9月1日、ナノボロ2024で初めて山田亮一とアフターソウルのライブを観た感想
台風10号によってナノボロ開催が危ぶまれるなか、台風が奇跡的に衰退してくれたおかげで京都で行われたナノボロ2024に参加することができました。個人の感想をここに書いておきます。
転換中、まずジャパさんがベースを持って入ってきて、ベースや機材を置くと、いよいよ山田亮一とアフターソウルのライブが開始するんだなという実感が俄に沸き起こりました。続いてドラムとギターの人がステージに入られるのが見えました。金曜の新宿red clothで初お披露目されたバンドですが、ジャパさんと山田亮一さんしかメンバーの顔と名前を事前に知りませんでした。ドラムとリードギターが予想に反してとても若かったので驚きました。20代前半に見え、あどけなさも残るような可愛らしいお顔立ちの方でした。
山田亮一さんはいつステージに来るのかと待っていると、「どうも」と聞き覚えのある声がして、満員のお客さんを掻き分けて、黒髪の、肩くらいのパーマをかけた男性がステージに上がりました。その人こそが山田亮一さんなのでした。山田亮一さんを生で見たら号泣するのではと思っていたのですが、意外にも泣きはせず、ただただ現実に驚いて息が止まっていました。山田亮一さんの足元を見るとビッグマフがあり、手には白の年季の入ったテレキャスター。テレキャスターはイップスになり弾けなかったはずなのに。ただ、代名詞ともいえる赤のテレキャスターではなく本体の色は白で、その代わりに、ギターストラップが血のように深い赤色になっていました。服はハヌマーンの時の白のシャツでもバズマザーズの時の黒いスーツでもなく、麻のような素材の黒の半袖のセットアップを着用されていました。
音出しをしている時、「もぐりん」と、卓にいるモグラさんに向かい、言葉を交わす山田亮一さん。幾度となくnanoのステージに立ってきて、求める音についてはお互い勝手知ったる箱ですから、阿吽の呼吸で調整が終わります。いよいよライブが始まるのだと思うと、期待が膨らみます。リハーサルでは『アパルトの中の恋人たち』。もう本番が始まってしまったかのように、客席は熱く腕をステージの中央にいる山田亮一さんに向かって突き上げています。ライブハウスというのは元々楽しいものですが、それがnanoで、演者が山田亮一とくればもう最高というしか他に言葉がありません。私は最前列にいて、押し寄せてくる圧に耐えながら、みんなと一緒に、歌う山田亮一とアフターソウルのメンバーをただ観ていました。何度も何度も聴いたあの曲が確かに目の前で演奏され、成仏出来なかった残留思念が清らかに成仏していくようでした。
本番。出所してすぐのライブだったので、セトリを新宿red clothから変更する時間がないのではないかと思っていたのですが、変更されていました。1曲目は『ワンナイト・アルカホリック』。山田亮一とアフターソウルが演奏している衝撃で、早くも記憶が飛んでしまっているのですが、とにかく待ちに待った客の熱い思いが伝わってきて、私もその集団の構成員になって、拳を突き上げます。山田亮一さんの手が動いてギターを弾き、口を開いて歌うというライブが目の前で起こっているのが信じられない気持ちでした。4月のラママの時、「仮歯が間に合わず、今回のライブのみ歯抜けの可愛い亮ちゃんを楽しんでください」とXに投稿がありましたが、私が見た限りでは、9月1日のnanoでもまだ仮歯は入っていないように見えました。nanoは、演者の口の中が見えるくらいの近さでライブが観れる箱なのです。
山田亮一がそこに立っている。ライブをしている。涙なのか汗なのか、よく分からない混合物が自分の顔をびしょびしょに濡らし、山田亮一さんから客席に向かって汗が、客席からもステージに汗が飛び交います。
2曲目、『アバンチュール』。綺麗なアルペジオがある曲です。汗が張り付いて束になり始めた長い前髪から山田亮一さんの目が見えて、それが白鷺の目の奥の鷹の目のような、凛とした孤高の寂しさの奥に鋭い気高さがあるように見え、その佇まいが、山田亮一さんは表現者なのだと一瞥で理解させられるくらい只者ではないのです。ツイキャスで弾き語りのアバンチュールしか聴いたことがなかったのですが、バンド形態なのに弾き語りの良さも持ち合わせているような演奏でした。「アバンチュールは青春を介さない修学旅行みたい」という比喩が山田亮一さんらしい歌詞だなと思います。
3曲目。『ネイキッドチャイニーズガール』。大好きな曲です。新宿red clothで演奏されたとき、この曲がアレンジされていることや、最初の「ニーハオ、ウォーアイニー」を山田亮一さんが言うことをSNSで知っていたのですが、実際生で聴くと驚きました。まるで、メイク上手な女性がメイクと服を変えたらまるっきり別人に見えるかのようなアレンジでした。
この曲くらいから自分が少しだけ落ち着いてバンド全体の演奏を観れるようになっていました。3人のハヌマーンのときより音の厚みが増したネイキッドチャイニーズガールは何だかメロウで、大人の余裕があるかのような曲になっていて、最後は軽快に演奏されているのでした。イントロをしばらく聴いてもネイキッドチャイニーズガールだと気づかなかったな…。ハヌマーンver.も、アフターソウルver.もどちらも好きです。喉の調子を整える演技で咳払いをし、はにかんで少し照れたように「にーはお、うぉーあいに〜」と客席に歌う山田亮一さんがお茶目でとても良かったです。
4曲目、『最低のふたり』。大人っぽい歌詞の曲。ジャパさんのベースの安定感が際立ちます。ドラムとギターの人も、前述のとおり若いにも関わらず、猛者が集うオーディションを通過しただけあって、テクニカルな演奏でした。ハヌマーンもバズマザーズもとにかく演奏がタイトで難しいイメージがありますが、アフターソウルではメンバーそれぞれが山田亮一という強烈に輝くロックスターに対して調和の取れたバランスの良いサポート力を有しており、かといってサポートだけに徹するのではなく、自分のキャラクターをここぞというタイミングで最大限に発揮する実力者たちでした。
5曲目、『若者のすべて』。「青年と走る鉄塊は〜」の歌い出し、客が待ってましたと腕を突き上げていました。山田亮一さんの歌声が染みます。「随分と長い間待たせたその詫びに理想でも土産に持っていこうかい」の歌詞のところで、心の中で本当に随分待ったと思い、その詫びにたくさんこれからライブしてくれと思いました。「失望の望を!二条nano !怒鳴るのだ!」にはグッときました。サイキックフェスでアフターソウルを観れなかった方には申し訳ないのですが、出所後の関西初ライブがnanoだったことには山田亮一さんとnanoの運命を感じてしまいます。
山田亮一さんの音源を聴くとき、「お母さん」の単語が出る歌詞は特に(幸福のしっぽもそうですね)とても胸を打たれるのですが、生で歌を聴くとそれはそれは良かったです…。リードギターの人に関して、ギターソロに華があるタイプだと以前山田亮一さんがXに書いて評価していましたが、アップテンポのキラーチューンは元より、特に泣きのエモーショナルなシーンでのギターが非常に感情が伝わる演奏をされる方だと私は思いました。顔で弾くタイプの人なんですよね。もうその表情がいいったらありゃしない。
「次で最後の曲になりますが、この後も楽しんでってください」と山田亮一さんが言い、6曲目、『ハイカラさんが通る』。新宿red clothではMCで色々喋ったようですが、ナノボロは夏フェス。たくさんのバンドが出て、演奏時間はそう長くはありません。次で最後の曲になりますがとおっしゃったとき、思わず2010/2011カウントダウンMCが脳裏によぎりました。
「本日ハヌマーンに与えられた時間は15分間です、15分間。だらだらライブをやるにはあまりにも短い時間やと思います。でもここにいる皆さんが一生忘れない衝撃を与えるにはじゅうぶんすぎる時間だと僕たちは信じてこの場に立ってます。ハヌマーンでした。」でワンナイト・アルカホリックに繋いだ、ハヌマーン時代の貴重な映像のことを。2024年の9月1日にナノボロで山田亮一とアフターソウルに与えられた時間は30分くらいだったでしょうか。とても短いのですが、本当に素晴らしいライブでした。自分が死ぬ前の走馬灯に出てくるレベルの衝撃です。もうハヌマーンは解散してしまったけれども、過去の先に現時点での山田亮一さんがいて、アフターソウルはハヌマーン時代の曲を演奏もするけれどもアフターソウルの曲を作り、新バンドとして一歩を踏み出したばかり。これからあるであろう全国ツアーがとてもとても楽しみです。
ライブが終わったあと、物販列に整列して並んで、買えるかしらとドキドキする時間までもがとても楽しく、素敵な時間でした。売られているのは4人の似顔絵イラストTシャツだと勘違いしていて、柄をあまり見ていなかったのですが、買って開けてみたらアフターソウルのロゴTシャツだったのでびっくりでした(笑)いつの間にか新しいグッズが!ステッカーはとりあえず2枚購入。今後物販も色々増えてくれると嬉しいです。もちろんCDも!
物販に並んでいるとき、階段にいたら楽屋から山田亮一さんがちょうど出てこられて、「ありがとうございました!」と言ったら、口角の片側でなくてニッと笑って頂けたことが嬉しく、ライブに行けて物販を買えて感謝も伝えられるなんてこんなことがあっていいのですかと大変嬉しかったです。
山田亮一さんは今は血の色のテレキャスではないけれど、きっとギターの奥、胸の奥はロックンロールイズレッド、輪廻転生なんか出来ないくらいに自前の霊魂を燃やし尽くすアフターソウルをこれからこの目で見届けたいです。
※追記
・最初のほうで、「414番!」のヤジがあり、「はいよ」と答えていらっしゃいました
(そういうヤジはあるだろうなと予想していましたが、山田さんを追い詰めることになりはしないかと思っているので、ヤジは控えたほうがいいんじゃないかと…)
・本番開始直後くらいだったか、「拘置所よりひどい場所へようこそ」とおっしゃってました
(確かに、狭い部屋に知らない人とぎゅうぎゅうにされて汗だくで爆音を聴く状況って文字だけを見れば拘置所よりひどいかも)
・白のテレキャスのピックガードに、バズマザーズのピックを何枚か挟んで弾いてらっしゃいました
・ネイキッドチャイニーズガールで、山田亮一さんが2番以降のところで手を叩いて、客も一緒に手を叩く掛け合いみたいなものがあった気がするのですが、ハヌマーンで一番好きな曲のため興奮しすぎて記憶が曖昧だけどすごく楽しかったような気がする…私の記憶はどこへ?!
・身長は見た感じ177cmくらいで、結構高身長なんだなぁと思いました
・山田亮一さんからモグラさんとまーこおばちゃんへの声掛けには泣いてしまいました
まだまだ観たい方がアフターソウルを観れていないと思うので、そういった全ての人にチャンスがありますよう願っています。
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