第15回 バレーボール事件
一年生から四年生までは、家で私のお誕生会をやってくれていた。
近所の友達を呼んで、ちゃんとやってますよアピールだったのだろう。
四年生のお誕生会の時の出来事が、その後の私を苦しめることになる。
友達が庭にあったバレーボールで遊んでいた。
このボールは、亡くなった犬のハリーが遊んでいたもので、
もうズタボロで、庭で朽ちていた。
友達がこれを空き地に持っていって遊んでいたのだが、
無くしてしまったと帰ってきた。
友達がいるうちはお咎めがなかったのだが、帰った後、
「あんたが無くしたバーレーボール弁償して!」とお母さんに言われた。
(私じゃないんですけど)
しかし、私には弁償する術がなかった。
お小遣いはもらったことがない。
お年玉をもらっても取り上げられる。
そんな状態を知っていたばあちゃんが、手紙の中に500円札を入れて送ってくれたりしたが、手紙は検疫のように勝手に開封され、中身を見られて、お金が入っていたら抜かれた。
(刑務所かここ! そんな中でどうやって弁償するんですか)
運良くポストに手紙を見つけでもしない限り手にする事はないし、
ポストから持ってきても、検疫を通っていない手紙が見つかれば、
隠した罪でしばかれた挙句、奪われてしまう。
(奇跡的に検疫を逃れて密輸入出来た幸運の500円札は、今でも持っている)
「どうしたらいい?」と聞くと、
「働いて返し!」
その日から、玄関、廊下、階段、洗面所、
トイレ、お風呂の掃除をすることになった。
モップをかけて、掃除機かけて、雑巾がけ。
お風呂を洗って、お湯を入れる。
学校から帰ると、犬の散歩に行って、一連の掃除をして、
お茶碗を洗ってからご飯を炊く。
お母さんは片付けが苦手で、掃除も出来ない人だった。
お父さんは家が汚いと不機嫌になったり、嫌味を言っていた。
掃除を私がすることになってから、
やっていないところがあると、しばかれた。
掃除機だけで拭き掃除をしないで終わらせると、バレてしばかれた。
ならば、と拭き掃除だけしたら、それもバレてしばかれた。
なぜだ??
上のお兄ちゃんも、仕事から帰ってくると、
「おまえ、掃除したんけ!」小姑みたいに指で階段を触る。
「まだやってへんやんけ!コラ!」と私をバーンと蹴る。
私は「あー」とよろめく。
そんなことがずっと続いた。
毎日クタクタだった。
(一体、どれくらいご奉公すればバレーボール代になるんやろう)
つづく
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