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再開 海外旅行 3

入国審査が終わると、次は税関だ。事前に飛行機で渡された、日本語で書かれたチェック項目にチェックして、税関を通過する。しかし、夫が「アフリカ大陸に滞在していない」という項目へのチェックが抜けていたため、荷物チェックに回される。私は無罪放免だったのだが、荷物チェックに回された夫を笑っていたら、同じグループならあなたも、と言うことで私も荷物チェックに回された。

これが悲劇の始まりだった。まず、私に渡された税関のカードは、私のものではなかった。そのことを係員に告げたところ、カードの束の中から係員が私のカードを探す。そしてX線による荷物チェックをしたところ、私の荷物が引っ掛かった。
私には気がかりがあった。家にあったみかんをスーツケースに入れてきたのだ。海外だと野菜不足になりがちだし、帰国したらみかんは古くなってしまっているから、海外で食べようと思ったからだ。そもそも、果物の持ち込みはどこの国でも禁止なのかもしれないが、果物を持ち込むことはそう多くはないし、海外が久しぶりなので、果物の持ち込みがダメだと言う意識がなかった(わかっていたら、わざわざ持ち込まない)。しかしその場合は、申告が必要だと、機内の注意喚起動画で言っていた。しかし私はまあ大丈夫だろうと思って申告していなかったのだ。
不安は的中する。みかんは無常にも見つかって、係員に叱責される。
「これは何ですか?」
「みかんです」
「何のために持ち込みましたか?」
「食べるためです」
税関申告書を渡されて、
「ここに何と書いてありますか? 読み上げてください」
言われた通りにする。
「なぜ申告しなかったのですか?」
「これをバッグに放り込んだことを忘れていたからです(むろん嘘)」
そんなやり取りを英語で行う。
さらに係員は私のアルファ米(水やお湯を入れると食べられるライス)も発見し、「これは何ですか?」のやり取りを繰り返す。まさかアルファ米が咎められることになるとは思いもよらなかった。どうやら、よく読むと申告書には「穀類」とある。私のアルファ米はその場で袋を開けられ、中身を確かめられる。肉が入っていたので、これは何か、とまた尋ねられる。肉だと答える。別室に持って行かれて検査され、アルファ米はセーフと認定されたものの、持ち込むことは問題がないが、申告はしなくてはならなかった、と言われる。

注意を促されてみかんを没収されて終わりかと思ったら、罰金を払わなくてはいけないと言われる。え? 罰金? と思ったが、いくらかと聞いたら、6ペナルティのところを示され、1650ドルと書いてある。私は唖然とした。1650ドル?? そのときの為替レート、1豪ドル92円で計算したら、15万2,000円ではないか! それを今支払うか、28日以内に支払うかしないと入国できないという。

私はかすかな抵抗を示す。「この6ペナルティと言うのは何ですか?」
私はみかん2個とマジックライスを4つ持っていたが、違反だったのはみかんの2個だけなので、6ペナルティではなく、その上の欄の2ペナルティではないか(それでも550ドルだが)。
すると彼女は、果物の持ち込みは罪が重いので6ペナルティに当たる、と説明した。なるほど、たまたま私が持っていったアイテム数とペナルティの数字が一致するだけで、ペナルティの数はアイテムの数を指しているわけではないらしい。私は諦めて罰金を払うことにする。

しかしそこから先が長かった。1分で戻ると言って席を外した彼女は、5分経っても戻ってこない。ようやく戻ってきたら、税金を徴収する係員がおらず、呼んでこないといけないので、もうしばらく待ってほしいと言う。
私たちはホテルまでの送迎を付けていたので、夫は、迎えに来たスタッフや、他に送迎を利用している人を待たせているのではないかととても心配している。夫だけは先に出てもよいかと係員に聞いたら、構わないと言うので、夫に、先に出て事態を説明してもらうことにする。

税関に残った私は、待つ。しかし待てど暮らせど事態は先に進まない。うんざりした頃になってようやく、支払い窓口が開く。どうやら今日罰金を課された可哀想な人は私が初めてのようだ。税関で荷物を開けられていた人はかなり多いが、どうやら私も注意された、穀類の申告が漏れた人が大半のようで、違反した人はいないらしい。おまけに窓口でカードで払おうとすると、持っていたアメックスのカードは使えないという。VISAに切り替えたが、カード支払いの場合は手数料がかかると言われる。手数料23.1ドルが追加で取られる。
支払いに手間取っている間、私は前科が付いて、今後入国できなくなったりしないのかと尋ねたら、今回の違反は、ビザには影響しない、との答えだった。もっともこんな罰金を課す国を、再訪することがあるかどうかはわからないが。

ようやく放免されると、そこには送迎に来たスタッフが待っていた。他に日本人の女性客がひとり、送迎を利用しているようだ。待たせたことを私が詫びると、自分もそれほど早く出られたわけでないので気にしなくてよい、と言われた。もっとも咎められたところで、どうしようもなかったのだが。
送迎スタッフが言うには、オーストラリアは固有種を守るため、特に種が出るものに関して持ち込みが非常に厳しいのだそうだ。確かにその説明はわからないでもない。
しかしLCCを利用した安いツアーを選択したことは、高い罰金を払ったことで意味がなくなった。とんだ旅の始まりだ。

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