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モクモク上海旅行【ホテル・夜食編】
上記の続きです。
フロントで無事チェックインも済み、カードキーをもらって、歴史を感じるエレベーターに乗る。歴史を感じるエレベーターのくせに、カードキーをかざさないと部屋がある階を選択できない仕様だった。意外にちゃんとしてるセキュリティー。そして部屋のある3階に到着して、部屋にカードキーをかざして入室。
…寒い。今までエアコン付いてなかったから寒い、とかではなく、これは屋外なのでは…という寒さ。カードキーを差し込んで部屋の電気をつけ、エアコンを付けるも、「グオーーーーーーー」という室外機の轟音に相反して、その働きを全く感じないエアコン。温風?出てる?温風が??レベル。その歴史を感じる部屋の様子にも戸惑う。予約サイトの写真と間取りこそ同じだけれども、明らかに諸々の色が違う。実際の部屋は写真よりもだいぶ色褪せていた。暖房の設定温度を30度にしても、相変わらず部屋は屋外同等の体感で、カーテン閉めれば暖まるの少しは早いかな?と思って窓側に行くと、薄いカーテンの下で窓が開いてた。ああ納得の寒さ。屋外とおんなじじゃないか、と思った寒さは、その通りだった。いつ開けたのか定かでは無いけれども、真夜中に窓が開いていたらそりゃ寒い。そしてここでも感じる中国味儿、【通风】。オンラインレッスンの先生が、真冬のレッスンでダウンジャケットを着て登場したので、どういうことかと尋ねたら【通风】と言われたことを思い出した。風を流さないとなんとなく気持ち悪いとのこと。そう、これは welcome 通风なのだ!と思い込む。寒いけど。
こんな状態の部屋で、浴室とトイレは大丈夫なのかな、と不安になった。浴室兼トイレに行って確認してみると、トイレットペーパーがどう考えても少ない。誰かが腹を壊したらもう無くなるなと思った。日本のビジネスホテルの「エコの観点から最後まで使い切りましょう」を思い出した程のロールの厚みだった。更にドアノブが、「そのうち外れて閉じ込められるんじゃ…」と不安になる程にグラグラしていた。今思い返せば、あれはきっと何度も外れてて、その度にやっつけ修理をしているんだろう。そんなドアノブだった。
荷物整理をしていたら、同行者の一人が「中国のテレビが見たい!」と言ってテレビをつけようとした。…が、つかなかった。テレビのリモコンは、電池抜き取り防止なのかなんなのか、電池カバーの部分がビニールテープでぐるぐる巻きにされていて、テレビがつかない原因が電池なのかどうか確認できなかった。テレビ本体の電源ボタンを押してもつかない。でも、そんなことよりもみんな腹が減っていた。だからとりあえずテレビの件は後回しにした。気づいたら6時間以上何も食べていない。タクシーでホテルに向かう際に、周辺でいくつかの食堂がやっているのを確認済みだったので、とりあえずそこら辺に行ってみようということになった。
極寒の真夜中、ホテルから出ておっかなびっくりウロウロしながら、食堂の方へ向かった。【馄炖】の文字に惹かれて、ワンタン屋に入った。日付が回っているのに、意外にも混んでいる。入店した瞬間に、ちょっと血圧が上がった。
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この席で食事していた人が帰った後に、記念に一枚。なんで食堂内でこんな風に過ごせるのかもはや謎。感覚の違いを肌で感じた。同行者共々、やべーやべーと小声で興奮した。ちょうど注文した料理が届いた人がいて、それはそれは美味しそうなビーフンだった。美味しそうな香ばしい匂いがこちらまで漂ってきた。「よし、あのビーフンにしよう!」と決めた。なんだか深夜特急みたいでいいな、と思った。みんなで思い思いのものを頼むことにした。まず同行者が選んだ葱油拌面、それからワンタン3杯頼もうとしたら、もう皮が無いからワンタンは2杯分しか作れないと言われた。仕方がないので2杯お願いし、ビーフン(炒米粉)を頼んだら、「売り切れ」と言われた。その後いくつか料理名を告げるも、「没有」「没有」「没有」で、やっと「可以啊」になったのが炒面。炒面と炒米粉の違いがいまいちわからなかったけれども、注文することにした。深夜だから、そりゃ材料も尽きるよな、と納得しながら待っていたら、店員さんが両手に大量のワンタンのテイクアウト容器を入れたパンパンの袋を下げて、店頭に止まっていたバイクに詰め込んで配達に出かけた。「…皮が無くなるのも当然だよな」と思った。真夜中にこの大量のワンタンがどこへ向かうのか、少し気になった。
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大量の出前ワンタンが出発してちょっと待った後、注文した料理が届いた。
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このシンプルなワンタンが美味しい!ひとくちサイズのワンタン、食べやすいし、熱々のワンタンが凍えた体を温めてくれた。この上に乗っている焦がし油のようなものがまた美味しい。パクチーも絶妙。なのにお値段たったの10元(≒200円)。そんなこんなしているうちに葱油拌面と炒面が届く。深夜の炭水化物祭り。炒面は焼きそばみたいな見た目なのに、麺が香ばしい風味をまとっていて、噛む前から美味しい!腹が減っていたから尚更美味しかった。みんな美味い美味い言いながら食べていた。あっという間に皿が空になった。全く残らなかった。【光盘行动】のお手本のようなお残し清零。料理を待っている時間の方が長かった。みんな飢えていた。
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美味しいものを食べて空腹が満たされて、凍えた体も温まり、ホテルへ戻った。ホテルの玄関というか入り口があまりにも地味過ぎて通り過ぎてしまった。夜だから見えないんだと思ったけど、この通り過ぎは、翌日の日中も何度かやらかした。それほどまでに目立たない入り口のホテル。こんなホテルも珍しい。
部屋に戻ったら、相変わらず極寒のままだった。食事に向かう際にカードキーを抜いたから、エアコンも切れてしまったので、ほんの少し暖まった(であろう)部屋がまた冷えてしまった。寒くてたまらないのに、すでに暖房は30度設定にしてあるので、部屋が暖まるのを待つしかなかった。もう午前1時ぐらいになっていて、シャワーどうするか、という話になったけれども、「この部屋の寒さの中シャワーを浴びたら確実に湯冷めする」という結論になり、この日はこのまま寝ることにした。「これはキャンプと同じだ」と思ったら少し気楽になった。エアコンの室外機は轟音を出しながら頑張っているのに、その音に反比例するエアコンの暖風は、ほぼ風。しつこいようだけれども、設定温度は30度。なのに風。ベッドに潜るも、ふかふか羽毛布団な訳もなく、着ていたダウンコート脱ぐという選択肢はもちろん無いので、外を歩いた格好のまま寝ることにした。自分のダウンコートの暖かさを、まさか室内で実感することになるとは思いもしなかった。ダウンコート自体は暖かい。でも、ベッドの寝心地がいまいちよろしくないのと、室外機の轟音で、疲れているはずなのに眠れなくなってしまった。環境要因で眠れないのなんて、キャンプ以来だなと思った。そう、これはキャンプ…。
意識を失おうと念じたのに、ほぼ眠ることなく朝を迎えた。こんな風に旅先で眠れなかったことはなかったので、自分でもびっくりした。同行者たちはなんとか寝られた模様。強い。一人が起きた後にテレビをつけようとしたけれども、昨晩同様テレビはやっぱりつかなかった。夜遅くまで起きてたので、朝はゆっくりと過ごす予定だったのに、居心地がよく無いのでとっとと出発することにした。この日は、友人に会う予定になっていた。友人と会う予定になっていたにも関わらず、みんなぐったりぼんやりしていて、「シャワーを浴びる」という選択肢は全く無かった。部屋はなんとなく暖まっていて、エアコンが非力ながらも最大限の仕事をしてくれたんだろうなと思った。
「移動する前に、とりあえず朝ごはんに行こうか」と、部屋を出たその時に、ホテルの清掃係のおばちゃんとばったり会った。おばちゃんは掃除どうする?ゴミある?みたいなことを聞いてきたので、ゴミを回収してもらった。タオルは?と聞かれたので、ある、と答えた。だって使ってないから。「これはどう?」と見せてくれたのがトイレットペーパーで、「you」と答えたらしまおうとしたので、「you」と何回か言ったら分かってくれたようで、くれた。その見せてくれた交換用のトイレットペーパーが、日本で普通に使っているサイズの半量くらいで、びっくりした。足らなくなったら嫌なので、2個もらった。そういえば、昨晩チェックインしている時に、フロントにトイレットペーパーをもらいに来ていた人を思い出した。なるほど、こういうことだったのか、と納得した。使う前から、1個じゃ足らない。
このやりとりを振り返ってみて、今更ながら自分の過ちに気づいた。おばちゃんと話していた最中、ショートコントみたいになってしまって、欲しい、って言ってるのにすぐもらえなくて、話が上手く通じないな、と疑問に思っていたんだけれども、信じられないことに、私は【有】と【要】を間違えていた。「タオルはあるよ」で、「有(yǒu)」。トイレットペーパーは欲しいよで、「要(yào)」と言うべきところを、なぜか「要」を日本語の読みで声調は中国語で「よう(yǒu)」と言ってしまっていた。でも、事実として、おばちゃんには通じていて、トイレットペーパーをもらうことができたので、気持ちって大事だなと思った。「中国語は声調が命!」ってよく聞くけれども、そもそものピン音が間違っていても通じた。おばちゃんは、こちらのたどたどしい語彙力に合わせて、タオルや歯磨きなど、物品を1つ1つ見せてくれながら「必要?」と聞いてくれた。ああ優しい。改めて、谢谢阿姨!
続きます