SS 『架空の病気ファイル②_杜の都飛行腺肥大』
俗に『飛線』と言われるが、『飛行腺』が正しい。これは杜の都と呼ばれる都市の住民に影響を与える病気である。この病気は、生活していく中で、「変わってる」「浮いてるね」といった特定の言葉が発せられた際、そこに存在する微粒子によって引き起こされる。これらの微粒子が杜の都の住民の体内に侵入すると、循環器系に異常が生じ、血管を拡張させ血流が増加し、飛行腺を肥大させる。飛行腺が肥大した患者は、平均で3mmから5mmほど地上から浮くことが報告されている。杜の都の住民は全体主義的な価値観を重んじ、集団生活に馴染むことを重視するため、患者は差別の対象になりやすい。症状には鳴積、覆暈、悸労などがあり、重症の患者になると数メートル浮いた例がある。杜の都飛行腺肥大に関する現在の治療法は、病原物質となる微粒子をまず避けることであるが、生活していくうえで完全に遮断することは難しく、いまだ完全な治療法は見つかっていない。