芸人の顔ファンを考える
ずっと思っているけど書くところがないなー…あ、noteで書けばいいのか、ということでこちらで。
顔ファン、と言うけれど、そもそも本当の意味での顔ファンなんているのだろうか、というのはずっと思っている。世間的にイメージされるような【芸人の顔ファン】というと、【ネタを見ないでキャーキャー言ってるだけのファン】だと思うのだが、実際本当にいるか?、と思ってしまうのである。瞬間的にはいることもあるだろうけれど、長期的な目で見た時に。少なくとも私は見かけたことがない(1、2回くらいは遭遇したかもしれないが、何度行ってもいるなと思うような顔ファンはいなかった)。
ここ数年はさして芸人のライブにも行けていないし、行って月イチくらいだが、以前は週イチペースで劇場に通っていた。行くのは主に渋谷の無限大ホールや神保町花月(現在は神保町よしもと漫才劇場)。まだそれほど有名ではない、養成所を出てから10年経っていないくらいの若手が多く出ているライブによく行っていた。
当然ながら、若手芸人にキャーキャー言うファンも多かった。私も好き芸人が出れば歓声を上げた。けれど当然ながら私(達)が見に来たのは芸人の顔ではなくネタであり企画である。顔を見に来たのではなく笑いに来たのである。それは周囲の席にいた(見知らぬ)客にも感じていた。
顔ファン、というか、顔から入る人はそれなりに多いだろうとは思う。けれど、顔で入ろうがどこから入ろうが、ファンがその人に求めることは最終的には本質の部分なのだと感じている。芸人なら面白さ、役者なら演技、歌手なら歌、といったような。
これはアイドルグループを追っていた時にも感じていた。やっぱりアイドルの本質は歌なのである。どれだけメンバーが好きでも歌が微妙だと熱量も冷めていくのだ(これに関しては本人どうこうより運営の力や考え方なので難しいところではあるのだけど)。
つまりは何が言いたいかといえば、顔が良くても面白くない芸人って結局は売れないよね、ということである。瞬間風速的に売れることはあるかもしれないが、長期的目線でいくと面白くない芸人というのは確実に失速するよな、と。
話は少しばかりずれるが、この場合の面白さというのは、自分が何かを発したり表現して面白くすることもだが、人を面白くさせるということも含む。というか、芸人というのはある程度の芸歴に達すると、人を面白くさせる能力が無かったら(少なくともテレビでは)やっていけないのではないか。
人というのは後輩芸人であったり、お笑い以外のタレントや有名人であったり、時には一般人だったりといった人達。
芸人というのはどこかでこういった人達を面白くするというフェーズに入る気がするし、自ら面白いことが出来る芸人より人を面白くさせることが出来る芸人の方が芸人の質的に下に見られる感じにモヤモヤしたりもするのだが、その話をすると完全にずれるのでそれはまた後日改めて。
ファン側が、「顔ファン嫌い」とか言うのはまだ理解も出来る。こっちはネタを見に来たのに隣でキャーキャー言われたら腹も立つ。それはもちろんそう。
なのだが、うるさいのは別に顔ファンだからというわけでもない。ライブ中に(笑い声以外で)うるさくされたら顔ファンだろうがなんだろうが迷惑である。
そしてまだファンは理解出来るのだが、顔ファンはちょっと、とか公の場で言ってしまう芸人には、こいつ何言ってんだ、と思ってしまう。裏で言う分にはまだいい。色々不満もあるだろうからそれはいい。けれど表に出すのはどうなんだと思ってしまう。
先に書いたように、客は例え顔から入ってもライブには面白さを求めて来る場合が多い。少なくともわざわざ劇場に足を運ぶようなファンは。
本当に顔しか興味がないのなら、劇場に入らず出待ちをするだろう。その方がチケット代も浮くし。
けれどわざわざチケットを購入して劇場に入るということは、面白さを求めて来ているのだ。こっちは。
そんな客に対して顔ファンがー、とか、顔じゃなくてネタを見て欲しい、とか言われると、ハァ⁉(cv.ちいかわのうさぎ)、と思ってしまう。きつい言い方かもしれないが、いやそっちが顔より強いネタ作れよ、と思ってしまう。なんだか、客を下に見ているというか、バカにされている気がしてしまうのだ(私だけかもしれないけれど)。
何度も書くけれど、芸人に求めているのは面白さである。見た目がいいのは副次的でしかない。確かに、見た目が微妙でネタ80点の芸人と見た目がいいネタ70点の芸人なら後者の方が人気が出る率は高いと思う。けれどそれは別にどこの世界でもあることだ。一般企業でも見た目がいい方が内定貰いやすいとか普通にあるし。
けれど、見た目が微妙でネタ80点の芸人と見た目がめちゃめちゃいいネタ30点の芸人だったら確実に前者の方が評価はされる。一瞬だったら後者も人気は出るかもしれないが、面白くない芸人というのは結果的に淘汰されていくというのは、劇場に通いまくっていた頃に感じていた。最終的には面白いか否かである。
だからもし、顔しか評価されない、ネタを評価してもらえない、ということがあるならば、それはネタが弱いんじゃないの?、と思ってしまうのだ。顔の良さが吹っ飛ぶくらいに面白いネタだったらこっちも笑うからね。
とはいえ現状、キャーキャー言われて辟易している芸人もいるだろうとは思う。実際そうなったら大変だろうなとも思う。
なのだが、芸人としてデビューしても無名のまま無風のまま終わってしまう人も多いのだから、せっかくの瞬間風速を活かす方向を考えたら?、と思うのだ。顔がいいというのは確実に長所なのだから。きついことを言っているかもだけど、その瞬間風速を活かせないならそれまでだよな、とも思ったりする。
ここからは完全に余談。ちょっと思い出した話。
その昔、無限大ホールでKABUTOというアイドルグループが活動していた。(当時の)無限大に出ていたイケメン芸人達を集めてアイドルグループを作りました、という触れ込みで、1列目には囲碁将棋の文田さんがいた(ちなみにKABUTOでの呼び名は文様)。
ある日の囲碁将棋ライブ。その時の企画は『相手の悪口を言い合う』というもの。
そこで対戦相手の芸人が文田さんに言った。
「何でお前がKABUTOにいんのか分かんねーよ」
それを言われた文田さんは叫んだ。
「俺だって分かんねーよ! 俺が一番分かんねーよ!!!」
崩れ落ちて笑い転げる畑中しんじろうさん(現フリー、当時吉本芸人。KABUTOを作った人)。
あれめっちゃ笑ったなあ。
そりゃイケメン芸人とか周囲に言われても無駄にハードル上がるだけっていう場合もあるよね、と思ったり。
そしてこれを書くにあたって、畑中しんちゃん今どうしているんだろうと思って検索したらInstagramが出てきたので見たら、東京吉本9期芸人の集いに参加していたようで写真が上がっていた。うわーめっちゃぐっとくる。私が無限大行きまくっていた頃のメンバーだったし。
それにしてもあの頃のメンバーが今もちゃんと売れているのがすごいなと思うし、やっぱり面白い芸人は残るのだなと思うと嬉しい限りである。「囲碁将棋の文田さん」と特に注釈なく書いても伝わるだろうという安心感も嬉しいなと思う(こんなこと言うのもなんだが、数年前だったら説明をつけていたと思うから)。