『初代ゆえの完成度』ふたりはプリキュア 詳細レビュー
どうもこんにちは。
最近ふたりはプリキュア(以下初代)とふたりはプリキュアMaxHeart(以下MH)を通してみたので、レビューにしたいと思います。
この二つはつながりのある作品と言う関係にありますが、今回は初代のみを取り扱います。
先に注意喚起をしておきます。
本レビューでは初代に関して否定的な見解を示しています。そのため、そういった内容を目にしたくない方はブラウザバックをしてください。下に余白を作るので、見たい方はスクロールお願いします。
それではレビューに入ります。
キャラ描写 3/30
歴代でもトップクラスの癖の強さ。正義感の強さや、多感性ガールズに対し好感を持てるか否か。また、成長描写に乏しいのも難しい所。
演出 8/20
日常シーンで作画崩れは起きていませんが、戦闘シーンがあまりにも単調なところが多く飽きます。
話の構成 22/30
25話までの出来を評価するなら28点ぐらい。ただ、それ以降がマンネリ化しているため大幅減点。
個人的評価点 7/20
ごめんなさい、きついです。
総合得点
40/100 凡作
キャラ描写
本作の一番つらいところはここです。二人とも普通の中学生にもかかわらず、普通じゃない要素が多すぎる。
別にラクロスのエースをやっていること、頭脳明晰と言う部分については(普通じゃないですが)女子中学生の枠に収まると思います。問題なのは、あっさり敵と肉弾戦を行うこと。
話の流れを説明すると、主人公であるなぎさの元へ降ってきた妖精メップルが、片割れのもとへ連れて行けと言われたことがきっかけ。そこで敵に出会うものの、自分の妖精を奪われてしまいます。
ですが、片割れの妖精がほのかという女の子とともに現れ、渡してはいけないといわれます。そして、なぎさは自身の持つラクロスの道具でひっぱたくことで奪い返し、敵が本気を出したところでプリキュアに変身……
と言う流れですが、いかがでしょうか。
筆者はこの物語を初めて見た時、『なんで?』と思いました。
異常な成人男性が妖精をよこせと言われ、奪われてしまったなぎさ。そこまでは納得がいきますが、そこにラクロスの道具を使って奪い返すって意味が解らないです。
そもそも数十分前に降ってきたものを、なぜそこまでして取り返したいのか。もう一人の妖精が『取り返す』という発言がありますが、その妖精に至ってはここが初対面です。
つまり、なぎさとほのかからすればそれを渡さない理由がないと言えます。見た目が恐ろしいから、と言うのは理由になりません。むしろおとなしく渡すべきでは?
これに対して、仮説を立てるなら一つ。なぎさは正義感が非常に強く、思い込みが激しい性格。これにつきます(そしてこれは公式サイトでも似たような表現がされています)。
碌に事情も分からぬまま成人男性にラクロスの道具で攻撃する時点で正義感が強いといえるでしょう。普通の女の子だったらその時点で逃げます。
そして、思い込みが強いというのは妖精の言葉を完全に信じ切っていることです。例えばその男性がSPのような存在で、妖精を守る存在と言う可能性を考慮しなかったのでしょうか。しなかったのでしょうね。
この時点でなぎさのキャラ造詣が見えてきます。私が無理だといった理由はここにつきます。
そして、この描写は改善されるどころか悪化されます。よくわからないものに共感し、それを守るために戦おうとします。だから多感性ガールズと名付けました。
他にも描写があまりにも雑です。例えば敵が出ることに対し「ありえな~い」と言っており、嫌っている割には戦うことを躊躇しません。
本当に嫌ならその敵に妖精を渡すべきではないでしょうか。敵に渡すと世界がどうのこうのと言われるわけですが、そんなもの信用できるわけがありません。
そもそも、妖精が来たことで自分の日常が崩れているのだから渡さない理由がありません。(序盤メップルがなぎさの授業を妨害するなど、例を挙げたらきりがない)
他にはただ憎たらしいだけの描写しかない弟が傷つけられて怒るなどなど。本当によくわからないものに共感しています(しかもこれは次回作MHでも改善されてない)。
これはもう一人のほのかにも共通しています。一見控えめな性格に見えますが、強盗が入ってきた時に説教するなど意味不明な行動をとります。いくら間違っていることに黙っていられないといっても、普通強盗に説教なんてしません。
これに関して、より正確に考えるなら『大人の事情』というやつでしょう。「女の子の自立」を描いておきながら、主人公たちが大人に振り回される……滑稽としか言えません。
数少ない評価点は二つあります。
歴代でもプリキュアの関係性が微妙な状態から始まる
敵役の描写について、比較的完成されている
1について、基本的に他作では最初から仲良しorすぐ仲良しになるというのがスタンダードです。スイプリや5のように微妙な関係から始まることもありますが、その性質は大幅に異なります。
5では、五人と言う数が重要です。自分にとって仲の良い人がプリキュアを誘っています。一方初代は二人しかいません。自分と相手一人。そのため、絆を深める必然性ができます。
スイプリも二人ですが、彼女たちは元々幼馴染。さらにもともと仲が良かったという関係なので全くの別物です。初代は性格も育ちも趣味も違う二人がプリキュアを通して仲を深めていく。
このように、初代だけしか楽しめない要素も多いのが特徴です。特に喧嘩の描写はリアルで、ここは評価の高いポイント。
また、お互い独立したコミュニティに所属しているのも良いところです。後期の作品ではプリキュアの活動がメインになる傾向にあります。しかし本作では、別々の部活に入りそれぞれ活躍している所から始まるわけです。
女の子の自立を描くという意味では、これ以上ないほど描写できていると言えます。これでプリキュアとして戦ってなければ……
2の敵描写ですが、今作は敵幹部が非常に多いです。二十五話までで五人。さらに三人追加されるため、歴代でも多い方でしょう。その一人一人にどういう戦法を取るのか、と言う部分に個性を感じられます。そのため、戦闘シーンに関しては楽しめる要素もありました。
まとめると、初代でしか楽しめない要素も多いわけですが、とにかく二人のキャラの癖を楽しめるか否か。ここに本作を受け入れられる土壌の有無を試されます。
演出
まずはいいところから指摘しましょう。
歴代と比べ、肉弾戦の頻度が多い
敵幹部との戦いが多い
バリエーションが豊富で、場所、戦い方もそれぞれ異なる
この時点で変身等については完成されている
本作の最大の見どころである、肉弾戦要素に関しては高く評価できます。実際これ以降の作品になると変身バンクや、アイテムを駆使して戦います。
しかし、初代とMHはその要素がほとんどないため攻撃手段が肉弾戦です。そのため、その部分を楽しみたいという人にとっては需要を満たせると思います。
他にも敵幹部を出し惜しみすることなく出すこと、戦闘バリエーションが豊富なことなど褒める点が非常に多いと思います。
ではなぜこの点数にしたのか。大きく分けて理由が二つあります。
戦闘シーン(特にピンチの描写)が単調
作画が古い
二つ目の作画が古いはしょうがないですが、一つ目のほうはいただけません。敵幹部の攻撃手段が単調で、「手から風を出す」以上です。もちろん他の手法もないわけではないですが、ピンチの時だけなぜか単調です。これでは盛り上がるものも盛り上がりません。
特に一つ目のほうは肉弾戦が多いという部分を台無しにしています。さすがにプリキュアを殴るというのはまずいでしょうが、もう少し良い表現方法を練ってほしいところです。
話の構成
こちらは打って変わって評価が高いです。
理由はいたって単純で、敵幹部がどんどん変わるから。テーマとかそういった小難しい要素は抜きにして、単純に話として面白い。
演出で述べた通り、敵幹部がプリキュアに対しどのようなアプローチをとるかが異なります。例えば、
・正々堂々とプリキュアと戦う敵
・力づくで奪おうとする敵
・プリキュアの日常に忍び込もうとする敵
・変装をして奪おうとする敵
・絶対的な力でねじ伏せようとする敵
などなどです。これに関しては様々なバリエーションがあって楽しめました。問題なのは後半から。
敵キャラが固定で、アプローチも同じ……という展開が続きます。話数が少ないため、飽きる前に最終決戦にたどり着きましたが単調なきらいはあります。この問題点はMHにも継続してしまいます。
個人評価点
ここについて述べる前に、私のプリキュアのキャラ評価スタンスを述べておきます。基本的に私はキャラがかわいいといった部分では評価しません。なぜなら主観が混ざるからです。
では、何を評価すると言えば何度か述べている通り、
・どうしてプリキュアになったのか
・プリキュア活動を通じてどのような価値観が養われたか
・最終的にどのような価値観を持ったのか
この三つを評価しています。
古代や中世のプリキュアは、巻き込まれたからプリキュアになるというケースが多いです。そのため一つ目はあまり評価しませんが、二つ目三つ目はどの作品でも重視しています。
そのように、女の子の心情をきちんと描写してこそ、女の子の自立を描けると私は信じています。女の子が戦うことは本質ではなく、女の子が自分で道を考え、選ぶことこそ本質です。その過程と結果を見せるのがプリキュアだと思います。
その価値観と照らし合わせると、本作は私とまるで合わない。
結局誰かからプリキュアになれと言われるがままになり、そのままいわれるがままに戦う。最終決戦も巻き込まれて戦うだけ。そこに価値観は重要視されない。
途中途中友達が傷つけられることから、戦わなければならないと考えることもできます。しかし、それならさっさと妖精を渡せばよいだけです。特にメップルに関しては初期は小憎たらしいだけ。
ヒーローものと考えれば、本作はそこまで気になりません。ですが、近代プリキュアから見た私からすると、厳しいと言わざるを得ません。
あと、「プリキュアマーベルスクリュー」の時の掛け声もその説を押しているのではないでしょうか。「プリキュアの美しき魂が、邪悪な心を打ち砕く」と言いますが、これこそまさにヒーローものです。
敵が悪で、プリキュアが善。そういった対立構造で物語が進む以上、プリキュアが戦う理由や起こる理由なんていらないと考えたのかもしれません。
なぜなら、悪は倒すための存在で、自分たちがそれを倒す善。それ以上の価値観は不要ということです。私としては、その価値観は結果的に女の子の自立どころか依存でしかないと思いますが。
総評
筆者の中でワースト3プリキュアですが、決して悪い作品ではありません。楽しませようとする心意気を感じる作品です。ですが、その楽しませようとする部分が今のプリキュアとは別の路線です。
そこを斬新と取るか、あるいは違和感として残るかが本作の評価の分かれ目でしょう。
評価 40点 凡作
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