「サムライ・スタートアップ:戦国武将の起業戦略」4/N
第3章:給料を決めるのは大変よ!
サムライ・スタートアップ株式会社が資金調達に成功した後、信長、秀吉、家康は、事業を推進するために必要な従業員の給料を決めるという新たな課題に直面した。彼らのチームには、島左近、黒田官兵衛、竹中半兵衛の3人が加わっており、各自の専門性を生かすことで会社に貢献することになっていた。
信長が会議室に集まったメンバーを見渡し、「さて、給料の話を始めるぞ」と言った。その声には、武士のような威厳があり、全員が緊張した面持ちで彼を見つめた。
「まずは、お前たちの能力に見合った給料を決める必要がある。だが、無駄に高くはできん。経営者としての苦悩を理解してほしい」と信長が続けると、秀吉がすかさず口を挟んだ。
「そうですね、信長様。私たちの役割を考えれば、適正価格は設定できるはずです。例えば、黒田官兵衛には戦略的思考のため、他の者よりも高く評価されるべきです!」
「その通り、秀吉」と信長は頷きながら言った。「しかし、俺たちの給料は、戦の勝利の数に比例して決まるべきだ。だから、私が給料の最高額を提示するぞ!私は70万円で!」と宣言した。
「え、70万円ですか?それ、高すぎじゃないですか?」と島左近が驚いた声を上げた。
「当然だ。CEOの給料が他の者より低いわけにはいかんからな!」信長は自信満々に言い放った。
ここで、家康が静かに手を挙げた。「私の給料は60万円とさせていただきます。CFOとして、会社の財務を安定させるための重要な役割を果たしますので、これが適切です。」
「60万円?お前、はぁ?高くねぇ?」信長は目を細めながら反論した。「君は慎重にお金を管理するからと言って、何でもかんでも高くしていいわけじゃないぞ。」
「いや、信長様。私の戦略的なアプローチがなければ、会社はあっという間に赤字になるでしょう。私の給料は、未来の利益を見越してのものなのです!」家康は反論するが、その言い回しが面白くて思わず笑いが起こる。
「じゃあ、家康。君が赤字を避けるために必要な給料だとして、その赤字はいつ来るんだ?俺たちは今、投資したばかりなんだぞ!」と秀吉が笑いを交えて言った。
各自の給料案
「まず、島左近、いくらが妥当だと思う?」と信長が尋ねると、左近は少し緊張しつつも真剣な顔で、「50万円ほどをいただければと考えております。戦の前線で全力を尽くすために、これが妥当かと」と答えた。
「50万だと?お主の働きぶりを考えると、もう少し多くても良いんじゃないか?」と信長が意外そうに言うと、左近は苦笑いを浮かべ、「戦の前線に立つのは構いませんが、体力もありますし、毎度の戦で財布もどんどん軽くなってしまいますので、50万で戦果をあげるペースを守りたいのです」と冗談めかして答えた
黒田官兵衛が続いて、「私は55万円を提案します。戦略の価値は計り知れませんから、これが相応しいと思います」と言った。
「おい、官兵衛。なんでお前、そんなに高く取ろうとしてるんだ?給料は戦で勝った者が取るもんだぞ!」左近が言うと、官兵衛は「私は勝たせるための人材だからこそ、その分は欲しいのです」と堂々と返した。
竹中半兵衛が冷静に言った。「私の提案は、基本給35万円、プロジェクトの成功ごとにボーナスを得るという形です。それにした方が全体の利益に繋がるでしょう。」
「ボーナスって、何だ?」信長は首をかしげた。「それは食べ物か?ああ、分かった、きっと戦の時の酒のようなものだな。」
「いえ、信長様。ボーナスは成果に応じて支給される特別手当のことです」と家康が苦笑いしながら説明した。
「何、それは甘やかすだけだろう。武士は厳しい道を歩むもので、特別手当なんて要らん!」信長が言うと、家康は困惑した様子で、「それでも、戦の勝利には報酬が必要です。信長様、助けてください…」と呟いた。
給料を決める難航
最終的に、信長は「みんなの意見を尊重するが、俺の給料が70万円で、他はこれで決めよう」と言い切った。島左近は50万円、黒田官兵衛は55万円、竹中半兵衛は35万円、秀吉は60万円、そして家康は堂々と60万円という結論に達した。
「結局、全員が納得できる結果になったな」と信長は自信満々に言い、部屋の中には和やかな雰囲気が漂った。
こうして、サムライ・スタートアップ株式会社の新たな幕が上がり、彼らの道は一層明るくなっていったのであった。
VCからのお叱り
給料を無事に決定し、士気を高めたサムライ・スタートアップ株式会社。しかし、その翌日、VCである創世キャピタルの藤井パートナーが訪問してきた。彼は厳しい表情を浮かべ、会議室の信長たちを見渡しながら、低く響く声で話し始めた。
「織田さん、秀吉さん、家康さん。少し、話があります」
信長は堂々と胸を張り、「おう、何か問題でもあるのか?」と答えた。しかし藤井は軽くため息をつき、「問題?いや、大問題ですよ!」と声を上げた。続いて、彼は資料を開きながら続けた。
「まだプロダクトが市場に出ていない段階で、給料を決めるのは理解できますが、これ、少し高すぎるのではありませんか?」
「高すぎる?我々の武士としての価値を考えれば、これでも最低限だと考えたのだが」と信長は反論するが、藤井は顔をしかめるだけだった。
「そもそも、皆さんが決めた給料… CEOが70万円、CFOとCOOが60万円、その他の従業員も50万円前後って、こんなに高い給与を設定する会社は、サムライ時代にもありませんよ!」
家康は小声で「それでも、士気を安定させるためには…」と弁解するが、藤井は冷静に遮った。
「サムライ・スタートアップはまだプロダクトが世に出ていません。収益が上がってもいない段階で、こんな給料を払っていたら資金はあっという間に底をつきますよ。現実を見てください!今、投資家の期待に応えるべく、コストを抑えて利益を出す道筋を作るべき時期です」
秀吉が笑顔で「いやいや、藤井さん。士気を高めるには多少のご褒美が必要で…」と肩をすくめたが、藤井は首を振り、「ご褒美は成功してからの話です」と一蹴した。
「皆さん、会社の利益が上がっていないうちに高い給料を設定することは、社員に過度な期待をかけているのと同じです。これでは、プロダクトの売上目標に達する前に資金が尽きてしまう可能性があります。織田さん、プロダクトの価値は分かりますが、もう少し慎重に考えてください」
信長は唇を噛み締め、一瞬悔しさを見せたが、やがて深呼吸して静かに頷いた。「分かった。俺も少し、武士としての誇りが高ぶりすぎていたかもしれん」
家康も、やや引き気味で「…まぁ、私も少しばかり、見栄を張ってしまったかもしれません」と渋々同意する。
こうして信長たちは、藤井からの叱責を受けて気を引き締め、少しでも利益を出せるよう、サムライ・スタートアップの未来に向けた新たな一歩を踏み出すことになった。
以下が給料の最終形態となった。
織田信長(CEO): 45万円
信長は初期案から半額に削減し、「ここから先は結果を出すまでだ」と自ら先陣を切る形で調整を了承。豊臣秀吉(COO): 40万円
信長の決断に応え、秀吉も給料を40万円に。「俺の手腕で、この額を倍にしてやる」と自信満々に引き受ける。徳川家康(CFO): 35万円
初期の希望からはだいぶ減らしながらも、「資金計画はこれで十分だ…たぶん」と自分に言い聞かせながら納得している様子。島左近(エンジニア): 30万円
技術の要である左近には信長も期待を込め、この額に設定。「まずはこの額で腕を振るわせてもらう」と左近も納得して仕事に集中する構えだ。黒田官兵衛(人事・マーケティング担当): 28万円
官兵衛は必要経費を考えつつ、「ここからどう利益を最大化するか、見せてやろう」と冷静に受け入れる。竹中半兵衛(企画・戦略担当): 28万円
半兵衛も同様に、「少ないリソースで最大の効果を出す、むしろ面白い」と戦略家らしい前向きさで応じる。
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