第11回 ピーコ と ビーコ
庭には二羽ニワトリがいる。
早口言葉みたいだけど、ホントにいた。
縁日で買ってきたひよこが大きくなった、ピーコとビーコ。
夏休みにばあちゃんの家にお母さんが帰るとき、私も下のお兄ちゃんもついていくことになったが、上のお兄ちゃんは一人で家に残ることになった。
帰る前の日から、お母さんは犬のハリーやピーコとビーコのことをお兄ちゃんに何回も頼んでいて、当日玄関を出る時も念を押してから出かけた。
数日後、帰ってきたらビーコが死んでいた。
お兄ちゃんが水とか餌とかをあげるのを忘れていて、気がついたら死んでしまっていたそうだ。
「呪われんで」とか言ってチクチクみんなでお兄ちゃんをいじめていた。
私はそんなことを言ったら殴られるから言わなかったけど、
おもしろかったから「ビーコ……」とちっちゃい声で言ってみたりした。
それからというもの、上のお兄ちゃんはその時生き残ったピーコが老衰で死ぬまで、何年も大好きな唐揚げが食べられなくなってしまった。
でも、唐揚げの代わりに豚カツを自分で作るって言って、毎週 私と下のお兄ちゃんが衣付けを手伝わされる羽目になってしまった。
一羽になったピーコはお母さんにだけすごく懐いていて、お母さんが抱っこって言ったら寄ってきて抱っこされる。
夕方になったら眠くなって、自分の小屋に戻りたいからお母さんに抱っこしてって言ってるみたいに「コー」とか甘えたように言う。
何かそういうのに優しいお母さん。
ビーコが死んで悲しそうだった。
その半分でもいいから、私に優しくしてくれたらいいのに。
つづく
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