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英文解釈と私〜ビジュアル英文解釈PART1&2〜

・はじめに

以前、大学の友人と英文解釈の話題で盛り上がったとき、自分が英文解釈にのめり込むきっかけとなった参考書はなんだろうかと記憶を掘り返してみた。英文解釈系の参考書で初めに手をつけた本は中原道喜が著した『基礎英文問題精講』だった。ただ、この参考書で英文解釈に沼ったというわけではなかった。英文解釈の面白さに気づかせてくれた参考書は駿台文庫から発刊されている、伊藤和夫の代表的著作の一つ『ビジュアル英文解釈PART1&2』であった。

『ビジュアル英文解釈PART1&2』は2分冊で合わせて500ページ弱の参考書であるが、じっくり取り組めば英文解釈のイロハを徹底的に叩き込んでくれる優良本なのだ。この本の特徴として、プラトンの対話篇よろしく、先生と生徒の対話がなかなか面白い。イラストでは優しい笑みを浮かべてはいるが、割と辛辣なI先生。これから英文を本格的に取り組まんとするG君。英語には少し自信ありげなR君。PART1の対話部分は主にこの3人の対話で進行していくが、PART2でWさんという女の子が登場する。私はこの女の子が好きだし、ポリティカル・コレクトネスをすでに伊藤和夫は意識していたのだ!

ちなみにPART2の初めの対話部分でR君とWさんが揉める場面がある。すかさずI先生は「まあ、学生紛争内ゲバはそのくらいにしてもらおう」と釘をさす。「これ今の学生に通用しないネタだよな」とか思いながら、私は一人でくすくす笑うのだ。

・構成

この参考書は一つの英文に対して焦点研究対話の3つからなる。例えば一番最初のテーマは「主語の発見」である。焦点では、(1)The house stood on a hill.(2)In the house stood a man.という2つの例文が提示され、「前置詞のついた名詞は文の主語になることができない」というルールを打ち出す。ルールは全部で11個あり、これを徹底的に叩き込むことによって英文に対する姿勢を揺るがないものにさせる。

研究では、実際の英文に対する仔細な分析が加えられる。まさに一文一文丁寧に解説してくれるのだ。焦点で確認したルールを実際の英文に適用させ、読者にそのルールを使える知識として習得させる。構文解析もかなり詳しく行われる。対話部分でR君が詳しすぎるんじゃないかとツッコミを入れるほどに。最初はあまりにも細かいから鬱陶しく感じる人もあるかもしれない。しかし、構文をとっていく作業を何度も何度も繰り返すことで、ごちゃごちゃに見えていた英文が一つの構造体として見える日がやってくる。必ず。

対話では、はじめにでも触れたように少し肩の力を抜いて読めるパートである一方で、学習者が疑問に思ったり、躓いてしまうポイントが凝縮されている。「主語の発見」の対話部分では、例えば、Farmersを「農夫」と訳すか、あるいは「農夫たち」と訳すかの問題を取り上げていたりする。思わず見過ごしてしまう問題、場合によっては瑣末な問題に思えるかもしれない。しかし、初学者はここの訳し方で減点されてしまうかもしれないという不安を抱くこともある。こうした疑問に丁寧にI先生は答えてくれる。I先生が実際にどのような回答を与えているかは本書を買って確かめてもらいたい。

・進め方

この参考書の進め方としてはこれは私の全く個人的な経験をお話しする他ないが、何か参考になるところがあればぜひ取り入れてもらえたら嬉しい。ところで私はドイツ語学者の関口存男にかなりの影響を受けている。関口存男がどんな人物か知っていれば、これから私が実際にやっていた勉強法なるものが如何なるものか想像できよう。そもそもそれが勉強法と言えるのかどうかもわからない。即ち、クソ勉強である。つまりは強姦なのです。クソ勉強も強姦も関口存男が実際に使っている言葉です。参考書を徹底的に犯すのです。もっと一般的な表現を用いるなら、参考書を汚すのです。私の使っていたビジュアル英文解釈は何か、こう、例えるなら加齢臭の匂いがするのです。クソをしにいくにも、自慰行為をする際にも常にこの参考書は私の傍にあった。だから臭いのです。ただ、関口存男のいうクソ勉強には程遠いでしょう。クソをする時も、自慰行為をする時もビジュアル英文解釈に登場した英文が頭を擡げると、辞書を引きその類例を参考書に延々と書き込む。とにかく辞書を引きまくるのです。そして類例を探し、それをメモる。こうしていくうちに文法やら構文が少しずつ自分の中で体系化していく。これが実に気持ちいい。辞書を引きつつ、文法書も引く。私が愛用していたのは『ロイヤル英文法』と『英文法解説』の2冊。この英文との絶え間ない知的格闘が私の青春。結論、辞書と英文法書を引きまくれ!これにつきます。


so that…
感嘆文
時を示すas


・ビジュアル英文解釈に出会って

私の英文への根幹的態度は、このビジュアル英文解釈に依っている。この参考書の中で伊藤和夫は様々な金言を残している。
訳せたから読めたんじゃない。読めてるから、必要な場合には訳せるんだ」「同種の文章や同じ熟語のいろいろな用例を一枚の紙に書き出して眺めてみるのは有効な勉強法だよ」「いいかい、文と文の間、ある文の終わりのピリオドと次の文のはじめの大文字の間の空間は、何も書いていない空白にすぎないけれど、そこは完全な真空、つまり無じゃないんだ。前文が何を言っており、あとの文に何が書かれているかに応じて、そこにはある意味が感じられる
数ある言葉の中でもここにある言葉は私の心の奥底に染み込んでいる。この参考書に出会うことがなければ英文解釈に没頭することはなかった。英文解釈こそが自分にとっての最高の趣味になることもなかった。

おまけ「僕はもともと愛国心はあまりないほうだからね



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