イソノカツオ

映画と小説について書いてます。

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最近の記事

ブレイキングバッド論

ウォルター・ホワイトの抱擁が持つ、対象に表象されるシニフィエを転換、逆転する舞台装置としての機能。 ブレイキング・バッドを観終わる。緻密に計算し尽くされた脚本。緊張感をもたらす音楽。メスを製造するときのドラマとは思えないお洒落なカット。どれを取っても見応えのあるドラマであった。 その中でも、特に印象に残ったショットがウォルターホワイトが身近な人間に対しての抱擁という行為である。この抱擁の映像が訪れる瞬間は、常にホワイトと対象者の関係性にずれ、もしくは逆転が生じる瞬間なのである

    • 猫たちのアパートメント論

      韓国の解体される団地に残された猫を救うべく委員会の物語。 今にも壊れそうな不安定な足場のもとに残された団地を儚げに上昇するキャメラが捉えるシーンでこの映画は幕が上がる。四つの視点(どれも上から捉えている)でそれぞれの角度から団地を捉える。クレーンによって、荷物が上に運ばれていくショットもあった。上昇のイメージが強く刻まれる。この映画は上昇の映画であるのかと感じたところで、死体がクレーンによって降ろされていく。下降のイメージも同時に存在しているのだ。上昇するキャメラの意図はこの

      • スパイの妻論

        あらすじ この映画は、第二次世界大戦中に日本軍が満州で人体実験を行っている証拠を入手した高橋一生演じる夫、優作と、蒼井優演じる妻、聡子が、アメリカにその証拠を提出することで正義を果たそうとする物語である。そこで、主題は日本軍の惨たらしい虐殺とそれに対する反抗、見どころは、日本軍に見つかることなくアメリカに亡命する緊張感のある活劇として全面化しそうになるが、それらを徹底的に回避し続ける。 とりあえずの主題 「階段」 とすれば、本当の主題はなんであるか。その主題を明確にする