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第18回 女だから

なぜこんなことをしなければならないのだろう。

学校から帰ると犬の散歩に行って、家中の掃除をして、
お風呂を洗ってお湯を入れて、お茶碗を洗ってご飯を炊く。
まるでシンデレラのようなこの日常。


四年生の時に背負ったバレーボールの借金の返済のために、毎日やっていた。


いったい借金はいくらだったのだろう。

私の1日の労働代価はいくらなのだろう。

分からないまま2年が過ぎたころ、
なぜ私にだけこんなことをさせるのか、お母さんに聞いたことがある。

ただ一言、

「あんたが女やからや」


お兄ちゃんたちもそれを真似して、

「お前が女やからや」


私はなぜ女に生まれたのか、女であることを心底恨んだ。



ゴム跳びとか、女の子がやる遊びはしたことがなかった。

スカートを履くのも吐きそうなくらい嫌だった。

可愛い服を着て、
可愛い文房具を使い、
可愛い話し方をして、
何かあればすぐ泣く。

周りの女の子たちはそんな感じだった。
そのどれも理由が分からなかった。


彼女たちを見ていて思った。
女は可愛がってもらえるもんなのか?

家に帰って思った。
女は大切にしてもらえない生き物なのか?


とても同じとは思えない周りの子たちとの差に、
私はきっと人種が違うのだと思うようになった。


シンデレラのようにここから抜け出したいけれど、
現実の世界には魔法使いも王子様もいない。

誰かが助けてくれるかもしれない、なんて希望を持つこともできない。
その虚しさが、私を冷めた子どもにしていった。


小学校の頃は、ずうっと死にたかった。

家の裏は崖のようになっていて、その下には竹藪が広がっている。
太くて大きな竹に触れないぐらいだったので、
崖の高さは二十メートル以上はあった。

ここから飛び降りて死のうとかと何度も思った。


でも、竹が顔とか腹に刺さって死にきれなかったらどうしようとリアルな場面を想像すると、飛び降りることができなかった。


つづく

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