鶏卵偽装で経験したこと
鶏卵偽装で経験したこと
「加藤さん、おはようございます」
「店長、おはようございます」
「先日のM玉の話良かったですね」
「ありがとうございます。今日も仕入れ先監査に行かれる方に、卵のお話をする予定です。時間があれば店長も一緒にいかがですか」
ヨコシマスーパーでは、仕入れ先の管理状況を確認するために、定期的に、仕入れ先の工場を回っていたのです。
その中で、製造工場出身の加藤さんは、スーパーの仕入れ経験しか無い他の担当者に定期的に教育を行っていたのです。
食品の産地偽装、賞味期限の偽装を行ってしまう理由は大きく二つあります。
一つ目は、注文が多すぎ、正式の物が手配出来ないため。
二つ目は、正式の物を納品するよりも、儲かるため。
の二つになります。初めは、注文が多く、仕方が無く、一つ目の理由で、産地偽装をしても、どこからもクレームが無いと、「真面目にやらなくてもいいんだ」と思ってしまい。つい、産地偽装を続けてしまうのです。
レジから、落ちた500円玉をポケットに入れてしまっても、何も言われなかったので、毎日500円をポケットにいれ続け、最後は、すべてのレジから500円をポケットにいれ続ける事と同じです。
監査、誰かが見ていると言うことを行わなければ、つい、偽装、悪さを続けてしまうのです。悪さを行った時に、ばれてしまう、仕組みを、それぞれの納品先と、帳票と言う形で、約束をしなければならないのです。
ヨコシマスーパーでは、悪さが出来ない仕組みを約束し、定期的に監査を行っていたのです。
鶏卵は、一般的な、白玉、赤玉の卵と、特殊卵と言われている、DHA、ヨードなど、特殊な餌を与えた卵とで大きく分けることが出来ます。
赤玉と、白玉の違いは、卵を産む親鳥の違いで、赤い羽根の鶏からは赤玉、白い羽の鶏からは、白い卵が産まれます。卵の黄身の色、栄養素は、食べている餌から由来するので、赤玉、白玉による、栄養の差は無いことになります。
特殊卵は、高そうに見える赤玉で作られる事が多くなります。
赤玉の注文が多くても、白玉を混ぜる事は、視覚的に直ぐにわかってしまうので行うことは出来ません。
しかし、赤玉の特殊卵の注文が多い場合、餌が普通の赤玉を混ぜても、視覚的には、わからないことになります。
黄身の色を特殊卵の方が濃いオレンジの場合がありますが、これも、意図的に餌に、濃い色の物を混ぜているので、一般卵も同じ色の餌を与えていれば、わからない事になってしまいます。
また、特殊な餌を与えて、どのくらいの日数経てば、黄身の中に、栄養素が移行しているかの確認が必要です。
一般的には、14日くらい経過しなければ、表示してある栄養素までには高まらないものです。この13日目、12日目の卵を、特殊卵に回した場合は、外観、味などでは、区別出来ない物です。高い卵を購入しても、あまり美味しく無いと感じているお客様は、クレームを付けること無く、次回から、購入しなくなる物です。
ここで、商品を仕入れるときの規格書に何を約束し、帳票として何を準備させるかが大切な点になります。
鶏卵を販売している、チャーンによって、同じ鶏卵業者でも、産卵日の表示を行っている場合があります。法律上は、賞味期限表示のみを行っていればいいのですが、お客様目線で考えると、産卵日、パックした日の表示は欲しいものです。
ヨコシマスーパーでは、鶏卵は冷蔵販売を行い、更に、産卵日の表示を求めていました。
規格書には、朝から集卵を行い、集卵当日中にパックした卵を使用した場合のみ、産卵日表示を行う。と規格書に記載していたのです。
また、集卵は鶏舎毎に行うとも記載していたのです。
鶏舎毎に集卵を行えば、集卵した鶏舎の餌の状況、餌を変更した日時などが明確になり、パック数と産卵数を比較することが出来ます。
また、鶏舎の羽数がわかるので、ヨコシマスーパーのバイヤーも、毎日同じ数のパック数を発注することになります。
また、夏になると、鶏が餌を食べる量が減るので、卵の重量が軽くなってしまいます。
ヨコシマスーパーでは、M玉、L玉などと言った表示を止め、定重量と言って、10個で580g~640gと言った表示に変えたのです。
養鶏場で対応出来ない、無理な発注を行い、重量の偽装、特殊卵の偽装の状況を作り出すのでは無く、養鶏場の能力、羽数を把握した上での発注を行うことで、無理の無い状況を作り出したのです。
更に、フードロスの考え方を取り入れ、例えば、1000PKの注文で、結果として、998PK、1002pkなどの過不足が発生した場合もその数量でも納品にしたのです。
農産物、水産物、卵などは、スーパーの注文に確実に答えるためには、10%程度、多く生産し、注文数に対応しているのです。
余った10%の物は、廃棄、もしくは、他の用途に転用していたのです。
肉をスライスする、加工食品は、包装する段階で、数量を確定し、使用しなかった、原材料は、半製品として、翌日などに使用できますが、産卵日を記載する卵は、翌日には使用できないので、この、過不足を認めた考え方は、鶏卵業者に歓迎されたのです。
あくまでも架空のお話です。