「サムライ・スタートアップ:戦国武将の企業戦略」12/N
第10章: 大手ミライテックの商談、そしてまさかのコンペ
藤井はまるで大物を釣り上げた漁師のような表情で、ドアを勢いよく開けてオフィスに戻ってきた。右手にはミライテック社の名刺が握られており、その顔にはニヤリとした得意げな笑みが浮かんでいる。
「みんな、聞いてくれ。サムライ・スタートアップに大チャンスが舞い込んだぞ!」と藤井が高らかに宣言する。
信長がすぐさま反応する。「なんだ、藤井。大物を仕留めてきたのか?」
「その通り!相手は、あのミライテック社だ。AI分野の大手で、今一番のホットなプレイヤーだ。うちが本気で狙うべきビッグクライアントってやつだよ」
秀吉が目を丸くして、藤井を見やる。「マジかよ!ミライテックといえば、うちのサムライAIが採用されたら、それこそ一気に全国区ってやつじゃんか!」
藤井が誇らしげに頷く。「それだけじゃないんだよ。どうやら今回の案件は、次世代のAIソリューションを求めていて、選ばれた会社には莫大な予算が組まれるらしい」
家康も軽く驚きの表情を浮かべた。「それが実現すれば、うちの資金繰りもだいぶ楽になるな」
信長が勝利を確信したように椅子に深く座り、腕を組んで頷いた。「そうか、これでうちも一気に業界のトップに躍り出ることができるぞ。で、いつやるんだ、その商談は?」
藤井が少しばかり複雑な表情を浮かべる。「その前にひとつ伝えておきたいことがある。今回のプレゼン、俺たちだけじゃなくて…どうやらコンペ形式でやるらしいんだ」
「…コンペだと?」信長が一瞬戸惑いの表情を見せるが、すぐにニヤリと笑った。「面白いじゃないか!敵が何社いようと俺たちが勝てばいいだけのこと」
「いや、そう簡単な話じゃなさそうなんだよ」藤井が眉をひそめて言う。「今回のコンペ、どうやら業界のトッププレイヤーたちが呼ばれているみたいでさ…もしかしたら、あの風林火山もいるかもな」
その言葉に、部屋の空気がピリッと張り詰めた。
プレゼンに向けての作戦会議
信長が即座に机を叩き、「よし、すぐに作戦会議だ!」と声を上げた。
その日の夕方、会議室にメンバーが集まり、藤井が大きなホワイトボードの前でマーカーを握りしめている。信長、秀吉、家康もそれぞれの思惑を胸に、やや緊張した面持ちで席についていた。
「まず、我々の強みを再確認しよう」と藤井が口火を切る。「俺たちのサムライAIは、人間らしい共感と成長を伴ったAIだ。冷徹な判断をするだけじゃなくて、ユーザーとともに学び、絆を育むことができるってのがポイントだよな?」
信長が頷きながら、「ふむ、だがその“人間味”が逆にネックになる可能性もある。敵が合理性を重視した冷静なAIを持ってくる可能性があるからな」と冷静に指摘する。
藤井は少し考えたあと、「確かにそうかもな。でも俺たちが提供するのは、ただのAIじゃない。現代に蘇ったサムライ魂そのものだろ?」と自信満々に言い放つ。
家康も口を開いた。「冷たい機械のようなAIより、うちのAIは顧客とつながり、心の距離を縮められる強みがある。ただ、その説明をどう効果的にプレゼンで伝えるかがカギだな」
秀吉は手を挙げて、「じゃあ、ちょっと感情移入させるようなエピソードを組み込むのはどうだ?人間味が伝わりやすくなるようなさ」と提案する。
信長がそのアイデアに目を輝かせ、「いいぞ、秀吉!人間味を前面に出すことで相手の感情に訴えかける。まさにサムライの戦い方だな!」と同意する。
しかし、家康は少し考え込んでいる様子だ。「ただ、相手が論理と効率を前面に出してくると、こちらの感情推しが逆に弱みになる可能性がある。どうにかしてバランスを取らないと」
藤井は家康の指摘に頷き、「確かにそうだな。ちょっとエモーショナルすぎると引かれちまうかもしれない。となると、ビジネス的なメリットと感情的な価値をどううまく融合するか…そこを考えないとな」
その言葉に、信長が腕を組んで目を輝かせた。「よし、俺たちで理想のサムライAI像を描くぞ。秀吉、家康、藤井、準備はいいか?」
メンバー一同が頷き、白熱した意見交換が続いた。彼らはプレゼンのシナリオを練り、どんな質問にも対応できるよう、隅々まで作り込んでいった。
こうして、サムライ・スタートアップの面々は、ミライテックとの運命の商談、そしてまさかの風林火山との対決に向けて、全力で準備を整えるのだった。
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