売春は禁止しているが、男性の売春は禁止していないため、逮捕することができなかった。
そこで警察は1964年に彼らに性別適合手術を行った医師を優生保護法(正当な理由の無い中絶や、生殖能力の剥脱を禁止する法律)に違反しているとして逮捕起訴した。この事件は「ブルーボーイ事件」と呼ばれている。(ブルーボーイは性別適合手術をしたMtFを指す俗語だった)
この事件の裁判では、適切な診療記録の記載を怠ったことと、麻薬の不適切な使用により有罪とされた。
日本の外科医たちは、警察に逮捕されることを恐れて、性別適合手術をしなくなった。
そのため性別適合手術を希望する日本人は、タイなどの海外で手術を受けるようになった。しかしそれは高額な費用がかかり、安全性に懸念があり、術後のフォローも不十分であった。
1998年に埼玉医科大学が性別適合手術を再開した。しかし、「健康な生殖器を摘出するのは違法ではないか?」という批判が起こり、訴えられる危険があったため、手術の合法化を求めて、埼玉医科大学の関係者が与党である自民党の政治家に相談した。
同時に性同一性障害の当事者たちも、性別適合手術を行った人々の法的性別変更を求めて、政治家に熱心に働きかけていた(当時の裁判所は性別適合手術をした人についても法的性別変更を認めておらず、戸籍性別の変更を求めて何人もの当事者が裁判を起こしても棄却された。その上で裁判所が申立人側に対して適切な立法を求めるように勧めていたという背景がある)。
その結果、2003年に、性別適合手術を行うことを条件として法的性別変更を認める「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(性同一性障害特例法)」が制定された。
この法律は「生物学的には性別が明らかであるにもかかわらず、心理的にはそれとは別の性別であるとの持続的な確信を持ち、かつ、自己を身体的及び社会的に他の性別に適合させようとする意思を有する者」を対象としており、彼らが法的性別を変更するために以下の5つの条件を求めている。
1.18歳以上であること 2.現に婚姻していないこと 3.現に未成年の子がいないこと(当初は「現に子がいないこと」であったが、2008年に緩和された) 4.生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること 5.その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること。
法律制定後の20年間で約1万人の性同一性障害患者がこの制度を利用して法的性別を変更している。
この時に性同一性障害特例法の制定を求めた人々の一部はのちにトランス活動家となり、政治家や法律家とのコネクションを活用し始めた。一方でそのような動きに対して「性同一性障害特例の意義を無効化してしまう動きだ」と反発する人々もいる。
約10年前からトランス活動家が「法的性別の変更のために手術が必要なのは人権侵害である」と主張し始めた。
特に国際人権団体であるヒューマン・ライツ・ウォッチの日本支部代表である土井香苗氏を中心に、「性別適合手術は断種手術」であると強い批判を始めた。北欧においてはこの理屈によって法制度が一気に変更され補償問題にまで発展することになったので、その手法を取り入れたのではないかと言われている。前述した通り、このヒューマン・ライツ・ウォッチの理事には、日本で最も影響力のあるLGBT活動家と言われる柳沢正和もいる。
2016年に性別適合手術を受けていないFtMが法的性別の変更を求めて裁判を起こしたが、最高裁まで争った結果、2019年に裁判所は手術を求めることを憲法違反ではないと判断し、その訴えは退けられた。しかし、その判断は2023年に覆った。
2015年にアメリカ国務省が主催するIVLP(International Visitor Leadership Program)でLGBT研修を受け、裁判をLGBT権利運動の武器として利用することを学んだ南和行弁護士は、2019年に性別適合手術を受けていないMtFが法的性別変更ができることを求めて裁判を起こした。
これらの裁判にはGID学会の中塚幹也理事長が関与している可能性があり(自分の患者を弁護士に紹介した可能性)、また中塚理事長は2021年にGID学会からの提言として「1.現に未成年の子がいないこと 2.手術要件の撤廃 3.法律の対象者である性同一性障害という名称や概念の変更を求める」という内容を発表している。
2023年10月に最高裁判所は「4.生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること」は憲法違反であるという判断をくだした。これにより、FtMは完全に手術無しで法的性別を変更することが可能になった。(実際、この判決の以前から、内性器の摘出だけでFtMは法的性別の変更が可能であった。その理由は陰茎形成術があまりにも過酷すぎると判断されていたからである)この判決の後、50人を超えるFtMが手術なしで、生殖能力を保ったまま、法的性別を男性に変更している。ある個人クリニックは、精神科医の介入なしで、1回のオンライン診療だけで法的性別を変更するための書類を数多く作成していると自ら宣伝している。
2024年7月には「手術無しでも女性ホルモンの投与によって外観要件が満たされている」として、高等裁判所で性別適合手術を受けていないMtFの性別変更が許可された。その後、複数の人物が同じような条件で法的性別を男性から女性に変更した。
●現在の状況
日本はイギリス等のように、性別適合手術なしで医師の診断書のみで法的性別を変更できる国になろうとしている。
そのため、欧米のような混乱を避けることを目的に、以下の事柄を求める声がある。
(1)女性スペースを保護するための法律の制定。
(2)女子スポーツを保護するための法律の制定。
(3)法的性別を変更するための医師の診断の厳格化や、診断基準の厳格化。
(3)については特にトランス活動家に反対するGID当事者から要望があがっている。
日本の与党である自民党の国会議員のうち約100人が集まって「全ての女性の安心・安全と女子スポーツの公平性等を守る議員連盟(通称:女性を守る議連)」という議員連盟を作り、現在(1)に関する法律案を作ろうとしている。
ただしこの法律案については、性別適合手術を行って法的性別を女性に変更した者には女性と同等の権利を認めるという現状を追認する内容となっている。
これに対して、女性たちの中には反発し、女性としての権利は生得的女性にのみ認めるべきであると主張する人々も存在する。
一方で、女性の権利を保護するべきだと主張している国政政党は、2003年に特例法を制定した自民党以外には存在しないという厳しい状況である。
特に野党第一党である立憲民主党と、日本共産党、社会民主党、与党と連立政権を組んでいる公明党は、トランス活動家のスポークスマンと化している。