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第12回 ハリー と セブン

私が来る前からこの家ではコリー犬の「ハリー」を飼っていた。

家を建てた大工さんに譲ってもらったらしい。

外で飼っていて走れる庭はあるけど、マダニだらけで苦しんでいた。


ある夜、私がお風呂に入ろうとしていると外に放り出された。
しかも雪が降る中、シミーズとパンツだけの状態で。

もう何があってそうなったかは覚えていないが、よくそんなことがあった。

ハリーの犬小屋は人が入れるぐらいとっても大きかったので、
入れてもらって一緒に寝た。

ハリーはなんか困った様子だったが一緒にいてくれた。

ハリーはとても大きかったから暖かくて、
「私もう毎日ここでもいいんやけど」なんて思っていた。


家は突き当たりのところにあるのであまり人は通らないが、新聞配達の人とか、何かを届けにくる人がいて、見られるのがすごく恥ずかしかったのを覚えている。



大晦日の朝、お母さんが雨戸を開けると、近くにハリーが倒れていた。
マダニがいっぱい付いたままカチンコチンに凍って死んでいた。
舌を噛んだようだった。

お母さんは地べたに降りて、ハリーに抱きついてわんわん泣いていた。

そんなことができるなら、もっと早く助けてやればよかったのにと、
私はその様子を冷めた目で見ていた。

長生きしたハリーの最期は小学三年生の私にとって壮絶な出来事で、
記憶に焼きついている。

今でも夢に見ることがある。

思い出すと胸が苦しくなる。
(今の私なら助けてあげられるのに)



それからしばらくして、次男のお兄ちゃんが神社で犬を拾ってきた。

「セブン」と名付けられたこの犬は雑種で、額に卍の模様があった。

いつも次男のベッドで寝ていて、寒い時は重宝され、暑い時は邪険にされていた。

拾ってくれた恩は忘れない義理堅い奴で、次男とお母さんには懐いていた。

しかし、それ以外の人は噛み倒された。

狼の血が混じってると家族全員が思っていたくらい野生的だった。


犬のご飯や散歩などのお世話は私の仕事だった。

犬にご飯をあげていなくて、私がご飯を食べていると、
「セブンにあげてないのになんで食べようとしてんねや!」
しばかれて、先に犬にご飯をあげる。

犬は家族図を見ているので、私はこの犬から下に見られていた。

だから、すごい噛まれた。
顔にもいっぱい傷がある。


私を噛む犬のお世話をずっとやらされていた。
(私よりも偉いお犬様)


つづく

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