弁当屋さんの前が黒ずんできているんだけど 

弁当屋さんの前が黒ずんできているんだけど 

「加藤さん、おはようございます」
「店長、おはようございます。今日はどうしました」
「私が挨拶すると、何か頼み事に聞こえるのですか」
「そんなことないですけど」
「実は」

 青山店長は、テナントで入っている、桜田弁当店の前の床が黒ずんで来ていることに
気がつき、桜田社長に伝えたのですがなかなか、直らずに困っていたのです。
 パン屋さん等は、しっかり管理していて、共通の床が綺麗なのですが、どうしても
弁当屋さんの前の床が汚れていたのです。
 一番の問題は、弁当を店先に並べるのに、調理の担当者が、売り場まで出てしまう
ことでした。一般的に、惣菜のフライヤー担当の方が、パック作業まで行うことは少なく、
パック担当の方が、店先に商品を並べるので、店先の廊下が汚れることは少ないのです。
 さらに、売り場に出るときには、ドアを開けて、一礼する決まりになっていました。
 この一礼するときに、足下のマットで靴の裏が綺麗になる仕組みなのです。
 

「加藤さん、お願いだからちょっと見てきてくれる」
「了解しました」

 加藤さんが、桜田弁当店を訪ねると、やはり店先の黒ずみが目立ちました。マットも、
天かすがたくさんついて、全く役にたっていなかったのです。
 まず、従業員の作業靴は、私物の運動靴を使用していました。もちろん、綺麗に
洗われておらず、汚れたままの物を使用していました。
 加藤さんは、スーパーで使用している、マットと同じ物を、毎週交換するように、
社長を説得したのです。作業着も支給していないで、前掛けのみ支給していたのです。
 経費は上がってしまうのですが、油に強い靴、作業着を支給するように説得しました。
 一番の問題は、靴の裏を洗う習慣がなかったのです。もちろん、手洗い場、食材を
洗うシンク、備品を洗うシンクで靴を洗うわけにはいきません。
 食品工場、飲食店などでも、手洗設備は整備しているのですが、作業靴を洗う場所が
整備されているところは少ない物です。
 私が、働いていた工場でも、靴裏を洗うときは、床に屈みこんで、適当なブラシと、
洗剤で洗っていた物です。上に乗ると自動で洗える設備もありますが、洗った後の水気が
床に残って、床が滑りやすく危ない物です。
 準備室などに、作業靴専用のシンクを設置し、手で靴裏を洗うことが一番だと思います。

 もちろん、靴を洗う時間も作業時間に含まれるべきです。
 作業着に着替える時間、毛髪混入防止のためのコロコロを行う時間、手洗時間などが、
作業時間に含まれない事業所もありますが、作業に必要な作業は、すべて作業時間に
含まれるべきです。
 桜田弁当店は、前掛け以外の作業靴、作業着は、家から着てきてもらっていたのです。
 靴は、油で汚れてもいい靴を従業員の方が持ってきていました。もちろん、作業靴の
ままで、バックヤードの外の喫煙場にも行っていたのです。
 タイムカードを打刻するのは、8時ぴったりに打刻させ、打刻前に朝礼を行っていた
のです。帰りも、5時ぴったりに打刻させ、その後に帰る準備をしていたのです。
 売り場につながるマットも、定期的に交換するタイプではなく、ホームセンターで
購入し、洗浄等は全く行っていませんでした。
 昔ながらの弁当屋なので、250円で一般的な弁当を作っていたので、出店時は、
よく売れていたのですが、店先が汚れてきてからは、売り上げが下がってきていたのです。
 売り上げが下がってくると、揚げ物用の油の交換頻度も少なくして、油の酸化した
匂いが、店先に広がり、さらに売り上げが下がってきたのです。
 売り上げを上げるために、店先に、寸胴を置き、味噌汁を無料で付ける事にしたのです。
 店先の、味噌汁が、盛り付けるときにこぼれ、汚れがさらに広がってしまったのです。
 加藤さんは、店側で、売り場の床の剥離ワックス作業をやるので、厨房内の床清掃を
確実に行うことと、作業着、作業靴を会社負担で支給すること、作業靴専用のシンクを
設置することを約束して、日程を決めたのです。
 さらに、作業場を見て見ると、フライヤーの下の床には、段ボールを引いて作業して
いました。さらに、天かすを入れる容器が小さくて、天かすが床にこぼれていたのです。
 さらに、切った肉、野菜くずも床に落ちたまま作業を行っていいたのです。
 加藤さんは、従業員を集め、自分の家では、みなさんは、床に、肉が落ちたら直ぐに
拾うでしょう。と言った例をあげて、説明したのです。
 靴も支給してもらうので、洗って綺麗にすることを約束したのです。
 一番作業で変わったのは、8時にタイムカードを打刻したら直ぐに、弁当を作る作業を
行っていたのですが、打刻後、30分間は、店先、作業場の清掃作業を行うようにしたのです。
 もちろん、桜田社長は、毎日、店先の床を磨き続けたのです。
 売り場との仕切りの壁も、毎朝磨く事で、匂い、汚れが目だだたなくなり、自然に売り
上げも増えていったのです。
 青山店長も、靴の裏、作業場を定期的に確認する事を、加藤さんに約束しました。

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