毎日 500円合わなくなってきました
毎日 500円合わなくなってきました
「加藤さん、おはようございます」
「あら、祐子さん珍しいですね、事務所に来るのは」
「はい、相談に乗ってもらえますか」
「私でいいのですか」
「店長にも相談したのですが、ちょっと解決しなくて」
「レジのことですか」
「はい、最近、レジが合うことがなくなってしまって、必ず500円合わない事が多くて」
「いつからですか」
ヨコシマスーパーでは、レジの担当者が変わる毎に、レジのキャッシュトレイ毎、入れ替えて、事務所に引き上げて計算していました。レジのキャッシュトレイは、特定の方が、新しいものを持って、使用していたものと入れ替えていたのです。
実は、今月から、キャッシュトレイを入れ替える担当を変更したところ、現金が合うことがなくなったのです。
それまでも、合わない事はあったのですが、一台も合わないシフトがあることはなかったのです。金種で探すと、500円玉が一枚不足していることが多かったのです。
「祐子さん、店長と話してみますね」
「よろしく、お願いします」
「青山店長、レジの件聞いていますか」
「はい」
「どう対応しました」
「んーーー」
ヨコシマスーパーの決まりでは、レジは、1000円以上合わないときは、報告書を書いてもらう約束でした。1000円以下の場合は、特に対応していなかったのです。
しかし、祐子さんがわざわざ、事務所に訪ねてきたので、店長も重い腰を上げたのです。
店長は、過去に遡って、500円玉一枚が合わない事例をリストアップしていたのです。
ある特定の方が担当しているときに、500円玉が合わない事を発見したのです。
しかも、その方は、レジのキャッシュトレイを入れ替える担当をしていたのでした。
ヨコシマスーパーでは、過去の経験から、かご脱け防止のため、レジの真上に監視カメラを設置し、レジのリセットキー操作などをしたときには、カメラを見直していました。
監視カメラのデーターの保存は、半年以上していたので、500円玉が合わない方の、動作確認をしても問題は見つける事はできませんでした。
しかし、レジのキャッシュトレイの交換の担当を変えたところ、他のレジが合わない日が続くことはなくなったのです。
ヨコシマスーパーでは、レジのキャッシュトレイを交換するときは、新しい釣り銭が入ったものを運び入れ替えていました。売り場から事務所までは、ドアが一枚あり、ドアを開けて、事務所までは、監視カメラを設置していませんでした。
店長は、監視カメラを、売り場から事務所に入るドアの事務所側に設置したのです。
設置は、深夜に行い、もちろん、従業員には説明しませんでした。
ある日、該当する方に、キャッシュトレイの入れ替えをお願いしたときに、すべてのレジから500円玉一枚ずつ抜く映像が録画できていたのです。
店長は、該当者を呼び出し、今まで、該当の方が担当したレジの合わなかった記録と、キャッシュトレイを運んだ時の合わなかった例をすべて机の上に並べたのです。
総額は、なんと20万円以上になっていました。
しかも、勤務歴10年以上の店長が、信頼していた方だったのです。
泣きながら、彼女の説明を聞くと、きっかけは、床に落ちていた、500円玉だったそうです。レジを担当していた時、500円玉が一枚床に落ちていたものを拾って、ズボンのポケットに入れたそうです。そのまま家に帰ってしまい、事務所に届けるのを忘れてしまったそうです。レジが合わなくても、1000円以下の場合は、報告書がいらなかったので、毎日、自分が担当するレジから500円玉を抜いていたのです。
そして、キャッシュトレイを運ぶ担当になったときに、交換用のトレイを運ぶときに、ドアの前で、500円玉を一枚抜いて、レジに入れていたのです。
はじめは落ちていたものを偶然拾ったものが、いつの間にか、毎日抜くようになり、そして、他のレジからも抜くようになってしまったのです。
監視カメラの映像は、従業員全員が目にする場所に設置すべきです。
エレベーターの中の映像も、一階の皆さんが見えるところに、画面を設置しているところをよく見かけます。
スーパーの入り口に、大きな画面を置き、売り場の映像を映しているところもあります。
「お天道様が見ている」環境を作りあげることで、犯罪者を生むことはなくなると思います。ヨコシマスーパーでは、キャッシュトレイを入れ替えるときは、防犯上と言う理由にして、必ず二人で、行うようにしました。
自動販売機の釣り銭を回収している作業を、一名だけで行っている姿を見ると、犯罪者を作りあげないか心配になってしまいます。
あなたの職場では、犯罪者を出さない環境になっていますか。