転倒事故が発生したら
転倒事故が発生したら
「加藤さん、相談に乗ってください」
「店長、今度は、車の購入相談ですか」
「加藤さん、冷やかさないでください」
「桜田弁当店で、転倒事故が発生してしまって、入院になってしまったんだよ」
「あら」
「それで、再発防止の相談に乗ってほしいんだけど」
「了解しました」
桜田弁当店では、フライヤー担当の女性のパートさんが、床が滑って転び、尾てい
骨骨折を起こしてしまいました。転んだときには、直ぐに立ち上がって作業を続けてい
たみたいですが、家に戻っても、お尻の痛みが取れず、翌日、仕事を休んで、病院に
行って、レントゲンを撮ったところ、骨折がわかったそうです。
桜田弁当店では、作業靴、作業着等は、退職したパートさんの物を、そのまま使用
していたようです。転んだパートさんの靴を見せてもらうと、靴裏の滑り止めが、
全くすり減ってしまっていました。
転んだパートさんからは、新品の長靴がいいと言われていたみたいですが、経費削減
のため、使用していた、長靴を支給していました。
桜田弁当店では、長靴、作業着などを、交換、追加する場合は、1000円を徴収して
いました。長靴自体は、2000円程度の物ですが、1000円を徴収していたのです。
1000円を稼ぐためには、1時間以上働かなくてはならないので、なかなか、長靴を
交換することはなかったそうです。
もちろん、長靴の裏を確認することもなかったそうです。
フライヤーを担当する方達は、床が滑るのと、床が冷たいので、さらに、床の掃除を
楽にするために、フライヤー作業の場所の下に、段ボールを引いていたのです。
転倒事故は、単純に滑って転んだのではなく、床に引いた段ボールの端に躓いて、
段ボールが滑り、転んでしまったようです。
厨房に、段ボールを持ち込むことは、異物混入防止、虫の混入防止、さらに、
火災予防の観点からも禁止すべきです。段ボールのなみなみの所に、異物、ゴキブリ
などの異物が、入っている可能性があるので、厨房には、持ち込むべきではないのです。
厨房の床は、常に磨き混み、マットなども引くべきではないのです。
年を重ねてくると、足が上がりにくくなり、ちょっとした段差でも躓いてしまうことが
あります。
油を多く使用する、厨房の床は、アルカリ系の洗剤を使用し、常に磨き混み、
滑らないように管理を行うべきです。
従業員の作業着、作業靴を交換する場合、数枚ほしいとする、従業員に、実費を請求
している、企業は多く見かけますが、作業着の下に着る、防寒着、凍結庫で作業する
ときに着用する、ジャンパーなどを含め、すべて、会社負担にすべきです。
フライヤー作業などで、汚れる場合は、複数の作業着を支給すべきです。
食品工場、飲食店の作業着は、従業員自身が、自宅で洗濯をしている場合がありますが、
自宅での洗濯は、匂いのある洗剤、柔軟剤を使用しない、下着と分けて洗濯する、
外に干さない、アイロンをする、たたむときは、猫の毛などが入らない様にする等の
注意すべきことが多くあり、本来、企業側で負担すべきことを、無給で家庭で洗濯など
の管理をさせるべきではないのです。
作業靴の管理は、週に一回程度は、靴の裏の滑り止めの状況を、朝礼時に確認すべきです。
サッカーの試合では、試合が始まる前に、スパイクの針の状況を審判が確認します。
朝礼時に、作業靴の裏を確認する事で、転倒事故は防ぐことができます。
作業靴を作業後に洗い、靴裏を表に見える様に干しておくことで、誰でもが、靴裏の
減り具合を確認する事ができます。一般的に言う、「見える化」ですが、ここで大切なのは、
干すときに自分自身で気がつくことです。干した本人が気がつかなくても、他の方が、
「すり減っているよ」と誰もがが声を出すことができる環境が大切です。
声を出したときに、責任者が「今月は経費をしぼりたい」と思って、「今は交換できない」
と発言したときには、責任者の上司、もしくは、ホットラインに連絡ができる環境を
作りあげることが必要です。
自己負担1000円も問題ですが、本来交換すべき物を交換できない環境も、問題が
あります。
誰もがが、使用する便座が割れていても交換していない工場があります。
責任者専用の便所が無い限り、責任者を含めて、便座が割れていることは、認識
しているはずです。便座が破損していても、交換しない工場は、作業場に入るまでもなく、
備品、設備の管理状況を想像ができてしまいます。
自分の車のタイヤがスリップラインが出ていても、交換しない車に乗り続ける方は
いないと思います。もし、すり減ったタイヤで、高速道路を走ってしまうと、大きな
事故につながり兼ねません。
経費節減、利益を出すことが必要と、責任者は思って経費を絞ってしまうのかも
しれません。しかし、安全の土台を欠いて、いい仕事はできない物です。
安全に関する、経費を絞って、利益を出すことを考えている、責任者がいた場合、
あなたは、どう行動しますか。