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2019 年間ベストソング

ラグビーがめちゃめちゃ盛り上がった年。マイナースポーツとして少し劣等感のあった元ラグビー部としては嬉しい限り。Official髭男dism、King Gnuと今年売れたバンドもランクインしていますが、マイナーな曲も混じった何とも変わったベスト10でしょうね。

Friendly Fires / Can't Wait Forever

ここで紹介するFriendly Fires(フレンドリー・ファイヤーズ)はアルバムごとに、つい買ってしまう数少ないバンドである。どうでもいい話だが、自分は音楽好きを公言するも、好きな特定のアーティストをあまり決めず、常に公平な耳でアルバムを視聴して買うか決めるタイプである。そういう性質の中で視聴した結果、結局買ってしまうこういうバンドは毎回アルバムごとに期待値を超えてくれるのです。このバンドの特徴を簡単に言うと、ダンスとロックの融合。この決まり文句だけなら、同じようなバンド、アーティストは履いて捨てるほど存在している。そんな中、彼らが他と違うところは、ダンスミュージックの取り入れ方が実にスマートなところ。下世話にエレクトロにしたり、4つ打ちビートをベースにしたりと吸収の仕方は色々ありますが、ただ踊らせるためのダンスミュージックではなく、おそらく色々聴いてきた中での、一番の相性の良さを考えてサウンドを構成している。自然と染み付いたものかもしれないが、とにかくダンスミュージックへの愛を感じる。
個人的に仕事用のBGMとして作るプレイリストには洋楽のR&B、SOUL、CLUB(あまり個性の強すぎない)などを入れる。細かい話だが、ロック系は入れない。そういうルールでも、このバンドだけ唯一プレイリストに入れても違和感がない。心地よいリズム、スマートなビートと生音、セクシャルなボーカル。全てがBGMにちょうどいい。あとほんのり味わえるラグジュアリーさ、バリアレックさもある。ここまで要素が詰まったバンドも珍しい。都会っぽさもある。おしゃれさもある。とにかく聴いてると色んな側面があることに気づく。まさに雑食系リスナーにはもってこいのバンドなのである。中でもリズムと疾走感がたまらないこの曲を選曲。都会の中で恋に仕事にスマートに生きるできるビジネスマンのような...自分とは対極をなすが、サウンドだけでそんな気分にもなれたりする。


Charlie XCX & Troye Sivan / 1999

1999年って何があった年なんでしょう。2000年代ミレニアム突入前夜。何も変わらないはずだけど、何か起きないかと変化に期待した年。人類が滅びると予言したノストラダムス。デジタルの進化を近未来として表現した映画「マトリックス」もこの年に誕生している。自然と今までの人間の歩みと、未来を意識する特別な年だったと思う。この年の年末は自分も普段縁遠いカウントダウンイベントに行ったな。今回ランクインしたチャーリーさんは歌詞でもあの頃の1999年に戻りたいと歌う。この人が何歳か知らないけど、年齢に限らず誰もがこの1999年を過去を振り返る通過点として共感できると言える。そう考えると不思議な感覚になる。何かを変えようとする期待、でも変わらない日常。そんな感情が交差した年だったとこのタイトルだけで色々と考えてしまう。
アルバムとしては3作目で、前作では元気なガールズポップでどちらかと言うとロック的なアプローチでしたが、今作はデジタル色が強くビートが強調された楽曲が多い。彼女に限らず、ここ最近の洋楽女性アーティストには変化が見られる。ブリトニースピアーズ(古いな)のように元気に可愛くよりも、どこか大人びて洋楽ファンも唸るような質の高い音へとシフトしている。テイラー・スウィフト、アリアナ・グランデ、同じく2019年にアルバムを出したカーリー・レイ・ジェプセンとか...女の子だからこう歌うという流れが変わりつつある。理由は正直わかりませんが、いつの間にかガールズポップというのも今は死語かも。中毒性のあるビートにポップな歌声。歌詞の題材は1999年だけど、ノスタルジックにも、あの頃は良かった的な派手なパーティーチューンにもならない、逆に未来的なムードも感じる不思議なサウンド。この1999年は実質過去ですが、過去と未来の狭間を表現できる特別な年。そこに新しい自分をめいいっぱい表現できる曲として持ってきたのが素晴らしいのではなかろうか。


Mario / Mirror

一瞬耳を疑うアーティスト名、その名もマリオ...このネットで調べる時代において、本名ならまだしもこの名前にしたことに賛辞を送りたい。単純に調べると間違いなくN天堂の有名なキャラがわんさか出てくる。どれだけページを進めても彼の情報は出てこない...もし自分が音楽プロデューサーならば改名を打診しそうになる。ただこの日本での知名度はイマイチながら、米ではそこそこに売れているR&Bシンガーなので、そこは安心してほしい。15歳という若さでデビューし、ビルボードミュージックアワードを2度も受賞している実力派。こんな売れっ子でも音楽業界は非情なもので、マネージャーとの訴訟騒ぎ(しかもマリオさんの敗訴)や所属レーベルの消滅など苦労の時代を経て、やっとリリースされた9年振りの新作。全く音沙汰のないもので、正直引退したのかと思ってました。
今までの作風だとスムースで甘い、メロウなイケメン風R&Bが特長。吐いて捨てるほどライバルがいるようなカテゴリで、何故かこの人の楽曲は刺さるものがあり、以前から好きなシンガーではあった(明確な理由はわからないけど)。だがこの9年の期間で、いい意味で作風も変わり、今の時代とマリオさんの苦悩の日々を包んだ影を見事に反映させた名作が生まれる。タイトルが「Dancing Shadows」ってのがいい。まさに影をも味方につけて踊らせてしまった。吹っ切れたんでしょうかね。甘い歌声には全く衰えもなく、むしろより艶っぽく大人の魅力が増したような感じ。何より違ったのはダークな印象が強いこと。個人的にダークでメロディの美しいものに惹かれる傾向にあるが、マリオらしいメロウな部分もきっちり残っているのが、新しい試みであり、個人的には見事に成功していると思う。中でも歪んだエレクトロなサウンドが、まさに影が踊るように表現されているこの曲を選曲。綺麗な不協和音という言葉が一番わかりやすいかな。セールス的にはイマイチだったみたいだが、私には恥ずかしながらも見事返り咲いた翼を折れたエンジェルと命名したい。


Maison book girl / 悲しみの子供たち

このランキングでは良くあることだが、全く知らないアーティストが急に上位に入ることがある。えこひいき無しで、今まで好きなアーティストというハンデもなく、とにかくこの年で純粋にいいと思える楽曲を紹介するのがモットーである。どれだけ売れていようが、実力があろうが関係ない。素人だからできる完全ガチのランキング。とはいえ、ここに入ることに何のメリットもないことは断言できる。正直言うと、このグループもこの曲しか知らん・・・調べるとアイドルグループだと、後々に判明。アイドルといえど、今と昔とは大きく違い、気鋭のプロデューサーが楽曲制作したり、とんでもないトラックを乗せてくるアイドルらしからぬ楽曲も珍しくはない。勝手な推測をすると、今は音楽で商売するのが最も厳しい時代。あのタワレコのフリーペーパー「BOUNCE」でさえ、かなりの量でアイドルの紹介に紙面を割いている。今売れる音楽コンテンツとしては、残念ながらアイドルなのだ。となると、、自然と儲かる方の音楽を作るのが当たり前というか時代の流れなんだろう。
ここでやっとMaison book girl(メゾン・ブック・ガール)を紹介。調べると、Pafumeでいう中田ヤスタカのような存在で、サクライケンタというトータルプロデューサーがいるよう。楽曲だけでなく、アートワーク、グッズ制作までにわたり、ディレクションをしているところを見ると、私みたいな音楽ファンもターゲットに見据えている戦略でしょうね。色々と御託を並べても、要は楽曲。このサクライさんの編曲センスがとてつもない。流麗なピアノのイントロから始まるノンストップで刻むタンゴのようなリズムにヘヴィーで激しいドラミングとのマッチングが絶妙。この音だけで持っていかれました。曲の途中にフルート、電子マリンバ?のような音も次々と登場し、様々に音色を変えていく曲構成は完全にツボにはまりました。アーティストとしては遊び心満載の楽曲に、どこかミスマッチにも聴こえる彼女たちのあどけない歌声が情景を浮かび上がらせる。サクライケンタ恐るべし。 


Official髭男dism / Pretender

2019年はKing Gnu&Official髭男dismでの年でもあった。初めて知ったのはドラマ「コンフィデンスマンJP」の主題歌「ノーダウト」。この時は正直、何も引っかからなかったし、変わった名前やなーぐらいの印象。ある種、売れ出してから気になってしまったので、音楽好き以前にみんなと同じ感覚で接しているバンド。一体何が違うのか。プロデューサーに例えば小林武史のような大物がついたとか...といえばそうでもない。でも一つ言えるのはタイアップの多さ。ただそれだけでは売れない厳しい音楽業界で、キッチリと結果を残し、この年の国民的なバンドとも言えるスターダムにのし上がっている。色々考えた結果、やっぱり曲がいいのでしょうというアホみたいな結論になる。もう少し深掘りしてみようか。音楽業界では1990年代、ミリオンセラーが連発した時代にヒットの法則としていたのがタイアップ。いかにして30秒ぐらいの短い時間で楽曲を印象づけ、購買に結びつけるかを下世話に狙っていた。とにかくイントロ、サビはキャッチーでわかりやすく...ちょっとそんな時代を想起させるような楽曲のような気もしてきた。
まずは心を掴むイントロ、Aメロ、サビといった王道パターン。早くもなく、ゆっくりでもないミディアムテンポ。ここは素人目線の推測ですが、このベーシックなパターンが一番アーティストにはオリジナリティを出しにく、難しい領域なんだと思う。あえて勝負しているのは圧倒的なソングライティング力の自信の表れなんでしょうね。普通に聴いてるとドラマティックで常にキラキラしたようなメロディとエモーショナルな歌声。何故か聴いてるだけで気持ちいいなと、まるで自分が歌ったように思わせる爽快な歌い方、それを気持ちよく乗せる旋律。とにかくpretenderは「気持ちいい」をコントロールされる曲なのである。歌詞を見る限りテーマが失恋なのに、これだけ爽快になれる曲も珍しいのでは。細かい好きなポイントは、ピアノとベースがグイグイと引っ張るサビ前の展開。サビ終わりの結局「君は綺麗だ」と肯定するところ。おそらく女性目線で言うとネチネチとあの頃はどうのといって振り向かせようとするより、色んな葛藤ありつつも、最後にこれもロマンスの定めなら悪くないか、とても綺麗だと放つ言葉に母性本能をくすぐられるのであろうよ。単純な名曲だが、実は色々と計算された緻密な楽曲なのかもしれない。


Lafawndah / Blueprint

この曲を聴いた時に、まずは一体どういうジャンル?って素人だから言いたくなる。必ずしも音楽にカテゴリをつける必要はないよねという気持ちが高まるような楽曲。CDショップ店員泣かせよね。でも楽曲自体のオリジナリティ、クオリティをとことん追求し、あくまで芸術性の高いものを生み出すという心意気であれば、最終的にどこにおさまろうが関係ない。例えばビヨーク。棚に並ぶならROCK/POPの欄に並ぶんだろうけど、彼女の音楽はビヨークであり、ROCKよなーとかどうでもよくなる。(ビヨーク好きなら、そんなこと誰も言わない)このLafawndah(ラファウンダ)もそういうアーティストである。不用意にビヨークっぽいよねとかは言いたくない。直接聞いてないけど、本人もそう思っているはず。どこかで聴いたメロディ、サビの展開。もはやそういった概念のない楽曲。曲というより寸劇、民族舞踊のようなものを見せられたような感覚。正直どう言った時に聴く楽曲かは分からないし、そんなことを思って作られた楽曲ではないことは確か。囁くような、語りに近い展開から、魂の叫び、熱く燃えるような和太鼓的な音が叩き込まれ、壮大なシンセ音が流れ込む。かなり挑戦的な楽曲。一般的な今週のベスト10には100%入らないであろう。音楽は自由であり、だからこそ形を変えて人類が存在しだした時代から生まれた最も古い娯楽。大袈裟だけど、そんなことを想起させる楽曲の素晴らしさがある。


Lewis Capaldi / Someone You Loved

たまにFMやSpotfyなどのサブスクで聴いた楽曲。どうも調べると2019年にイギリスでも最も売れた曲らしい。楽曲のテイストといい、2004年のJames Blunt - You're Beautiful(そんな前か!)を思い出すようなストーリー。この手のバラードは定期的に世に出され、ヒットすることも多い。流行りすたりもないからね。その時の時代の流れであったり、社会情勢だったり、要因はわからないけど、人々の心に刺さったのは確かなんやろな。ここに載せるのにアーティスト写真を探すと、ジャケットの雰囲気とは程遠い、ぽっちゃりした海外ドラマの、どちらかというといじられキャラで登場しそうな風貌。んー、そのまま加工もせず素のままを出してたら、多少耳に入ってくるイメージが違ってたかな。ジャケットは楽曲のイメージにマッチしているので、正直このタイミングで見てよかった。
そろそろ楽曲について。しっとりしたピアノから入る音数も抑えた超王道のバラード。何よりボーカル力だけで突っ走って十分成り立つほど深く、滲み入る、そして力強いボーカル。歌詞は見てないからわからないけど、失恋か大切な人を想うような内容だろうか。ボーカルも一つの楽器として捉えてい聴くので、そういう意味では、ギター、ドラムなどの楽器はむしろ邪魔になるような圧倒的な歌声。夕暮れ時なんかにはちょうどいいかも。声だけで楽曲の世界観を作れるのって、ただ上手いだけではなかなかできないこと。(ただ上手いボーカルの曲は聴きたくない)言葉の意味が分からなくても感情を揺さぶられ、また聴きたくなるってのが名曲と言える。この曲にはそれだけの力は十分あるし、毎年出てくるものでもないから貴重な楽曲である。でもJames Bluntも初めはよく聴いたけど、どうしてもその後は聴かなくなるので、次の変化は勝負どころよ。


椎名林檎と宮本浩次 / 獣ゆく細道

このコンビが並ぶだけで、まずは単純に聴いてみたくなる。アーティスト写真の絵力も強烈なインパクトで、しかも時代劇風のコスプレ。音楽ファンなら聴かない訳がないであろう楽曲。ただの持論だが、クセの強いアーティストはfeat、コラボすることで曲自体に刺激を与えることに向いている。その最たるボーカリストが日本だとこの宮本浩次であることは間違いない。(エレカシはほぼ聴きません...)アーティスト同士の印象的なコラボで思い出すのは、小沢健二feat.スチャダラパーの「今夜はブギーバック」、ミスチル桜井と桑田さんの「奇跡の地球(ほし)」。どっちも名曲やけど、どんな曲なん!って言うワクワク感がまずたまらない。スカパラなんかは、毎回色んなアーティストと楽曲出してるし、お互いの個性が化学反応を起こして生まれる新しい作品はいつもと違った楽しみ方ができるのがいいよね。それは予測できる形ではなく、どうなるの?と期待を煽るもしくは裏切るぐらいの方が面白い。
さて楽曲について。とにかくイントロから豪華なオーケストレーション。今までの椎名林檎サウンドからすると、こういうジャズっぽいアレンジは真骨頂である。宮本浩次が迎えられて、このタイトルで来るとロック押しなのかと思いきや、意外にもスカパラにも負けず劣らずのサックス、トランペット、トロンボーンなどの贅沢なホーン隊がサウンドを彩る。椎名節とも言える日本文学風の歌詞と、華々しい舞台のセットでも出てきそうな世界観。椎名林檎ワールドの唯一無二の世界観に、何の違和感もなく入り込んで、存在感を放つボーカル力はさすが。このサウンドに負けない存在感としては、もうこの人しかいないやろって思わせる力量は圧巻としか言えない。ヘヴィローで聴くかと言われると決してそうではないが、1つの作品としての素晴らしさはこのどうでもいいランキングに入れてしまうのである。商業音楽とは真逆に位置するアーティストとしての職人技の光る楽曲と言えるだろう。余談やけど、同じくこの時期のfeat.シリーズという括りで、宮本浩次と横山健の楽曲も素晴らしい。喉ちぎれそうなシャウト気味のボーカルがただただすごい。


Aaron Abernathy / Time Bomb

iTunesで聴いて即買いしただけで何の情報もない。。逆に言うとそれだけ1曲のインパクトが相当強かったのは確か。ここに書くために名前を調べると、アーロン・アバナシーと読むらしい(初めまして)。The Rootsのメンバーに紛れ込んでもおかしくないようなクリエイティブ感のある髭面。何でもミュージシャン/シンガー/ソングライター/プロデューサーといったマルチな才能を持つアーティストらしい。腐るほど目にしたキャッチだが「ディアンジェロ〜プリンスの系譜を継ぐ才能」と言われ称賛されているとか。正直このフレーズ、数多出てくるアーティストにはうんざりで、その流れで聴いた訳でもない。最近のSOUL、R&B系では①メジャーでPOPS寄り、②本格派のフィリーソウル寄り、③インディー志向で前衛的と3つのタイプが多い(勝手に思っている)。どちらかと言うと③のタイプになるのかな。今ではメジャーな活躍を見せるThe Weekndも、初めは③に近いサウンドスタイルから、徐々にキャッチーさ、王道さを取り入れて成功しているアーティストの1人である。この1曲だけでは到底判断つかないけど、同じ系譜を辿りそうな気もするな。
初めに聴いた印象は何このぶっ飛んだ曲!?今までSOUL、R&B、HIPOHOPにロックの要素を取り入れる楽曲も大量に聴いてきたが、ここまでごちゃ混ぜにして何だかわからないジャンルに聴かせる楽曲は初めて。マニアックなトラック構成ながら、どこか突き抜けたキャッチーさと、爽快感がある。荒れ狂うロッキンなギター、クレイジーな歌声、スペイシーなアレンジ、分厚い強めのビートの4重奏がとにかく気持ちいい。タイトルが日本語にして時限爆弾ってのも妙にマッチしている。(どんな歌詞してるのか気になる)中学レベルの英語力でdon't touch(触るな)、dangerous(危険な)と言ってるのはわかる。時限爆弾と何かのシチュエーションをかけた歌詞だとは思うが、まさかガチで時限爆弾を題材にした歌詞なのかは謎。ひょっとしらサウンド重視で歌詞は後付けにしたのかもしれない。それぐらい音作りに夢中になった結果生まれたトラックと言われても納得してまうクオリティである。


The hole / King Gnu

2019年は音楽業界的にはKing Gnuイヤー。少し前はSuchmosで沸いていたような気がするが...ほんまに業界の流れは早すぎて、みんな埋もれていかないように必死であろうに。あらゆるジャンルを飲み込んだ雑食性と、大衆をも取り込む叙情性。オシャレすぎない無骨さもある。勝手にSuchmosと比較するなら、その無骨さと何より井口の圧倒的なボーカル力に尽きる(Suchmosはどちらか言うとサウンド先行で、ボーカル力はそこまでない、いやでも好きよ..)白日を初めて聴いた時は、正直ゾッとした。イントロではSOULバラードと思わせるようなファルセットから始まり、聴いてるとロックなの?と不思議な感覚を覚えたような気がする。SOUL、R&Bでは当たり前に聴ける裏声を、ロックでここまでやっちゃうのは反則やね。R&Bもロックも同じ音楽として並列で聴く若者には、ちょうどそういったところが刺さったのかもしれない。
と、ここまで白日のことを紹介しながら、ベスト10入りは別の曲である。個人的にこういう美しさと暗さを同居した曲が好きなのもあるが、陰鬱とした世界観と、それを超えていくボーカルの表現力にやられました。おそらく他のアーティストなら美しさに寄ってしまい、全体的にメロディがいいねーとかそういう感想しか出ないでしょう。暗闇からわずかな光が差す系(そんなジャンルないけど)は相当なボーカル力が試される。展開によっては綺麗なファルセット、盛り上がるところでかすれた、ちょっと濁り気のある声。サビ前に勢いをつけるところで力強い伸びのある声。全てが思い通りに表現できて名曲になると思う。それを難なくクリアできているボーカルの井口は、化物だわ。彼の良さを余すことなく全力でぶつけてきた曲がこの「The hole」なんでしょうな。
この曲を象徴するクライマックスのフレーズ「この世界の希望も絶望も 全て飛沫をあげてあなたに降り注ぐのなら〜」のところが歌詞からも曲のイメージが一気に広がるし、歌い方の強さも鳥肌もんやね。


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